√選びのメランコリー

松平 なま暗

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三学年対抗劇

三年一組 「必ず支配したがる愚か者」

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そこはざわざわと音が発せられている、広い空間。そして明かりはついていなく、暗い。その広い空間にはたくさんの椅子が置かれていた。その椅子たちに腰掛けるたくさんの人。しかし、その席にも、三十席ほど空いている場所があった。その空いている席に本来座る三十人ほどのいる場所は、控え室。
 そう、今日は「三学年対抗劇」なのだ。
 今日のために三年は精一杯の準備をし、本番へと紡いだ。
 その、ざわつく空間とは体育館で、今、体育館を静まり返らせる現象が起きた。
 「ステージ」が照らされたのだ。
 その時、寂寥、ともいえるほど静かだった空気を切り裂く「司会」の声が響いた。
 始まる。

 

「ええ、それではこれより三学年対抗劇を始めます。全校の皆さん、どうぞお楽しみください」
 それに多少のざわつきが聞こえるが、司会のマイクを使った声には及ぶまい、と司会は無視し、続けた
「まず最初に三年一組、題名「必ずの王」。どうぞ、お楽しみください。」
 すると、ステージには一人の女子生徒がマントを羽織り、たっていた。
 そこに立っていた女子生徒は語り人ナレーターだった。

「人間は、とても欲深いものである。だって、誰もが「強欲」という感情を持っているのだから」


 マントを羽織るナレーターは、ステージの端の端、観客席からはぎりぎり見える、という状態だった。どうやらこの「マント」には、非日常的な物語への引き込み役、そして端にいることで、劇に集中してもらえるという塩梅だ。
 その時、観客の視線がマントに集まった時、ステージの横から、としか言えない、普通の黒いズボンに、白いTシャツを着た、普通の男子生徒がでてきた。彼は、ステージの真ん中に立つと、そこにスポットライトが向けられた。そして一般男性は、言った。

「どうして、どうしてなのだろう」
 彼は少しばかり、悲しさを表現する。そして、

「何故だ?人間というものは、俺の思い通りに動かない」
 彼は両手を上に高く掲げ、万歳よりも角度を狭くした。

「ああ、誰か。いや、神様。俺は神様なんて信じちゃいない、が、世界中には宗教や、日本では神社のように神にすがるような人間は多くいる。だから、仮にでも、本当にいるとするなら、俺に力をくれないか?」
 言った。

強制支配する力マインドコントロールを!」
 彼がそう言い切ると、明かりは消え、ステージから体育館までもが真っ暗になる。

 数秒後。ステージの明かりが戻り、ステージだけは見えるようになる。
 その時、観客は気付いた。背景がであることを。そしてその教室は、明かりを赤いテープなどで加工したものを使用し、夕方、否、放課後を意識させた。
 因みに教室の背景、というのは、ステージ上に机、教卓、そして黒子が支える黒板があったからだ。(本物の黒板ではなく、あくまで手作りの小道具)
 そして、観客は皆、背景に圧倒されていたが、次に、また人物が現れた。二人、男女だ。
 
 女の方はもちろん中学の制服を着ていて、男の方も同じく制服だ。しかし、男の方は先ほどあらわれた、白いTシャツの男だ。
 そして、女の方は置かれている机の上に腰を置き、男はその女の前に立ってから、女の方は言った。

「で?話って何。私早く部活にいきたいんだけど」
 女は長い髪を指で巻いたりしてもて遊ぶ。脚も組み、いかにも強気の女、という感じがした。

「あ、あのさ。突然なんだけど・・・。あ、あっ、あなたが好きですっ!付き合って下さい!」
 男は机に腰掛ける女に、腰を折り、頭を下げ、手を前に出す。
 おそらく、この手を前に出すという動作には、という意味だろう。しかし、この動作は、告白が成立すれば、大変かっこよく見えるだろう・・・。というのは、

「お断りよ」
 と彼女は冷酷に。しかし男は動揺し。

「えっ」
 と、情けない声とともに、ゆっくり顔を上げる男のまえにいた女は。笑っていた。

「「えっ」って、まるで貴方は「必ず告白に成功する」とでも思っていたのかしら?残念、ハズレ」
 女は喋りながら机から降り、ただ呆然と立っている男の懐に、頭を入れ、威圧してから、

