他称変態さんと

こせい。

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他称変態さんと自称美少女

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本来ならば自由な放課後の時間なのだけれど、今日はその自由もない地獄の時間と化していた。

「ごめん、ちょっとだけ時間良いか?」
「あなた、朝に約束したじゃん! まさか忘れてるんじゃ…………」
「そんなことないって!」
「まさか、約束すっ────」
「っぽかさねぇよ!」

なんだよこいつ! 疑り深いな!

「今日、放課後用事があったんだけど…………それを破るために、だよ…………」
「へ、へぇ。 私のために約束を破る、ねぇ?」
「なんだよ…………行っちゃ駄目なのかよ? ダメなら今日は無しで────」
「誰も言ったらだめなんて言ってないでしょ!」

お? 花園にしては優しいな……。

「ただし、10分で帰ってきて、できなければ私のお願いを一つ聞いて」
「は? ちょっ、お前、それは流石に短すぎるって!」
「はい、1分経過」
「もう始まってんのかよ! てか、まだ十秒も経ってない!」

あぁ、まったく! 朝から一度ダッシュしてるから足が筋肉痛で!

「ただいま戻りました、大佐!」
「ど、どうしたのでありますか少佐先輩!」

いきなりフラれたネタを即行で返してくれるなんてなんてできた後輩なんだ!

「す、すまん。 今日の本の整理についてなんだが…………明日俺一人でやるから今日は帰ってもいいぞ?」
「嫌です先輩」
「え? いや、詩? お前は来なくていいからな? な? 本の整理は明日にでもできるだろ?」
「違いますよ先輩? 明日私も来て手伝います。 いいですよね、先輩?」

なんて出来た後輩なんだぁぁぁあああ!

「ありがとな…………」

そう言いながら髪をワシワシと撫でてやる。

「ごめん時間ないからもう行くわ!」

やばい、こうしてる暇はなかった、時間が無くなってしまう。
俺は急いで花園の場所に戻った。

「せー、セーフ! っはぁ、はぁ」
「2分遅刻、約束は守ってもらうわよ」

約束? あぁ、なんでも言うこと聞くってやつね……。

「しゃあないか……、ほら何が欲しいか言えよ」

正直、今までもこいつらの言うことは全部聞いてきたと思うんだが……。

「今日の用事が終わったら話す……」
「はぁ? 何だよそれ、めんどくさい……」
「いいから! ほら、こっち行くよ」
「てか、どこ行くんだよ?」

まぁ、もう4時だ。
そんな遠くには行かないだろう。

「乗って」
「は?」
「早く乗って!」

俺が考え事をしているうちに、1台のリムジンの前にいた。
しかも花園はそれに乗れと言っている。
流石お嬢様だ。
庶民の俺が考えもつかないことをやってのける。

「って、行き先遠い所なのか?」
「良いから乗る!」

俺は背中を思いっきり蹴られて乗車した。

「痛いだろ! お前いい加減にしろよ!?」
「車を出して」
「かしこまりました、お嬢様」

人の言うこと一つぐらいは聞けってんだ!
うわっ! よく見たら本物がちのメイドさんが運転してるし……。

「って、そう言えばどこに行くんだ?」
「そう言えばまだ言ってなかったわね……遊園地よ」
「へぇー、遊園地ね…………」

は?

「ちょっと待て! お前今なんて?」
「遊園地よ」
「あれ、可笑しいな? 遊園地って確か休みの日に行くと頃じゃないっけ?」
「そうね、でも今から行くわ」

こいつは日本語と常識が分からないのか?

「お許しください、お嬢様は今日という日を待ち望んで────」
森合もりあい? 今日付けでクビにするわよ」
「失礼しました、お嬢様」

こいつは…………いつもこうなのか?

「そういや、遊園地も久しぶりだなぁ」

確か最後に来たのは小学生の頃だった気がする。

「あら、私は結構行ってるわよ?」
「へぇー、彼氏とでも行ってんのか?」
「は?」

直後俺の顔面にはグーパンがお見舞いされた。
チラリと見えた運転席にいるメイドさんは見ていられないといった感じで手で目を押さえている。
運転中なので大変危ないだろうに…………。

「何すんだよ、お前!?」
「なんでもない…………」
「何でもないで人殴って済むなら警察は要らないんだよ!」

痛ったぁ…………、なんであいつは殴ってきたんだ?

「確か…………三澄みすみ様でしたか? 流石に今のはあなた様が悪いです」
「俺の味方はどこにもいないのかよ…………」

などと暴力的で刺激的で、それでいて理不尽に満ち溢れた会話をしていたら車の窓から遊園地の影が見えてきた。

「お嬢様、まもなく遊園地に着きます」
「分かっているわよ!」

こいつはいちいち叫んで怒らないと気が済まないのだろうか?

「あと、さっきの答えだけど…………」
「あ? 何のことだ?」
「あなたが私が誰と遊園地に来てるかって聞いてきたんでしょ!?」

誰も聞いてねぇよ!

「一人よ…………」
「ボッチ…………?」

いつも周りに友達を待機させているあの花園がボッチ遊園地?

「嘘だな…………」
「あなた、ひき殺すわよ…………?」
「分かったよ、信じてやる」
「信じてやるとは偉そうね。 森合、コンクリートとドラム缶を用意してくれない?」

え?

「かしこまりました、お嬢様」
「そんなみじんも疑ってなんかいませんよぉ~。 森合さんもぉ~冗談お上手ですねぇ~」

「そんなことより早く降りなさいよ!」
「あ、あぁ…………」

遊園地に着いたのか辺りはイルミネーションなどで眩しい。
空も暗くなってきているし…………

「あ、ごめん花園、この時間だから家族に連絡したいんだが…………」
「森合!」
「かしこまりました」

森合さんは車に一度戻ると黒電話を持ってきた。

「黒電話って…………」
「今でも使えるように改良しております」
「無駄な技術だな…………」

「ごめん彩音あやね、今日かなり帰るのが遅くなるから母さんに伝えておいてくれないか?」
「? おにーちゃんが夜遊びなんて珍しいね?」
「あぁ、ちょっと…………拉致られてな…………」
「拉致!? お、お兄ちゃん大丈夫なの?」

しまった…………言葉を間違えた…………。

「あぁ、いや、えっと…………遊園地に…………」
「お兄ちゃんが不良になった!?」
「大丈夫だ! 俺はいたって真面目だ!」
「ちょっとー! 三澄? いつまでかかってんのよ!」

待てなくなったのか、花園が叫んでくる。

「とりあえずお兄ちゃん、お母さんには伝えとくね」
「お、おう。 お願いな」

さっきまであたふたしていた彩音が平常心を取り戻したようだ。
物分かりがいい妹でよかった。 のか?

「まぁ、いいか…………。 花園待たせたな!」
「遅い! 早く入るよ、私もう待てないんだけど!」

今日一日中、花園の短期に付き合わされている気がする。

「が、まぁいいか…………」

そういや、こいつと初めて喋ったのもこの遊園地だった気がするな…………。
まぁ、そんなことはいいか…………。 とりあえず俺はこの窮地から脱することだけを考えておこう。
今日は夜までこいつと一緒にいなきゃいけないという地獄を乗り越えれる気がしない。

「ほら、歩いてないで!」
「分かったよ! ったく!」
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