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第1章 新入生の魔女
第4回
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肥田木つむぎさん、十五歳。九月一日生まれのおとめ座で血液型はA型。家族構成は祖父、祖母、父、母、兄、姉、そして末っ子の肥田木さん自身の七人家族。代々魔法使いの家系で、家族全員が魔女や魔法使いらしい。けれど肥田木さん自身はあまり魔法が得意ではないらしく、真帆や鐘撞さんみたいにほうきで空を飛ぶ、なんてこともできないそうだ。まぁ、空が飛べるかどうかについてはそもそも魔法使いそれぞれの特性というものがあるらしく、卒業していった榎先輩も同じく空を飛べず、ろくに魔法も使えなかったのだから、特に気にするような事柄でもないだろう。
真帆ほどではないが肥田木さんにもそこそこ基礎魔力があるそうなのだが、根本的な魔法の使い方が下手くそなのだそうで、出来れば魔法の基礎から叩き込んでやってほしい、という理由で魔女見習いの多い(というより、全国魔法遣協会の会員である井口先生が率先して受け入れているらしい)うちの高校に入学してきたのだそうだ。
と、いうのを根掘り葉掘り矢継ぎ早に聞いていく真帆の傍らで、僕と鐘撞さんは、ただ真帆にたじろぎながらも律儀に返答していく肥田木さんを眺めていることしかできなかった。
まぁ、いつもみたいに変なことを始めたら(なるべく)とめに入るつもりではあるのだけれども。
「ほうほう、それでそれで?」真帆は肥田木さんと並んでソファに座り、肥田木さんの小さな身体に密着するようにすり寄りながら、「その幼馴染の男の子――拓斗くんとは今、どうなってるんですかっ?」
初対面にして、やたらと踏み込んでいく真帆を止めるべきか否か悩みながら鐘撞さんに視線を向ければ、鐘撞さんもまた僕に視線を向けて、困ったような表情で小さく首を傾げてきた。
ふむ、どこまで真帆の暴走を許していいものか。
真帆はどんどんどんどん踏み込んだ話をしだして、今は肥田木さんの幼馴染の男の子、城八木拓斗くんとの関係について興奮しながら訊ねている。
入学当初からは考えられないくらい真帆が色恋話大好き女子になってしまったのは、図らずも僕の所為と言われても仕方がないだろう。
「えっと――」と肥田木さんも困惑するように、けれど拒絶することなく、頬を赤く染めながら、「実は、拓斗くんもこの高校に入学しました……」
「え~っ! 素敵です、素敵です! もう絶対につむぎちゃんのこと大好きですよ! わざわざ同じ高校を選ぶだなんて、見え透いた恋心に違いありません!」
「あ、いえ、そんなこと、ないですよ…… だって、他にもたくさん、拓斗くんと同じクラスの男の子がこの高校を選んでましたし――」
「いいえ! そんなはずありません! そんなの、そんなの私が絶対に許しません!」
許しませんって、何様のつもりだよ、真帆……
「告白はっ? 告白はされなかったんですかっ、今まで!」
「あ、いえ、まさか、そんなこと、あるわけないじゃないですか……」
「なんでっ! なんでなんですかっ! つむぎちゃん、こんなに小柄で可愛らしいのに! じゃぁ、じゃぁ、告白したことはっ? 拓斗くんに告白したことはないんですかっ!」
「で、できませんよ、告白なんて! ムリですっムリですっ! 私なんか――」
「ムリなんてことないです! 私が保証します! さぁ、告白しに行きましょう! 今すぐに!」
「えぇっ! 今からっ? えっ! ええぇっっ?」
「ほらっほらっ! 立ってください! 善は急げ! 行きましょう!」
何故か何故だか興奮気味に肥田木さんの腕を掴む真帆に、ついに僕も鐘撞さんも見ていられなくなる。
「真帆っ」
「真帆先輩?」
僕が真帆の、肥田木さんの腕を掴むその手をやんわりと押さえると、きょとんとした表情で真帆は首を傾げながら、不思議そうに口にする。
「なんですか、ふたりとも、そんなに怖い顔して?」
やれやれ、と僕も鐘撞さんも肩を落としながら、
「やりすぎ」
「とばしすぎ」
「え~っ! そんなことありませんよ!」素っ頓狂な声を上げて、真帆は肥田木さんに顔を向けながら、「ね? つむぎちゃん!」
「あ、いえ、私も、そんな……」
明らかに断ろうとしてる肥田木さんの返答を、真帆はいったいどう勘違いしたのやら、
「ほらほら!」
とにっこり笑顔。
たまらず鐘撞さんは肥田木さんを真帆から引き剥がしつつ、
「――なにがどうほらほらなんですか。肥田木さんも困ってますよ」
「……え? そうなんですか?」再びきょとんとする真帆。「困ってるんですか?」
「あ、え、いや――はい……すみません」
僕は大層ショックを受けている様子の真帆の肩に手をやりながら、
「落ち着きなよ、真帆。可愛い後輩が入ってきて嬉しい気持ちはわかるけど、今日はそこまでにしておこうよ」
「……これからが楽しいところだったのにぃ~」
「まだまだ時間はあるから。とりあえず、今日のところは落ち着きなよ、真帆」
「……は~い」
不服そうに唇を尖らせて、ぷくりと頬を膨らませる真帆。