「私は貴方とは付き合わないわ。以上。それじゃあね」
 と、彼女は一方的に話し、去ろうとしていた、そのとき。男が、去る女の背中に、こう言った。

「何故、俺はあなたと付き合えなかったんだろうか」
 と、彼が言うと、女は振り向かず、ただ、淡々と言った。

「簡単よ。貴方が私と同価値でないから」
 と、続けて、

「貴方こそ、なんで私に告白して、成功すると思ったの?仮に「振られることは考えずにあたってみた」とか言ったら滑稽ね」

「・・・」
 男が出した返答は無言。それに気づいた女はその場から去る。
 女が去ったこと、振られたことに、落ち込み男は膝をつく。そして、呆れたように、顔を天に向け、

「ああ、現実ってのは思い通りにいかねぇなあ・・・。ダメだ俺・・・。なんか涙が・・・ははっ」
 
 彼はふらふらと、安定しない足つきで立ち上がり、教室から出ようとした。が、しかし。
 机に足を引っ掛け、そのまま転び、気を失ってしまった。

 そして、再度、暗くなる。観客からは何も見えない状態だ。

 数秒後。明るくなる。そして、次に用意されたセットは白い部屋に、白いベッド。そしてそこに眠っている、さっき倒れた男だ。
 そして、このセットにいたのはこの男だけではなかった。フード付きの(フードをかぶっている)黒いマントを羽織り(語り人とは別)、いかにも怪しい、という様な者がベッドの横の椅子に座っていた。
 その時、寝ていた男は目を覚ます。

「んっ、んんっ。ここは・・・保健室か?・・・なんで?」
 と、彼は独り言を言った、が、それに返答が来た。

「私が君を教室から運び、ここに寝かせた」
 と返答したのは黒マント。見知らぬ者を見た男は、驚く、と、思いきや、平然と。

「そうだったのか。ありがとう。で、黒マント・・・って、まず誰なんだ?」
 隣に座る黒マントは、黒い、薄い手袋をつけた右手を、左右にひらひらさせて

「詳細は言えない。だがこれを持っておれ」
 と、左手でマントの中から、コンタクトレンズを取り出した。それを男に手渡す。布団の下に合った手を引っ張り出し、それを受け取る。それを怪しい、という感じで宙でひらひらさせてみる。その時、男は思った。

「そういや、お前、声からして女だな。」
 と、コンタクトレンズを持っていないほうの手で指差す。それに、マントは、

「・・・いいから。そのコンタクトを付けてください」
 そうやって促すマントに、男は従い、右目に付ける。そしてマントが

「それは、辛いであろう君を救う道具となるだろう」
 と言うと、男は、

「は?何言ってんの?こんなんが何になるっていうん・・・」
 言っていると、マントは言葉を挟んだ。

「それは、家でうるさく言われ、好きな子に振られた辛い君に、ちょっとでもいい気分になってもらう道具だ」
 その言葉に男は、

「なんかさっきから遠回しな言い方だなあ。結局どうなんだ?どういうことなんだよ」
 と、手で煽ってみる。するとマントは

もの。ーーーと言うのがいいかな。つまりは、強制支配する力マインドコントロールというものだ」
 強制支配する力、という言葉に驚き、男は、

「じゃ、じゃあ、今ここでお前に「そのフードを取れ」とか言ったら取るわけ?」
 いえ、とマントは

「私がそれを作ったのであるからして、私にはきかん。でも、人間に限るが、人間には普通に効くだろう。」
 だけど、と

「注意がある。その強制支配する力は、
①発動時、自分を中心として半径二メートル以内に相手がいる状態に限る。
②もともと、人間に不可能なこと、例えば「空を翔べ」だとかは無理。 
③発動時、自分が相手を目で見ている状態でないと、発動しない。
④発動時、実行することを言葉で言う。
⑤発動時に言ったことを解除することは、①、③と同じ条件で解除することを言葉で言う。
って、聞いているのか?」
 男は「人間を支配できる」ということを早く確かめたかったのか、もう保健室から出ていっていた。その事に気づいたマントは

