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最終話 夢猫
第3回
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「むぅ、どっちへ行ったと思う?」
古書店を出てすぐ、左右に伸びる通りをきょろきょろ見渡して、真奈が僕を見上げてきた。
ちょっと出かけてくる、とむぅがいったのであれば、きっと家の敷地から外へ出ているのは間違いないのだろうけれど、そこから先の足取りまで予想できるはずもない。
けれど、普通のひとにはわからなくて、僕や真奈には確かにわかるものがあった。
――そう、魔力の軌跡だ。
特に夢魔はもともと魔力そのものだった存在だ。意思を持った魔力の集合体、ともいえる異形だ。
それはつまり、どこへ行くにしても必ずそこには魔力の軌跡が残るということになる。
できればその軌跡を辿るのに便利な魔力磁石があったほうが捜索も楽なんだろうけれど、あいにく今は手元にない。
ただ、夢魔ほどの魔力なら、なにもない素の状態の僕らにもわかるんじゃないだろうか。
「真奈は、なにか感じない?」
「え、わたし?」
きょとんとする真奈に、僕は「うん」と頷く。
「真奈は毎日むぅと一緒にいるだろ? だから、真奈なら感覚でわかると思うんだ」
「う~ん、そういわれても……」
「じゃぁ、ちょっと目を閉じてみて」
「目を?」
「そう。その状態で、頭にむぅの姿を思い浮かべるんだ」
「うん、わかった」
真奈は瞼を閉じ、小さく呼吸を繰り返す。
それからしばらくして、
「……あっ」
何か気付いたように、口を開いた。
「なにか、感じた?」
「むぅの匂いがする。これは……えっと……あっちだ。コンビニの方」
「うん、いいね。じゃぁ、行ってみようか」
「うん!」
瞼を開いて勢いよく駆け出す真奈に、僕は慌てて声をかけた。
「あ、待って! 真奈!」
真奈は驚いたように足を止めて、
「なに? 急がないと!」
足踏みしながら、落ち着かない様子で僕に振り向く。
「そんなに焦らなくても大丈夫。それより、急に駆け回るほうが危ないよ。もし事故にでもあったらどうするの?」
「大丈夫だよ、それくらい」
頬を膨らませる真奈だったが、それを許すわけにはいかない。
「だめだよ。こないだあっちの世界に行った時のこと、もう忘れたの?」
「ううっ……それは……」
途端にバツが悪そうに顔をしかめる真奈の手を、僕はしっかりと握り締めながら、
「心配するのは僕だけじゃない。ママもパパも、アリスさんも、みんながそうなんだ」
真奈に目線を合わせながら、噛んで含めるように、僕は静かにそう語った。
「むぅのことが心配なのはわかるけど、そんなに焦らなくても大丈夫だから」
真奈はこれまでにも、何度も感情に任せて猪突猛進してしまうことが多々あった。真帆ねえも昔はそうだったらしい。だからこそ、周りの大人がちゃんとそれを止めなければならなかった。
「だから、いい? 絶対に、この手を離さないで。少なくとも、むぅを見つけるまでは」
真奈はそんな僕の言葉に、静かに、けれど渋々といった様子で、
「……うん、わかった」
と素直に頷いたのだった。
「むぅ、どっちへ行ったと思う?」
古書店を出てすぐ、左右に伸びる通りをきょろきょろ見渡して、真奈が僕を見上げてきた。
ちょっと出かけてくる、とむぅがいったのであれば、きっと家の敷地から外へ出ているのは間違いないのだろうけれど、そこから先の足取りまで予想できるはずもない。
けれど、普通のひとにはわからなくて、僕や真奈には確かにわかるものがあった。
――そう、魔力の軌跡だ。
特に夢魔はもともと魔力そのものだった存在だ。意思を持った魔力の集合体、ともいえる異形だ。
それはつまり、どこへ行くにしても必ずそこには魔力の軌跡が残るということになる。
できればその軌跡を辿るのに便利な魔力磁石があったほうが捜索も楽なんだろうけれど、あいにく今は手元にない。
ただ、夢魔ほどの魔力なら、なにもない素の状態の僕らにもわかるんじゃないだろうか。
「真奈は、なにか感じない?」
「え、わたし?」
きょとんとする真奈に、僕は「うん」と頷く。
「真奈は毎日むぅと一緒にいるだろ? だから、真奈なら感覚でわかると思うんだ」
「う~ん、そういわれても……」
「じゃぁ、ちょっと目を閉じてみて」
「目を?」
「そう。その状態で、頭にむぅの姿を思い浮かべるんだ」
「うん、わかった」
真奈は瞼を閉じ、小さく呼吸を繰り返す。
それからしばらくして、
「……あっ」
何か気付いたように、口を開いた。
「なにか、感じた?」
「むぅの匂いがする。これは……えっと……あっちだ。コンビニの方」
「うん、いいね。じゃぁ、行ってみようか」
「うん!」
瞼を開いて勢いよく駆け出す真奈に、僕は慌てて声をかけた。
「あ、待って! 真奈!」
真奈は驚いたように足を止めて、
「なに? 急がないと!」
足踏みしながら、落ち着かない様子で僕に振り向く。
「そんなに焦らなくても大丈夫。それより、急に駆け回るほうが危ないよ。もし事故にでもあったらどうするの?」
「大丈夫だよ、それくらい」
頬を膨らませる真奈だったが、それを許すわけにはいかない。
「だめだよ。こないだあっちの世界に行った時のこと、もう忘れたの?」
「ううっ……それは……」
途端にバツが悪そうに顔をしかめる真奈の手を、僕はしっかりと握り締めながら、
「心配するのは僕だけじゃない。ママもパパも、アリスさんも、みんながそうなんだ」
真奈に目線を合わせながら、噛んで含めるように、僕は静かにそう語った。
「むぅのことが心配なのはわかるけど、そんなに焦らなくても大丈夫だから」
真奈はこれまでにも、何度も感情に任せて猪突猛進してしまうことが多々あった。真帆ねえも昔はそうだったらしい。だからこそ、周りの大人がちゃんとそれを止めなければならなかった。
「だから、いい? 絶対に、この手を離さないで。少なくとも、むぅを見つけるまでは」
真奈はそんな僕の言葉に、静かに、けれど渋々といった様子で、
「……うん、わかった」
と素直に頷いたのだった。
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