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最終話 夢猫
第4回
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4
僕らは通りを右へ進み、角を曲がってコンビニの前で立ち止まった。
そこで真奈はもう一度瞼を閉じ、神経を集中させる。
「――道路の向こう側に行ったみたい」
「そっか。じゃぁ、僕らも行こう」
少し離れたところの横断歩道を渡り、道路の向こう側に僕らは向かった。
そこでさらにもう一度、真奈は瞼を閉じて、
「あっち、公園のほう」
「うん、わかった」
真奈の指さす方へ足を向けた。
そこからさらに住宅街を抜けて、公園の前まできたところで、
「……どうしよう、お兄ちゃん」
真奈が立ち止まり、僕を見上げる。
「どうしたの?」
訊ねれば、
「むぅの匂い、消えちゃった――」
「えっ」
まさか、そんなはずは……
真奈は明らかに動揺した様子で、
「どうしよう、どこへ行っちゃったんだろ…… まさか、事故に遭っちゃったとか……?」
今にも泣き出しそうになるのを、僕は真奈の背中を軽く叩いて、
「大丈夫、おちついて」
真奈の目線に合わせてしゃがんだ。
そんな僕に、真奈はまっすぐな視線を寄こして、
「ねぇ、おにいちゃんは? むぅを追えない?」
「いや、僕は――」
いい淀む僕に、畳みかけるように真奈はいった。
「お兄ちゃんだって、魔法が使えるはずだもん」
その言葉に、
「……なんだって?」
と僕は思わず驚愕する。
「お兄ちゃんも使えるんでしょ? 魔法」
僕はその期待するような視線に動揺を隠せなかった。
なにしろ、僕が魔法を使えることは真奈にも秘密にしていたからだ。
けれど、この秘密を知る数少ない友人や知人が真奈に教えたなんてことも、どうしても考えられなかった。
「……どうしてそう思ったの?」
すると真奈は不思議そうな表情で、
「だって、お兄ちゃんからも匂いがするもん。私やママと同じ匂い。たぶん、アリスさんとも似てるやつ。これってたぶん、魔力の匂いだよね?」
むぅの軌跡を追うように指示したことでそれに気づいてしまったのか、それとも前から感づいていたのか。
僕はどう答えたらいいのか逡巡し、少ししてから、
「その話、誰かにした? 例えば、ママやパパとか」
確認するように真奈に訊ねた。
真奈は首を横に振って、
「ううん、してないよ」
「そっか」
僕は胸を撫でおろして、安堵の溜息を吐いてから、
「……これからも、秘密にしておいてもらえるかな」
「どうして?」
目をぱちくりさせながら首を傾げる真奈。
僕は「う~ん」と小さく唸ってから、
「僕は、魔法使いになる気はないからだよ」
「魔法が嫌いなの?」
「そういうわけじゃないんだけど…… そう、パパだって魔法は使わないでしょ?」
「だって、パパは魔力が弱くて魔法が使えないもの。お兄ちゃんとは違うよ」
「確かにそうだけど――ほらでも、茜さんみたいにもともと魔法が使えない人だって、魔法を使おうと思えば、頑張って魔法が使えるようになることがあるでしょ?」
「うん」
「けど、パパはその道を選ばなかった。僕も一緒。人としての人生を選んだんだ」
「ふ~ん? よくわかんない…… それでも、秘密にしておく意味がわかんない」
僕はその言葉に微笑んで、
「……そうだね、僕も実はよくわからない。だけど、お願いだからこのことは秘密にしておいて欲しいんだ。そうだな。僕と真奈、ふたりだけの秘密ってことでどう?」
「お兄ちゃんと、ふたりだけの?」
「そう、ふたりだけの」
真奈はじっと僕の目を見つめて、それから渋々といった様子でこくりとひとつ頷いた。
「……うん、わかった。わたし、誰にも言わない」
「うん、ありがとう、真奈」
「けど、今だけ! 今だけお願い! むぅが心配なの!」
手を合わせて拝むように縋りついてくる真奈に、さすがの僕も断り切れなかった。
「……わかった」
「ありがと、お兄ちゃん!」
満面の笑みを浮かべる真奈。
僕は立ち上がり、瞼を閉じた。
神経を集中させて、むぅの魔力の軌跡を探る。
正直、僕よりも真奈の方が魔力は高いのだから、大した力にはなれないと思うのだけれど……
「――っ」
微かにむぅの気配を感じて、僕はその軌跡を静かに辿った。
その軌跡は、住宅街の奥へと点々と影の中を潜るように消えていって――
僕はその行く先がどこなのか、なんとなく理解した。
「あっちだ、真奈」
「わかったの?」
「うん」
「むぅ、どこ行っちゃったの?」
「真奈も、よく知っている人のところだよ」
「わたしも?」
「そう。あっちのほう、っていったら、もうわかるでしょ?」