そんな真帆の様子に、肥田木さんも困ったように、苦笑いを浮かべるばかりだった。
肥田木つむぎさん、十五歳。九月一日生まれのおとめ座で血液型はA型。家族構成は祖父、祖母、父、母、兄、姉、そして末っ子の肥田木さん自身の七人家族。代々魔法使いの家系で、家族全員が魔女や魔法使いらしい。けれど肥田木さん自身はあまり魔法が得意ではないらしく、真帆や鐘撞さんみたいにほうきで空を飛ぶ、なんてこともできないそうだ。まぁ、空が飛べるかどうかについてはそもそも魔法使いそれぞれの特性というものがあるらしく、卒業していった榎先輩も同じく空を飛べず、ろくに魔法も使えなかったのだから、特に気にするような事柄でもないだろう。
真帆ほどではないが肥田木さんにもそこそこ基礎魔力があるそうなのだが、根本的な魔法の使い方が下手くそなのだそうで、出来れば魔法の基礎から叩き込んでやってほしい、という理由で魔女見習いの多い(というより、全国魔法遣協会の会員である井口先生が率先して受け入れているらしい)うちの高校に入学してきたのだそうだ。
と、いうのを根掘り葉掘り矢継ぎ早に聞いていく真帆の傍らで、僕と鐘撞さんは、ただ真帆にたじろぎながらも律儀に返答していく肥田木さんを眺めていることしかできなかった。
まぁ、いつもみたいに変なことを始めたら(なるべく)とめに入るつもりではあるのだけれども。
「ほうほう、それでそれで?」真帆は肥田木さんと並んでソファに座り、肥田木さんの小さな身体に密着するようにすり寄りながら、「その幼馴染の男の子――拓斗くんとは今、どうなってるんですかっ?」
初対面にして、やたらと踏み込んでいく真帆を止めるべきか否か悩みながら鐘撞さんに視線を向ければ、鐘撞さんもまた僕に視線を向けて、困ったような表情で小さく首を傾げてきた。
ふむ、どこまで真帆の暴走を許していいものか。
真帆はどんどんどんどん踏み込んだ話をしだして、今は肥田木さんの幼馴染の男の子、城八木拓斗くんとの関係について興奮しながら訊ねている。
入学当初からは考えられないくらい真帆が色恋話大好き女子になってしまったのは、図らずも僕の所為と言われても仕方がないだろう。
「えっと――」と肥田木さんも困惑するように、けれど拒絶することなく、頬を赤く染めながら、「実は、拓斗くんもこの高校に入学しました……」
「え~っ! 素敵です、素敵です! もう絶対につむぎちゃんのこと大好きですよ! わざわざ同じ高校を選ぶだなんて、見え透いた恋心に違いありません!」
「あ、いえ、そんなこと、ないですよ…… だって、他にもたくさん、拓斗くんと同じクラスの男の子がこの高校を選んでましたし――」
「いいえ! そんなはずありません! そんなの、そんなの私が絶対に許しません!」
許しませんって、何様のつもりだよ、真帆……
「告白はっ? 告白はされなかったんですかっ、今まで!」
「あ、いえ、まさか、そんなこと、あるわけないじゃないですか……」
「なんでっ! なんでなんですかっ! つむぎちゃん、こんなに小柄で可愛らしいのに! じゃぁ、じゃぁ、告白したことはっ? 拓斗くんに告白したことはないんですかっ!」
「で、できませんよ、告白なんて! ムリですっムリですっ! 私なんか――」
「ムリなんてことないです! 私が保証します! さぁ、告白しに行きましょう! 今すぐに!」
「えぇっ! 今からっ? えっ! ええぇっっ?」
「ほらっほらっ! 立ってください! 善は急げ! 行きましょう!」
何故か何故だか興奮気味に肥田木さんの腕を掴む真帆に、ついに僕も鐘撞さんも見ていられなくなる。
「真帆っ」
「真帆先輩?」
僕が真帆の、肥田木さんの腕を掴むその手をやんわりと押さえると、きょとんとした表情で真帆は首を傾げながら、不思議そうに口にする。
「なんですか、ふたりとも、そんなに怖い顔して?」
やれやれ、と僕も鐘撞さんも肩を落としながら、
「やりすぎ」
「とばしすぎ」
「え~っ! そんなことありませんよ!」素っ頓狂な声を上げて、真帆は肥田木さんに顔を向けながら、「ね? つむぎちゃん!」
「あ、いえ、私も、そんな……」
明らかに断ろうとしてる肥田木さんの返答を、真帆はいったいどう勘違いしたのやら、
「ほらほら!」
とにっこり笑顔。
たまらず鐘撞さんは肥田木さんを真帆から引き剥がしつつ、
「――なにがどうほらほらなんですか。肥田木さんも困ってますよ」
「……え? そうなんですか?」再びきょとんとする真帆。「困ってるんですか?」
「あ、え、いや――はい……すみません」
僕は大層ショックを受けている様子の真帆の肩に手をやりながら、
「落ち着きなよ、真帆。可愛い後輩が入ってきて嬉しい気持ちはわかるけど、今日はそこまでにしておこうよ」
「……これからが楽しいところだったのにぃ~」
「まだまだ時間はあるから。とりあえず、今日のところは落ち着きなよ、真帆」
「……は~い」
不服そうに唇を尖らせて、ぷくりと頬を膨らませる真帆。
そんな真帆の様子に、肥田木さんも困ったように、苦笑いを浮かべるばかりだった。
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