最後の女

蒲公英

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 さて、一方の秀一である。茜の急な外出は滅多にないことだが、時々はある。何せ茜の友達は、圧倒的に学生が多いのだ。平日に遊び歩くのは、別に不自然じゃない。購入してきた弁当を広げながら、どことなく腑に落ちない気分は、茜の最近のメールである。少なくとも、秀一の把握していない人間関係を持っていることは間違いない。
 茜だって子供じゃないのだから、秀一に何でもかんでも報告する義務はないし、アルバイト先でも新しい人間関係を構築することはあるだろう。妙に不安な気分になるのは、何故だ――

 弁当の箱をゴミ箱に始末して、シャワーだけの入浴を済ませたところで、玄関から鍵の音がした。
「ただいまー。ごめんね、ごはんの準備しなくってー」
 九時を少々過ぎたあたりだ。
「早かったな」
 洗面所で手と顔を洗い終えた茜が居間兼食堂に入ってきて、迷いもせずに秀一の膝に腰を下ろした。
「秀さんが寂しがってると思ったんだもーん」
 いつもの茜だとほっとしながら、秀一は茜の尻の位置を調整して、足の筋肉に負担がかからない場所にする。
「静かで丁度いいや」
「嘘だぁ。茜がいなくて寂しいって泣いてたでしょ」
「うるせえのがいなくて、ゆっくり晩酌できると思ってたよ」
 腕の中のやわらかな身体は、まだ外の気配を纏っている。その気配には、不穏はない。何か考えすぎだったかと思いながら、茜の髪の香りを吸い込んだ時、茜の携帯電話が震えた。
「あんっ!せっかく秀さんといちゃいちゃしてんのに」
 そう言いながら、茜は場所を変えて返信を打つ。
 そうか、不穏なのは茜じゃなくて、メールの相手か。

「風呂入って来いよ」
「え? お風呂、準備しといてくれたの?」
「たまにはシャワーだけでいいだろ」
  茜を風呂場に押し込み、さっさと布団を敷く。想像の相手に嫉妬して、気が逸ってしまったのは、確かだ。茜は充分に男が狩の対象と考える年齢であり、狩られるだけの匂いを持ってもいるのだ。本人がどう考えているかなんて、そんなことはお構いなしで。
  たとえば茜がそれを自覚し、自分の条件と較べはじめたら、秀一には引き止めるだけの何かはない。人付き合いの不味さは自分が知っているし、経済的にも体力的にも、若いヤツみたいに将来を期待できるわけじゃない。
 洗面所で髪を乾かしている茜を、声を出して呼ぶ。年甲斐の無い男だと、言いたいヤツは言いやがれ。

「や……あっ…ん」
 開かせた胸を確認して、何も無いともう一度安心する。疑っているわけじゃない、茜はそんなに狡猾でも器用でもない。
「なんで、そんなに見る……の……」
「小せえなと思ってさ」
 笑った秀一は、見ていたものを口に含んだ。息を飲みこむ茜に満足して、指を進める。どこまでもすべすべと手触りの良い肌は、秀一にとって何にも変えがたいものだ。
「耳、耳にキス、して」
 茜は耳が好きだ。たっぷりと息を吹き込み、耳の中まで舌で満たしてやると、指で探っている場所も急速に狭くなる。
「挿れんぞ」
「んっ……来てっ……」
 長い脚の膝を折り、秀一は己自身で茜の中を探る。熱くて狭いそこは、狭いながらもやわらかく秀一を包む。

 早く、孕んじまえよ。逃げらんないように。
 激しく茜を揺すりたてながら、秀一が思っていたのはそんなことだった。 
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