はみ出し記者 鷹見恭平 オールドメディアは世の不条理、タブーを暴けるか VOI.1 不法滞在者が運ぶ甘い媚薬

奇談エバンジェリスト

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Take9:街の暗部

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「ねえ、恭平クンはどこをどう取材するつもりなの?」
二人きりということもあって、妙に親密な口調だ。
「ああ、俺は解体業者を当たってみるつもりだ」
「運送業者?」
雅子は端麗な美貌を傾げる。
「うん、在留資格を持たないハラム人は皆、ブラックな仕事を請け負っている。解体業やごみ収集、産廃処理業者なんかだ」
そう言いつつ、恭平は日本の負の部分を背負い込んで労働に従事している異国人に思いを馳せる。
(彼らとの共存を図る道を探らねばならないのだが…)
そう思いつつも、根っからの報道記者は、この日は我が国と異国に横たわる私怨や情念を超えた部分にスポットを当てていた。
「彼らを疎ましく思う日本人がいる一方、それを報道できない事実…。そこにはある不都合な事実があるのではないかと思う」
恭平は言葉を濁しつつも、ここ数日の間“情報源”から取得した極秘のスクープの裏取りを考えている。

「いわゆる上級国民の、かしら?」
雅子は可愛らしげに、かつ悪戯っぽい表情で突っ込んできた。
「お、いい勘をしているねえ」
上級国民とは、すなわち社会的地位が高く、国民に知られぬ特権をもつ者たちという、いわば都市伝説的な隠語を指している。
が、恭平と雅子たち、いわば鷹見門下生の間では、政府の要人のみを指していた。
為政者が己の都合で、世を操る、それが常と考えている恭平の発想だ。
「運送業者を辞めたハラム人から聞き出した情報なんだが…ある物を運んだというんだ」
「あるモノって?」
雅子は澄んだ声で、瞳を向ける。
その美しさに気圧されつつも、恭平は続ける。

「薬物さ」
「もしかして麻薬…覚醒剤ってこと?」
そういった世界と無縁と思われる雅子らしい、幼い尋ね方だ。
「いや違う。実際その薬物を運んでいる現場にマトリの立入調査が入ったんだ。結果、明らかな合法だと…」
「え、じゃあ、何が問題なの?」
「運ばれているものは、ファンタジーと呼ばれる鎮痛剤だ。医療現場でも頒布されている」
「…ふぅん?」
雅子は要領を得ない表情だ。
「が、実態は、その鎮痛剤の成分の一部、エシックスなる粉薬だけを大量に輸入しているという話だ。その原産国がハラム人の母国の一つ、ハマリア国だ」
恭平も、実のところ、情報屋の“宗さん”なる関東界隈の裏社会事情通の男の受け売りで語っており、確証めいたものはまだ何もつかんでいない。
それでも、センセーショナルだが、耳を塞ぎたくなるような情報を続けて雅子に話す。
「が、その薬は非経口的に摂取されると、覚醒剤をはるかに超える快感を人間に与えるという…」
「非経口的って…」
育ちの良い雅子も少々バツが悪そうに言葉を濁す。
「人格破壊の要素もあり、洗脳にも用いられるという…」
「そんなことって、できるのかしら…」
「わからんがね、その薬物の運搬日なのかは定かではないが、情報屋の話だと秘密裏の運搬日は決まっているらしくて、一週間後…次の金曜だという噂だ」
無鉄砲な恭平が、場合によっては突撃を仕掛けるつもりらしいことは雅子にも察しがつく。

「さぁ、ここからは育ちの良いお嬢さんの出る幕じゃあないぞ。さて…君はどうする?別行動をとるって言っていたよな」
「ええ、わたくし、こう見えても大江戸TVのナンバーワンキャスターでしてよ」
雅子は、わざとらしい高飛車な物言いで、ツンと澄まし貌を作ってみせる。
「いつまでもお嬢さんじゃないの。独自の取材ルートもパイプも、ちゃあんと持っていてよ、うふふふ」
愛くるしい微笑に見つめられ、このまま別れるのが少々心残りになった恭平だ。
「とにかく気をつけろよ、雅子。君は相当なお転婆さんだが、所詮は女の子だって言う事を忘れるな」
「あらあら随分封建的だこと、今は女性活躍の時代よ、恭平クン。あなたこそ、気を付けてね。いろいろとこの街は危険だと思うわ」
恋人を想う甘い口調の後、シリアスな表情を浮かべた雅子は、その蠱惑的な唇を半ば強引に恭平に重ねるのだった――――。
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