花の下にて、春

蒲公英

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幸福とは

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 マツリが来たことによって再開した僕らの友情は、大人の分別を持って緩やかに続いた。一緒に飲みに出たり、フットサルをやってみたり、マツリの任期が終わる記念で花見をしたりした。
 その間にユウタとナツが結婚してナツの腹が大きくなったので、夫婦が同居するナツの実家を、メンバーでリフォームするって荒仕事もした。幼馴染グループが全員で押しかけて、若い夫婦の希望するイメージの部屋にするっていうのも、マツリの知識がなければできなかったことだ。

 僕は新サラリーマンで営業部に配属されて、慣れない生活にいっぱいいっぱいで、教員採用試験に合格できなかったマツリは掛け持ちで何校かの非常勤講師をして生活をしていて、みんなとにかく忙しくて、それでも集まれば愉快で楽しかった。
 僕はずっとマツリと恋人になりたかったけれど、それを言ってしまえば今の関係を失ってしまいそうで、意思を表示することはできなかった。

 花火大会に大勢で出かけた帰り、どういうハズミでそうなったのかは覚えていないが、マツリのアパートまで僕が送っていくことになった。もちろん女の子の部屋に上がり込むつもりなんてなくて、アパートの前で引き返そうとしたら、別れる前の挨拶でマツリがひどく寂しそうな顔をしたんだ。
「いつかみんな、バラバラになっちゃうんだよね。進学や就職で会えなくなった人もいるし、家庭を持ったら同じようには集まれないよね」
「それは仕方ないんじゃない? 事情は変わっていくんだし」
 なんだかマツリが小さく見えて、僕はマツリの頭を撫でた。おそらくそれが、僕とマツリのはじまりの合図だった。

 マツリの教員採用試験や僕の社員研修の合間を縫って、僕とマツリはゆっくりと恋に落ちていった。まわりのみんなの冷やかし、互いの両親の驚き、そして一緒に迎えた冬。
 マツリは無事中学校の教師になり、僕はどうにか社会人二年目に入り、お互いにやっぱり忙しくて、一緒に時間を捻出するためには生活を共にするって結論しかなかった。

 合わない生活時間のすり合わせや生活習慣の違いの諍いは、確かにあった。けれど結婚式を挙げたときのマツリの花嫁姿を見て、感激のあまり涙ぐんでしまったのは、僕だった。
 たびたび旅行に行けるほど生活に余裕はなくとも、散歩にはよく一緒に出た。そのたびにカフェを見つけ、コーヒーの味を比べたりした。

 そしてマツリの胎内に宿った新しい命。連絡を受けた僕は、その日のうちに妊婦用の雑誌を買って帰り、気が早いとマツリに笑われた。僕とマツリと新しい命。これ以上の幸福を、僕は知らない。 
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