僕がむぅの行く先を指差すと、真奈は「あっ」と口にして、
「――アリスさんのところだ!」
僕らは通りを右へ進み、角を曲がってコンビニの前で立ち止まった。
そこで真奈はもう一度瞼を閉じ、神経を集中させる。
「――道路の向こう側に行ったみたい」
「そっか。じゃぁ、僕らも行こう」
少し離れたところの横断歩道を渡り、道路の向こう側に僕らは向かった。
そこでさらにもう一度、真奈は瞼を閉じて、
「あっち、公園のほう」
「うん、わかった」
真奈の指さす方へ足を向けた。
そこからさらに住宅街を抜けて、公園の前まできたところで、
「……どうしよう、お兄ちゃん」
真奈が立ち止まり、僕を見上げる。
「どうしたの?」
訊ねれば、
「むぅの匂い、消えちゃった――」
「えっ」
まさか、そんなはずは……
真奈は明らかに動揺した様子で、
「どうしよう、どこへ行っちゃったんだろ…… まさか、事故に遭っちゃったとか……?」
今にも泣き出しそうになるのを、僕は真奈の背中を軽く叩いて、
「大丈夫、おちついて」
真奈の目線に合わせてしゃがんだ。
そんな僕に、真奈はまっすぐな視線を寄こして、
「ねぇ、おにいちゃんは? むぅを追えない?」
「いや、僕は――」
いい淀む僕に、畳みかけるように真奈はいった。
「お兄ちゃんだって、魔法が使えるはずだもん」
その言葉に、
「……なんだって?」
と僕は思わず驚愕する。
「お兄ちゃんも使えるんでしょ? 魔法」
僕はその期待するような視線に動揺を隠せなかった。
なにしろ、僕が魔法を使えることは真奈にも秘密にしていたからだ。
けれど、この秘密を知る数少ない友人や知人が真奈に教えたなんてことも、どうしても考えられなかった。
「……どうしてそう思ったの?」
すると真奈は不思議そうな表情で、
「だって、お兄ちゃんからも匂いがするもん。私やママと同じ匂い。たぶん、アリスさんとも似てるやつ。これってたぶん、魔力の匂いだよね?」
むぅの軌跡を追うように指示したことでそれに気づいてしまったのか、それとも前から感づいていたのか。
僕はどう答えたらいいのか逡巡し、少ししてから、
「その話、誰かにした? 例えば、ママやパパとか」
確認するように真奈に訊ねた。
真奈は首を横に振って、
「ううん、してないよ」
「そっか」
僕は胸を撫でおろして、安堵の溜息を吐いてから、
「……これからも、秘密にしておいてもらえるかな」
「どうして?」
目をぱちくりさせながら首を傾げる真奈。
僕は「う~ん」と小さく唸ってから、
「僕は、魔法使いになる気はないからだよ」
「魔法が嫌いなの?」
「そういうわけじゃないんだけど…… そう、パパだって魔法は使わないでしょ?」
「だって、パパは魔力が弱くて魔法が使えないもの。お兄ちゃんとは違うよ」
「確かにそうだけど――ほらでも、茜さんみたいにもともと魔法が使えない人だって、魔法を使おうと思えば、頑張って魔法が使えるようになることがあるでしょ?」
「うん」
「けど、パパはその道を選ばなかった。僕も一緒。人としての人生を選んだんだ」
「ふ~ん? よくわかんない…… それでも、秘密にしておく意味がわかんない」
僕はその言葉に微笑んで、
「……そうだね、僕も実はよくわからない。だけど、お願いだからこのことは秘密にしておいて欲しいんだ。そうだな。僕と真奈、ふたりだけの秘密ってことでどう?」
「お兄ちゃんと、ふたりだけの?」
「そう、ふたりだけの」
真奈はじっと僕の目を見つめて、それから渋々といった様子でこくりとひとつ頷いた。
「……うん、わかった。わたし、誰にも言わない」
「うん、ありがとう、真奈」
「けど、今だけ! 今だけお願い! むぅが心配なの!」
手を合わせて拝むように縋りついてくる真奈に、さすがの僕も断り切れなかった。
「……わかった」
「ありがと、お兄ちゃん!」
満面の笑みを浮かべる真奈。
僕は立ち上がり、瞼を閉じた。
神経を集中させて、むぅの魔力の軌跡を探る。
正直、僕よりも真奈の方が魔力は高いのだから、大した力にはなれないと思うのだけれど……
「――っ」
微かにむぅの気配を感じて、僕はその軌跡を静かに辿った。
その軌跡は、住宅街の奥へと点々と影の中を潜るように消えていって――
僕はその行く先がどこなのか、なんとなく理解した。
「あっちだ、真奈」
「わかったの?」
「うん」
「むぅ、どこ行っちゃったの?」
「真奈も、よく知っている人のところだよ」
「わたしも?」
「そう。あっちのほう、っていったら、もうわかるでしょ?」
僕がむぅの行く先を指差すと、真奈は「あっ」と口にして、
「――アリスさんのところだ!」
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