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魔法使いの弟子
第2回
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「あらあら、そんなことがあったんですか」
その日の夜、私と真帆さんはいつものようにテーブルを挟んで向かい合い、食後のお茶を飲んでいた。
昼間にやってきたアイザとの件を真帆さんに話していたのだけれど、思い返すだけでも忌々しい。
湯飲みを傾けて、ずずっとお茶を啜る真帆さんの、その余裕の笑みも妙に腹立たしくて仕方がなかった。
「――それで、茜ちゃんはどうしたんですか?」
「どうもこうも」
と私は首を横に振り、
「なにも」
あのあと、アイザはただ好き勝手に喋っていただけで、私が無視を決め込むと「じゃあね」と言い残して帰って行ったのだ。
ホント、何をしに来たのかさっぱり判らん。
「なにも?」
と首を傾げる真帆さんに、私は、
「――だって、私と神楽くんの間には、もう何もないんですから。あいつがアイザと結婚しようが何しようが、私には関係ないじゃないですか」
言って、真帆さんと同じようにお茶を啜った。
そう、関係ない。
私と神楽くんは、もうとっくの昔に別れているのだ。
何を今さら、って感じだ。
けれど。
「……ふ~ん?」
と真帆さんは鼻を鳴らし、一口お茶を口に含むと、
「まぁ、茜ちゃんがそれで良いんなら私は別に構わないんですけど」
と小さく息を吐いた。
そんな真帆さんに、私は唇を尖らせながら、
「……なにさ」
すると真帆さんは、真面目くさったような顔で、
「本当に、茜ちゃんはそれでいいんですか?」
それに対して、私は眉間に皺を寄せつつ、
「それ、どういうこと?」
「茜ちゃん、ずっと気にしてるじゃないですか。夢矢くんとのこと」
「そ、そんなことは――」
「そうですか?」
真帆さんは小首を傾げ、
「私には、まだ心の中でくすぶっているように見えますけれど」
「…………」
私は思わず真帆さんを睨みつけた。
真帆さんのその眼は、まるで全てを見透かすかのように輝いて見えた。
もしかして、また何かこっそり魔法を使って、私の心の中を覗き込んでいるわけじゃないだろうな。
「まだ、自分の中でけじめがついていないんじゃないですか?」
「そんなこと、ある訳ないでしょ? もう何年も前の話なんだよ?」
「そうですか?」
真帆さんは小さくため息を一つ吐き、すっと立ち上がる。
「それなら、別に良いんですけど……」
それから湯飲みを持って台所へ身体を向けながら、
「ただ、今一度自身の心の中を覗いてみるのも、良い機会かも知れませんよ?」
そう言って、優しく微笑んだのだった。
「あらあら、そんなことがあったんですか」
その日の夜、私と真帆さんはいつものようにテーブルを挟んで向かい合い、食後のお茶を飲んでいた。
昼間にやってきたアイザとの件を真帆さんに話していたのだけれど、思い返すだけでも忌々しい。
湯飲みを傾けて、ずずっとお茶を啜る真帆さんの、その余裕の笑みも妙に腹立たしくて仕方がなかった。
「――それで、茜ちゃんはどうしたんですか?」
「どうもこうも」
と私は首を横に振り、
「なにも」
あのあと、アイザはただ好き勝手に喋っていただけで、私が無視を決め込むと「じゃあね」と言い残して帰って行ったのだ。
ホント、何をしに来たのかさっぱり判らん。
「なにも?」
と首を傾げる真帆さんに、私は、
「――だって、私と神楽くんの間には、もう何もないんですから。あいつがアイザと結婚しようが何しようが、私には関係ないじゃないですか」
言って、真帆さんと同じようにお茶を啜った。
そう、関係ない。
私と神楽くんは、もうとっくの昔に別れているのだ。
何を今さら、って感じだ。
けれど。
「……ふ~ん?」
と真帆さんは鼻を鳴らし、一口お茶を口に含むと、
「まぁ、茜ちゃんがそれで良いんなら私は別に構わないんですけど」
と小さく息を吐いた。
そんな真帆さんに、私は唇を尖らせながら、
「……なにさ」
すると真帆さんは、真面目くさったような顔で、
「本当に、茜ちゃんはそれでいいんですか?」
それに対して、私は眉間に皺を寄せつつ、
「それ、どういうこと?」
「茜ちゃん、ずっと気にしてるじゃないですか。夢矢くんとのこと」
「そ、そんなことは――」
「そうですか?」
真帆さんは小首を傾げ、
「私には、まだ心の中でくすぶっているように見えますけれど」
「…………」
私は思わず真帆さんを睨みつけた。
真帆さんのその眼は、まるで全てを見透かすかのように輝いて見えた。
もしかして、また何かこっそり魔法を使って、私の心の中を覗き込んでいるわけじゃないだろうな。
「まだ、自分の中でけじめがついていないんじゃないですか?」
「そんなこと、ある訳ないでしょ? もう何年も前の話なんだよ?」
「そうですか?」
真帆さんは小さくため息を一つ吐き、すっと立ち上がる。
「それなら、別に良いんですけど……」
それから湯飲みを持って台所へ身体を向けながら、
「ただ、今一度自身の心の中を覗いてみるのも、良い機会かも知れませんよ?」
そう言って、優しく微笑んだのだった。
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