勇者一行の料理人

こせい。

文字の大きさ
2 / 4

料理人ライア

しおりを挟む
朝日が部屋の窓から溢れる。
カーテンから溢れる太陽の光が目覚まし代わりとなり、僕の顔を照らす。

「おはよう……」

僕はライア。 家名は持っていない。
僕以外誰もいない家でポツリと『おはよう』を言ってしまうほど寂しい人間である。
ここクルルートで料理店を営んでいる一般的な……もっと詳しくいえば庶民的な村人だ。

「そういえば、今日は昨日の夜から仕込んでた豚の煮込みが仕上がってる頃かな?」

部屋を出て下の階に降り、キッチンに向かう。キッチンのコンロには大きな鍋が弱火でグツグツと煮込んである。
この豚の煮込み、仕入れから下準備、色々と苦労して作った自信作である。
自分でお肉も狩りをして取ってきた。そのため肉も臭くなくジューシーなお肉になっている。
味付けや味を整えるための香草ももちろん自ら取ってきた。
香草なども上質なものを厳選し、雑味が出ないよう工夫している。

「うん、やっぱり自分で1から作った料理は上手いな!」

よし、メイン料理はできた。
スープも豚の骨をベースにしたスープでこちらも美味しくできている! ……はずだ…………。

んじゃ、やりますか……!
キッチン部屋の扉を開け、少し歩いた扉にかかってある札を裏返した。

【至福料理亭 くるるーと食堂開店】

「今日も頑張りましょう!」

また誰もいない中、僕は声を出したのだった。






────────






クルルート村、そこでの村長と息子との会話……。

「そういや聞いたか? 森にオークが出たらしい……」
「まさか!? どこの情報だ?」

息子の言葉に驚いて大きな声を出してしまう。

「なんでも村の衛兵が森の見回りをしていたら大量のオークがうじゃうじゃいたらしい」
「なんだって!? すぐに近くの村から冒険者を集めなければ!」
「ランク帯はどの辺だと考える?」
「うじゃうじゃがどのぐらいの量かわからない今、正確なランク帯もわからないが……」

オーク1匹で……Cランク帯だと考えると──

「そうだな、A……最悪S帯も考えられる……」
「まさか上位種がいる……いや、オークの数が数え切れないほどいるなら必ずいるだろう。最悪キングや変異種もいるかもしれない……」

オークキングは数々の冒険者を殺し、変異種に至っては多くの村、そして小国が滅んだこともある。

「最近噂の勇者様が来てくれないとここら周辺の村は全滅かもしれないな……」
「そんなことは考えないようにしよう。 っとまぁ、話はこれぐらいにしてギルドに報告しに行こうか」
「そうだな……あ、ギルドの報告し終わったらライアのところに行こう!」
「それはいい。 もしかしたらオークたちが攻めてきて、今日が最後の日になるかも知れんからな。 最後に美味しいものを食べるのも悪くないな」

二人は足取り軽くギルドに足を運んだ。




────────




「いらっしゃいませぇ~」

元気よく挨拶をする。 今回はちゃんと一人言ではなく、目の前にいるお客さんに言っている。

「よぉ、ライア元気そうだな」
「村長も息子と一緒に昼間っから食堂で食事ですか?」
「あぁ、たまには贅沢も必要だと思ってな!」
「奥さんにまた叱られますよ。 っと、それよりご注文をどうぞ」
「おぉ、そうだな。 それじゃあ……オススメとかあるのか?」
「そうですね……今日のおすすめは豚の角煮ですね。 昨日森に行った時に新鮮な豚が手に入ったので、森の香草などを使ってぷるぷる美味しく仕上げました」

昨日は野生の豚が出てきてくれたので在庫はホクホクだ。

「なんだって!? 森に入った!?」
「えぇ、どうしたんですか?」
「いや、えっとな、今森に危険な魔物が出たらしくてな……」
「そ、そうなんですか!? よ、よかった……何ともなくて……」

もしも料理人の僕が魔物に会ったらそれこそ料理されて喰われていたのは僕の方だったかもしれない。

「まぁ、それよりシェフ? それじゃあご自慢の角煮を頂こうかな」
「楽しみですね」

村長親子が話を切り替えて料理に戻る。
そういえばさっきから角煮の匂いがこの席まで漂ってくる。

「それじゃあ、準備しますので少々お待ち下さい」
「なるべく早くね」

こうは言っているが実際いつも気長に待ってくれる。優しく、賢いこの村の頼れる村長である。

「お待たせしました。こちら豚の角煮定食になります」
「ほほぉ! 調理場から匂いはしていたが近くで見るとこれは凄い! まず匂いがいいな」
「これはハーブですか?」

村長の息子、シューリ。 通称シューが質問してきた。
そういえばシューは自炊していたはずだ……。
早く可愛いお嫁さん貰って作ってもらえるよう日々婚活に生を出してるらしいが……なかなか難しいらしい……。
っと、それより……

「ハーブというより、柑橘系の爽やかな風味が出るのを意識して調理しました。ラモンの葉っぱなどを燃やし、薫製したりもしてます」
「なるほど、だからこんなにいい匂いがするのか……」

二人は十分に肉の匂いを嗅いだ後、お肉が冷めないうちに口いっぱいに頬張る。

「「う、う…………」」

な、なんだ!? 二人がいきなり小刻みに震えだした。 もしかして香草と間違って毒草でも入れてしまったのか!?

「え、えっと……すいませんでした!」

僕はとりあえず謝ることにした……。

「「う、う…………上手い!」」

「…………………………っへ?」

あれ? どうして二人とも涙を流しているのだろうか?

「……んが!…………」
「父さ、村長!食い意地が汚……んぐ……んっ……」

シューは前にやめたお父さん呼びに戻り、注意しながら自分にもブーメランになっていることに気づいていない!?

「ん、ん゛ん゛んん゛……」
「え、えっと……ご馳走様でした……」
「お粗末様でした」

二人の食べているところを見ると僕もお腹が空いてくる。

「それじゃあ、今日のお代はいくらだ?」
「えっとざっと相場は……こんなもんですね」
「3000チルトか……まぁ普通の昼飯の倍はするが……この旨さだ……もっと払ってもいいぐらいだ」

そう言いながら村長と息子は笑いながら帰っていった。

「僕もご飯食べるか……」

ポツンと一人になった僕は一人寂しく昼を過ごすのであった。
僕もシューのことを言えないな……。




────────




「そういえば村長、オーク討伐に勇者が来るらしい」
「勇者だって!?」
「あぁ、なんでこんな辺境の村に来てくれるのかは分からないが……でもこれで安心して寝れるな」
「そうだな……神は私たちを見捨てていなかったようだ──」





「ふぁ~~」

その頃、何も知らない僕は厨房で明日の料理を欠伸をしながら作っていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした

ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。 しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義! そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。 「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」

処理中です...