「やれやれ、せめて、。貴重な実験台だ」
 マントは呆れ返っていると、明かりは落ち、暗くなった。


 暗くて、何も見えないとき、ナレーターの声はきた。

「彼は、力を手に入れた。そして、彼が向かったのは先程の振った女のもとだった。」

 明かりがつく。今度は体育館の前の廊下。そこにある水道から、バレーのユニフォーム姿の女は水を飲んでいた。先程、振った女だ。
 そして、その女が水を飲み終わり、その場から去ろうとした時。
 力を手に入れた男がきた。それに気づいた女は、

「・・・どうしたの?こんなとこまで」
 本当は話したくないけれど、しょうがないから話してやる、と、いう感じで。それに男は、荒い息をはきながら、

「はっ、はあっ・・・告白しにきた・・・っ」
 そう言って、女に歩み寄る。それに女は向かってくる男の顔前に手のひらを向けて、

「お断り、と言ったはずだけど?」
 拒む女。そして、男は手のひらぎりぎりで止まり、その距離約一・五メートル。
 そこで、目を、否、片目のコンタクトごしに彼女を見たら、あとは、

「俺と付きあえ。そして、抱きつけ、離すな」
 その言葉に女は「はあ?」と答える。やっぱり嘘だったのか、と、思うとき、ふと、それは起きた。

「えっ!?あっ!ちょっと?!」
 彼女は男に抱きついた。否、それは強制的にだ。
 理由は簡単。彼女は現状、拒み続けている、

「ふざけるなっ!なんで!体が勝手に!」
 無理矢理に引き剥がそうとする彼女は、しかし、身体が動いていない。
 その時、男は

 笑っていた

「そうかいそうかい、付き合ってくれるんだね?ありがとう。離れろ」
 それに彼女は暴言を吐き続きる。

「本当に!?なんなのよ!!」
 男は、チッ、と舌打ちしてから

「訂正。彼女じゃなくて、奴隷だ。そして、膝をついて拘束、言動注意」
 はあっ?!と、言っている彼女は一旦束縛から開放された。しかし、膝をついた状態で、また動かなくなった。
 そして、

「な、何でしょうご主人様」
 そう言ったのは、女の意図ではない。奴隷として、勝手にだ。
 現に、彼女は

「ーーっ。ーーーーっ!」
 言葉を発しようとしても、声が出ていない。言動に、主人に対する忠誠の補正がかかる。しかし、彼女の目は未だに強い殺気を持ったままこちらを睨んでいる。それに、男は

「まずはさ、試しにバレー部員達にこう言ってきてよ」
 と、男は屈み、耳打ちした。

「?!」
 その内容に驚く彼女は、しかし、嫌がる顔とは裏腹に、立ち上がり、ゆっくりと体育館へと向う。しかし、

「おっ、ここにいたのかあ!探したぞ?」「おお、」「とりあえず水ー!」と不特定多数のバレー部員が。
 それに、奴隷は歩み寄り、

「ん?どうした?」
 と、いつもと何かが違う奴隷に疑問を浮かべていると、女達に向かって奴隷は言った。

「私は、ご主人様の奴隷です。何でもします」
 と、奴隷は主人の靴を舐め始めた。
 その行動にバレー部員は

「ちょっ?!何してんの?!頭・・・冷やしてから来てね? 」
 と、一人が言うと、皆颯爽と去って行った。その顔は皆引き気味だった。
 二人しかいなくなった廊下で、主人は、

「発言を許可する、そして靴を舐めるのをやめ、起立せよ、しかし身体は動かせない。ただし生命に支障をきたす場合と、言動に必要なものは動かしてよい。」
 と、いい、立った奴隷は身体を動かせず、ただ口だけ動かし、

