マイノリティ教師の一般論

こせい。

文字の大きさ
3 / 4
教師になりました編

日本語は凄いらしい

しおりを挟む
「いやー、食った食った!」

あの出店結構うまかったな!
今の気分は最高潮だ。
それほどうまかった。
だからだろうか……

「財布が少し軽くなった」

や、やべー……どうしよう。
冗談とかいっている暇じゃなかった!
と、とりあえず本を買おう!
情報収集。大事!





「ここが本屋……?」

俺が来たところ、そこはボロボロの小屋らしきものだった。

「さっきの服屋があれだったからどんなもんかと思ったが……案外小さかったな……」

この気持ちはなんだろうか?なんか期待はずれというか拍子抜けというか……想像していた所と全然違ったからかな?
そんなことより……

「よし!入ろう!」

立ち止まっちゃなにも起きないしな!
なんかこの世界に来て少し行動的になった気がする。
まぁ、実際来て五時間程度なのだが……。

「あのー、すいませーん……」
「お?あんたお客かい?」

俺に返事してくれたのは白髪の老婆だった。

「はい。ここで本が買えると聞いたのですが……」
「あぁ、うちは本屋だからゆっくり見ていくといいよ」
「ありがとうございます」

俺は辺りを見渡して気になる本を手に取った。

「日本語学習2年生?」

これってあれだよな?
え?何でこんなものが?
ヤバい。頭がこんがらがってきている。

「あの、すいませんこの本なんですけど……」
「ん?その『教科書』がどうしたって?」
「えっとこれって皆習うものなんですか?」
「そりゃ、ねー?誰もが習うさね。勇者たちが残した言葉だからね……でも全然解読出来てないんだけどね」
「へ、へー……そうなんだ……」

そんなわかってないもん教科に入れるな!

「まぁ、そんなことより……この世界のことについて書かれている本はないのか?」
「それなら図書館に言って見たらどうだい?」
「図書館?」
「本屋は家で読みたい人が買うもの、図書館はその場限りだけどタダで本が読めるよ」
「マジっすか!?」
「嘘ついてなんか無いよ」

やったぜこれで食費に回せるお金が増えた!





図書館に着きました……。
はい……。
え?なんで元気がないのかって?
それはね、図書館に行くために約2時間歩きっぱなしだったからだよ?

「よ、よし元気出して入るか……」

俺は己を奮い立たせ、図書館の中に入る。
図書館の中は美術館を思わせる造りになっていて、中心に大きなホールがある。
俺はしばらく歩いて図書館自体を見てみたいと思った。

「あの、すいません……」

しかしすぐに誰かに声をかけられた。

「はい、何か用でしょうか?」

振り向くとそこにはカウンター席から顔を覗かせる三つ編みの小さな女の子がいた。
いかにも文学少女らしい格好だな……。

「すいませんが、この図書館を使えるのが後十五分しかないんですけど……」

マジですか……。
あー、どうしよう……。
俺明日来たとしても……本読むだけで1日潰しそうだしな……。

「あの、何か深刻な悩みでもあるんですか……?もし宜しければ時間延長しますが……」
「あ、う、うん。そうなんだけどさ……流石に俺一人のためにそこまで……」
「いえいえ、助け合いは大事ですから」

なんだこの子……ちっこい癖に超カッケー。

「で、でもそんなこと勝手に決めていいのか?」
「別に……私もここに用事があったから……」
「そうなのか……じゃあ、お言葉に甘えようかな」

やばいな……エリザベスさんより優しい……
優しすぎる!

「なんか裏とかないよね?」
「あの……それはあまりにひどくありませんか?」
「すいませんでした……」

クソっ!だったらなんでだ?なんでこんなに優しいんだ?
もしかして天使なのか?
ナイチンレベルの天使なのか?
無償の愛って奴か!?

「あ、すいません。終わりのアナウンスをしなくちゃいけないのでまた後で」
「ありがとうございます!」

その後、アナウンスがあった後、彼女は俺のところにやって来た。

「お待たせしましたー」
「お疲れ様です」

俺たちは机についた。
無言の空間……
俺が今読んでいるのはよくわからんがこの世界ことが書いてある本だ。
女の子は何かひたすらに勉強している。

……………………。

この感じいいな……。
なんていうか……うん……恥ずい……。
あ、目があった……

「あの、私の顔に何か付いていますか?」
「え?あ、いや、なにしているのかなー?と思って」
「あ、これは日本語の勉強です。学校の宿題なんですよ」
「へぇ~、学校に行ってるんだ……」

それより本当に日本語が教科に入ってるんだな……。

「もしかして日本語わかりますか?」
「あ、うんわかるけど……」
「教えてもらっていいですか!?」
「い、いいよ。それぐらい……」

ビックリした……てか顔がめっちゃ近い……。

「こ、ここってどう読むんですか?」
「あ、あぁそこは『万歳ばんざい』だな」
「へー、じゃ、じゃなくて」
「え?」

………………。

あれ?なんかやらかしたか?

「あの……そっちじゃなくってコッチです……」
「あ、あぁ、そっちね!」

あの、えっと……

「アリだな」
「うん。アリ。漢字で書くとこうだな……」

俺は紙に『蟻』と書いてあげる。

「す、凄い……」
「これが凄いのか?」
「あ、いえ、そんな事よりこんな文字見たことないです」
「漢字のこと?」
「いえ、漢字のことはわかりますがそんな事よりこんな難しそうな漢字を使えるなんて……」

あ、やべ、日本からきたのバレたか?
てか、バレてもいいんじゃねーか?別に……。

「でも漢字なんて使える人初めて見ました!」
「こんだけで!?」
「はい!もしかして有名な漢字学者だったりするんですか?」

漢字学者ってなんだよ!

「いや、そんなんじゃないよ。ただの浮浪者?だよ……多分……」
「こんなに自信がない浮浪者も初めて見ました」
「すいません……」


……………………。


しばらく沈黙が続く。

「あ、俺調べ物が終わったんで勉強手伝いますよ?」
「すいません……お願いします……」

それからしばらく勉強を教えた後、俺は帰ることにした。

「すまなかったな……こんな時間まで図書館開けてもらって」
「いえ、私も勉強がはかどりました」
「最後に名前だけ教えてもらって良いか?」
「そうですね……これも何かの縁ですし」

そう言うと彼女は少し前に出てきた。

「私の名前はパハネール・アージュです」
「俺の名前は空乃木 佑紅だ」
「また勉強教えて下さいね?」
「こちらこそよろしくお願いします」

こうして俺の異世界生活1日目の活動が終わった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...