トクソウ最前線

蒲公英

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違和感の正体

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 午前中の残った時間で用務員さんたちと一緒になって除草作業をしているうちに、昼休憩の時間になった。竹田さんは内装業者と一緒に煙草の吸えるところに行くと出ていった。トクソウの面々は予めコンビニで昼を調達して来ているので、主事室にお邪魔して用務員さんたちと一緒に昼食を摂る。
「和香ちゃん、ずいぶん頑張ってるのねぇ」
 鈴木さんが感心したように言ってくれる。新しい用務員さんは年配の男の人で、中山さんと一緒に男仕事をしてくれるという。業務用の掃除機はとても重いので、階段を持って歩くのは和香でも重労働だ。
「和香ちゃんがいないと、どうも細かいことに気がつかなくて」
 持ち上げられているのだとわかってはいても、やはりその言葉は嬉しい。

 午後から何をしようかという話になったとき、和香は午前中に目についたことを提案した。
「アンズが熟してるから、収穫してもらって良いですか。義務ってわけじゃないんですけど、ボタボタ落ちると校庭が汚れるし、去年職員室で喜んでくれたから」
 前の年に和香はアンズを収穫して、職員室に届けた。が、実は自分でもたくさん持って帰って、生で食べたりジャムにしたりした。樹上で完熟したアンズは、良い香りでおいしかった。学校では実験用とか食用に栽培しているのではないから、実は不用品だ。だから余計な仕事といえば余計な仕事なのである。
「結構実ってるもんねえ。サービスして顧客が喜んでくれるなら、ウチの好感度が上がって次の契約に繋がるんだから、それはやっといて損はないでしょ」
 植物を気にする植田さんが、やはり枝を見ていたらしい。
「おいしいの? 食べたことない」
 由美さんもノリノリだし、肯定されたことにホッとする。
「そうそう、和香ちゃんがいるときは、そんなことしたね」
 鈴木さんが口を挟んだら、中山さんが一瞬バツの悪そうな顔をした。気がついていても、面倒だから放っておいたのかも知れない。仕様外なのだから、反省するような案件じゃない。少しだけ、申し訳ないなと思う。中山さんが悪いんじゃない、自分が仕事を増やしたんだよって。

 植田さんと菊池さんがアンズの収穫をしてくれている間、和香と由美さんは空いている特別教室を掃除して歩いた。家庭科室、技術科室、美術室。実習系の授業のある教科は、どうしても細かい汚れが溜まりやすい。そして魔窟だった第二理科室と準備室。
「別の部屋みたい……」
 一度しか来たことのない由美さんが言うのだから、和香だって驚いてしまう。準備室の机の上は色分けされたファイルがあるだけだし、個人用に使っているだろうコーヒーメーカーはピカピカで、カップは洗って水切り籠に伏せてある。教室の実験器具はきちんと棚におさまり、観察用らしきメダカの水槽の水が綺麗だ。
 これが魔窟だった場所か。管理者が違うだけで、古い教室がこんなに綺麗になるのか。

 なんだか水木先生に対する違和感が、理解できた気がする。水木先生は、他人の時間や労力を使うことを何とも思っていない。だから公共施設の一部を散らかしたままにしたり、時間外に教材の準備をさせたりすることが平気なのだ。にこにこ労ってくれたけど、それは自分が掛けている手数を思ってのことじゃなくて、世間話プラスアルファくらいのもの。学校の教師なのだから、生徒に対する生活指導は充分にしているだろうし、常識人であることは間違いない。普段はそれができているはずなのに……
「この教室は必要なさそうだよね。そろそろ体育館に戻ってみる?」
 由美さんの言葉で我に返り、慌てて後を追った。いけないいけない、また目を開いて寝てる。
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