「な、なんてことさせるのよ!?そして何なんよこれ!?」
 その奴隷は涙を流す。しかしそれに、主人は

「お前が最初っから振ってなきゃ良かったんだよ。奴隷が」
 と、言うと、主人は去ろうとする。しかし、言い忘れた、と

「ああ、奴隷よ、これから頼むぜぇ?」
 ニヤリ、と笑った男は、彼女に歩み寄って

「これは、俺からの気持ちだ」
 と、奴隷の腹に拳を入れた
 
「がはっっ!」
 そうして、彼女は殴りを受け、倒れ・・・ない。体は動かない。痛みに耐えながら、男の言葉を聞いた。

「拘束、一時解除」

 身動き出来るようになる。
 彼女は走って、男を殴ろうとする、

「拳よ止まれ、そして腕を後ろで組め」
 が、男の顔スレスレで、女の拳は止まる。

「はあっ?!」
 しょうがねぇ、と男は右脚を宙で後ろに下げ、回しながら女の横腹を蹴る、と同時に

「動くな」
 彼女は腹を抱えることも、もがくこともできずに、横腹にダメージを受けた。

「奴隷ってのはなあ、ご主人様に従順でなきゃいけねぇんだ、よっ!」
 と、奴隷の顔に男は拳を向け、飛ばす。当たる・・・と思いきや、男の拳は止まる。それは、強制でなく、自分の意志で

「なあんてなぁ?動いていいぜ?」
 と、奴隷はそのまま床に倒れ、腹を抱え悶絶した。
 それを気にせず、男は去っていった。
 そしてまた、去る彼の顔は笑みで隠しきれていない。

 と、また暗くなる。

 数秒の間が空き、今度は家に着いた。その家は勿論、、力を持った男だ。
 男は玄関を開けると、母親に出迎えられた。

「あらー、お帰り、忠勝たーくん!」
 そう、この若々しい・・・のは母である。そしてたーくんは

「もう、母さん。忠勝でいいよ・・・」
 そういうと母は

「あら、忠勝とかなんか渋くていやだとか言ってたのに、いいの?」
 その言葉に忠勝はうぅっ、と萎縮した。そして

「・・・やっぱり今までどおりでいいよ」
 諦めたように言うと母が忠勝の鞄を受け取り、歓迎する。まるで、夫のように。
 
 そして何度目だろうかの暗黒。

 数秒後。

 母についてゆき、リビングに着いた。
 そうして母に椅子に座るように促され、そのセットになっているテーブルにケーキを母が置く。

「これ、お母さん作ったんだけど、味の感想よろしくね」 
 チーズケーキのようだ。まあいい、と口に運ぶ。

「う、これ「チーズケーキ」じゃなくて、ほとんど「ただのチーズ」だよ・・・」
 そういって味への評価をする忠勝。それに反応した母は

「えっ!?あっほんとに?ちょっともらうね?・・・・・っ、ああほんと、チーズだね」
 少々落ち込む母になんとかフォローをしようと忠勝は

「大丈夫。これも十分美味しいよ、だからまた作ってよ」
 そう微笑む彼に母は涙を流し

「うん・・・がんば!」
 そうだ、これが家族の良い姿だ。しかし、それを壊すように玄関から、音が聞こえた。
 ガチャ、と。それに反応した母は

「あら、お父さんかしらね。今日は早く帰ると言ってたのー!」
 明るく振舞いながら玄関へと向かう母の顔は何処か少しものだった。

 チーズケーキをほおばり、残りの一口を口に入れたところで、玄関の方から、ぱりぃぃん!と、何かが割れるような音がした。その時だった。
 玄関から走るようにして逃げてきた母がリビングの入り口で倒れた。

「おい!母さん!どうしたんだよ!?」
 震えるからだ、その一部の右手で助けを求めるように忠勝に腕を伸ばしたとき、後ろから、否、玄関から歩み寄る声がきた。

「何逃げてるんだ?幸恵。まだ反省していないようだなあ、おい!」
 激昂しながら、母をにらみつけるようにしたのは父だ。

「父さん!何やって・・・」
 るんだよ、と言いかけたときに、言葉が挟まれた、それは邪悪な笑い声で

「ははは、何って・・・愛という教育に決まってるだろ?だめ妻はちゃんとしつけないとダメだからなあ!」
 父は持っていたカバンを母に投げつける。

「やめろよ!」
 と、忠勝は間に入り、とにかく父を落ち着かせようと話をする

「なんで、なんで母さんを・・・」
 それに対し父は

「こいつは俺という、お疲れの主人に対して、持っているカバンも帽子も自分から持とうともしない、常識知らずのバカだからだよ!・・・ったく、専業主婦なんか、仕事じゃねぇんだからそれくらいのこともできずにのこのこのこのこ出で気やがって!全くに不快だ!」
 と、母さんに唾を吐きだし、さっさと自分の部屋へ行ってしまった。そう、父は暴力的な者なのだ。

「大丈夫か!?母さん!?」
 とりあえず、忠勝は母の救護に向かう。
 すると弱弱しそうに

「ええ、お母さんは大丈夫。ほら、たーくん、宿題しに行きなさい・・・。お母さんこれからやることあるから」
 それに対し、倒れる母の腕をつかんで起き上がらせようと、忠勝は引っ張ってみる。すると、

「おいっ・・・それ・・・」
 長袖に包まれていた母の腕には、びっしりと横一線のリストカット。しかし、手首らへんは切れていないので、致命傷には至らなそう。、っではなく!

「あはは、見られちゃったか・・・たーくんには見せたくなかったんだけどなあ」
 無理に笑いを作る母の顔を見た忠勝は

「それ、自分でやったんだよな?!」
 
「ええ」

「他には?!大丈夫なのか?!」
 強く引っ張られた時、うまく立てなかったのか、再び転ぶ母、スカートから、太ももが大きく見え、

「おいおい、その跡って」

「ちょっとした擦り傷よ」
 スカートから見えたその脚には、叩かれたり、切られたりなのか、いくつもの跡がついていた
 今度こそ忠勝は

「もう・・・いい加減にしてくれ。その傷は自分でつけたんじゃないんだろ!」
 明るい顔の母は俯き、

「早く、部屋に行きなさい」

「嫌だ!誰にやられたか言ってよ!」

「そんなの言えないし、いったところでどうしようもないよ」

「言ってみろよ!」
 圧力に押され、母はとうとう吐いた

「お父さんよ・・・」
 その言葉に続けて

「だって、私だけでおさまっているのに、それなのにたーくんもこんなになったらと思うと怖くて・・・」

「そんなもん、今から俺が解決してきてやる!」

「まって!」
 と、母が言う頃には遅かった、もうリビングには忠勝はいない、そう、父の部屋へと向かったのだ。


 暗転。そして数時がたつともうセットは変わり、父の部屋の前だった。
 そして忠勝は怒りながら部屋へとつながる扉を開ける。今日入るのがはじめてだった。

「なんだ!忠勝!」
 そこは、大きな部屋。ダブルベットの上に、いくつものムチ、拘束具、その他もろもろの道具があった。

「何だも何もないさ!母さんにあんな傷を残しておいて!何考えてんだよ!」
 父はあきれたように

「そうか・・・しってしまったか。じゃあ、お前も母さんと同じことをしてみるか?」
 そういって、ベッドの上に置いてある拘束具を持って、忠勝に殴りかかった。
 それに、忠勝は

「止まれ、そして、腕を後ろで組み、脚を床につけろ」
 それに呼応するように、父は止まり、後ろで腕を組み、脚を床に付けた。

「くそっ!なんだこれ、動けん!おい、なんだこれは!」

「聞かれて答えるわけないだろう!」
 そのまま動けぬ父の顔面めがけて飛んだ右手は、見事、父の頬を強く殴った。

「はは、ははっ、ははは、ははははは、ははははははは・・・愉快、どうさ、母さんにした事と同価値のことが俺にもできているかな?え?こんなもんじゃないって?ははは、そうかそうか、じゃあ、母さんに全裸で土下座してこい」

「はっ、なにを言って・・・はあ?!体が!?やめろ!」
 父は全裸になり、廊下を走って母のもとへといった。

「よかったのかなあ、これで」


 暗くなる。
 ここでナレーションが
「奴隷や、父へこの力を使い、これなら自分は神になれる、とおもった彼は、他のものへこの力を使いだす」


 明かりがつくと、そこは、夜の教室だった。
 教室は幾人にも及ぶ、彼のクラスメイトの女子と、彼だけだった。

「やあやあ、皆さん。今日は父親との付き合いで疲れてるんだ、楽しませてくれよ。それじゃあ一つたのむぜぇ?」

「全員、俺を求めるために、殴り合いで戦え。勝った奴は俺が遊んでやる。」
 すると彼女たちは、急に距離の近いものを殴りだす。

「ははは、馬鹿みてぇ。ほんと笑えるわ、この力」
 目の前でいつも学校で見る女子が、理性をなくし、ただ一つの目的のために殴りあいを始める。

「よっしゃあ!いいぞぉ。もっとやれ」
 今、鼻血を出しながら倒れるもの、腹を抱えて悶絶するもの、美味しかったのだろう夕食を吐き出すものが倒れてゆく。

 その時、アナログの大型時計は、午前零時を差した。校舎内にコーン、と鐘のような音が聞こえる。
 それに反応する、主催者は、

「よおし、一人になったか、じゃあこい、あ、服脱げよ?」
 彼の目の前に立っていた女は、昨日、忠勝の奴隷になったものだった。

「服脱いで、こっちに見せてみろ」
 と、言った時だった。 、姿

「は?なんでかってに?は?は?」
 わからない、わからない、なぜかってにこうなったのか、そして、前を見たとき、奴隷の女の隣に、今日保健室で見た黒マントがいた。

「おい!あんた、こりゃどうなってる!なんで俺が・・・」
 くくく、とマントから不気味な女の笑い声。

「いや、説明しようとしたら、もう勝手に出て行ってしまってねぇ。で、言ってなかったんだけど。この力を使った日の次の日、つまり今ちょうど「午前零時」の次の日だから「君が実行した事と同価値のことがその相手にもでききるようになる」のさ」
 だから、

「君は今、彼女の奴隷というわけさ」
 暗い中で、マントの中から白い歯が見える。まるで三日月のように。

「ふざけんな!」と、いう頃には遅かった。だって、

「そのまま、止まれ、動くな、腕を後ろで組み、耐えろ」
 すると、先ほど倒れていたクラスメイトの女子は起き上がり、忠勝へと歩み寄る。

「おいっ、やめろよ、おい!黒マント!何とかしろよ!」

「無理ですね」
 と、即答。

「因果応報です、良いことをすれば良いことが、悪いことをすれば悪いことが、今回あなたがした中で、唯一良いと思われたことは「あなたのは母」への対応。しかし、あなたの母が喜ぶ形にはなりましたが「父」は?悪いことしていたとしても、あなたは父に悪いことをしてしまったことに変わりはありません。」
 一つ大きく息を吸い

「そして、奴隷といった彼女。殴る、蹴るなどの暴行、靴をなめさせる。それらすべては悪いこととなり、そして今さっきの女子生徒を巻き込んだ殴り合いもそれに含まれ、結果」

 深呼吸。

「あなたは「父親に全裸であやまり」「奴隷となって服従し」「女子生徒になぐられる」ことで、返済されるのです。」
 そんな理不尽なことに忠勝は

「はあ?!何言ってんだよ!もともと巻き込んだのはそっちだろ!?それこそお前の言う悪いことじゃねぇのかよ!」

「それは違います。だって、このシステム作ったのは私だから」
 この言葉に見捨てられた忠勝は、彼女たちが先ほど味わった痛みを一人で背負わなければいけなかった。

「あああ!なんなんだよおおおお」
 声をからしながら叫んだ言葉は、数秒と持たず、消え、女子生徒にのまれた。

 暗くなり、語り手が
「彼は、こう思った。物事を実行するには、それと同価値の責任を背負わなければいけないと」

 幕は閉じた。
 体育館全体が明るくなり、周囲を見渡せるようになる。ざわざわとしゃべる中、もう司会は次へと移っていた。
「有難うございました。続いて二組「複雑な距離」、どうぞ」
 再び、幕は上がった。
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