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Take16:この世の極楽は権力のもたらす甘い汁に満ちて…
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北関東市に向かって旧型のセリカを走らせる恭平のスマホが振動した。
宗さんからだった。
『恭ちゃん、お前さんの彼女、やっぱりとっ捕まったぞ』
「…やはり」
雅子のお転婆な一面をよく知る恭平にとって驚きはなかった。
それだけに、宗さんにも“監視”を依頼していたのだ。
「やはり、運送屋と魔室がグルか?」
『いや、そうじゃあない』
「と、いうと?」
恭平は、今一つ事態が呑み込めていない。
『活動家の土屋だよ、そして何より奴と対立を装っていた旭日だ。あいつの方が、よほど性質が悪いぞ』
「どういうことだよ、宗さん」
『つまりは、全員がグルになって、“薬”を権力の道具にするルートを作っておるわけだ。その背後にいる連中はかなり“上の方”の連中だろうが、それよりも早く救い出してやらんとあのお嬢ちゃん、消されるぞ』
宗さんも雅子ファンらしく、真面目に彼女の身を案じている様子が声の張り具合から伝わってくる。
「彼女、どこに捕まっているんだ?」
『旭日のアジトで監禁されとった…。が、さっき何処かへ連れ出された。ワシの下の奴が尾行しとったが、まずいことにまかれたよ。…かなり、ヤバい場所へ連行されたらしい…』
(無茶しやがって…薬の運搬現場より、スクープできないビッグニュースの現場に立ち会う羽目になりそうだな…。いや、薬の運搬と雅子の誘拐、関連があるのかもしれん)
恭平はアクセルをふかした――――。
が、雅子は意外な場所へと連行されていた。
(ここって…六本木じゃない?)
雅子は目隠しのされたワンボックスカーの、カーテンの隙間から森タワーの姿を認めた。
雅子の感では車は六本木通りから交差点を曲がり、再開発の進む通りを下る。
そして、小道を小刻みに折れると古びた雑居ビルの裏手で、車は停車した。
「降りろ」
雅子の護送役は、手錠を掛けられたままの雅子を乱暴に引き下ろす。
そこは照明がバチバチと切れかかった、建物内の駐車場だった。
(駐車場の中では声も出せないわね)
車から降ろされた時が脱出のチャンスと、密かに期待していた雅子だが、相手も誘拐に手慣れている様子で、逆らわぬほうが無難と雅子は判断し従う。
(でもこれって逆にチャンスかもしれないわ…。見てはいけない、いえ、取材したくても出来ない場所に連れていかれるのかもしれないわ)
雅子は素直に、魅惑の裸体を揺らしつつ、薄暗い地下への階段を歩いていった。
そこはまるで現代の女郎部屋だった――――。
(いやッ、何なの、ここは?)
雅子は切れ長の瞳を大きく見開き、粘着テープを張られた唇の下でくぐもった驚愕の唸りを漏らした。
地下はいくつかの鉄格子で隔てられており、各部屋の中に女が一人ずつ幽閉されている。
その女たちの眼つき、殊に異常に潤んだ瞳の色を見た雅子は、彼女らが薬物に冒されていることを察した。
女たちにはそれぞれ、奇妙な仮面をつけた男たちがつき、アバンチュールを楽しんでいる様子だ。
女らは皆全裸で、肉体を拘束されているが、絶望に泣き叫んではいなかった。
と、いうよりは常軌を逸した歓喜の声を漏らし、男たちからの性行為を受け入れ、その腰遣いに、欲望の塊に、人間の牝としての本能を露わにされていた。
まるで時代劇のアヘン部屋に堕とされた女たちのようだった。
(あ、あれは…もしかして?)
雅子は、唾液を滴らせ嬌声を漏らしている若い女に見覚えがあった。
一月ほど前、北関東市のコンビニ駐車場で最後に姿を目撃されたフリーターの女性に相違ないと、雅子は確信した。
(こんなところに監禁されていただなんて!)
地元警察は、単なる家出とカタをつけていたが、公権力は信用ならない、と雅子は実感した。
(いえ、公権力というよりも、もっと大きな力が働いているんだわ)
恐怖に慄きつつもジャーナリストとしての使命感と好奇心、そして女性らしい正義感が勝る。
(なんとしても、女性たちを助け出さなくては!)
しかし、雅子自身も虜囚の身だ。
彼女らと同様に、闇の権力に捕まってしまっており、これから同じ運命をたどるのだと知らされると、屈辱に肉体が震えた。
「ふっふっふ、どうだね、美人キャスター殿。多分、今日一番のスクープになるねえ。もっとも、君自身がこの悦楽地獄を、身をもって体験してレポートするしかないわけだが、あいにくとカメラは潜入できないし、君は正気でココからは出られないがね、ククク…」
先回りしてこの地下室に到着していた魔室は、美貌を蒼白にして佇む雅子を愉し気に眺める。
「見ろよ、この幸せそうな女どもの貌を、この世の極楽って感じだぜぇ? それにこのメスどもを抱いている野郎ども…仮面の上からでも誰だか想像がつかんかい?」
雅子が冷静に性戯に興じる男らを凝視する。
いずれも、ハラム人排斥を訴えていた政治家の顔が、雅子の脳裏に浮かぶ。
(まさか、彼らは皆、こうして懐柔…いえ、肉体から洗脳されて、宗旨替えをしたってわけ?)
「エシックスいや…媚薬“極楽浄土”の魔力には誰であろうと逆らえん。まさに歓喜の声を漏らすばかりの、“嬌声収容所”ってわけだよ、この地下室はね」
(あの人…文科大臣じゃない? それに、あの人影…まさか?)
素顔こそ伺えないが、キャスターには見覚えのあるシルエットが地下牢に、集結しているようで雅子は目を疑いたくなった。
世の中の、いや日本の恥部を目の当たりにした気分で、ハラム人問題の闇を知った気分だ。
「さあ、美人キャスター殿。君も極楽浄土の仲間入りだ。とくとその肉体を愉しまれ、そして君自身も溺れるといい」
雅子を鉄格子のなかに突き飛ばす魔室。
中に待っていたのは、パーティマスクの男たち。
「この娘、徹底的にいたぶってやってくださいッ」
魔室の言葉を受けて、淫靡な狂気を帯びた3人の男が、雅子を迎え入れた。
「言っておきますけど、わたくし、早々と簡単に享楽には溺れなくてよ。これでも倫理観の塊ですもの」
怜悧に言い放つ雅子だが、恐怖でその肉体が熱を失っていた―――――。
宗さんからだった。
『恭ちゃん、お前さんの彼女、やっぱりとっ捕まったぞ』
「…やはり」
雅子のお転婆な一面をよく知る恭平にとって驚きはなかった。
それだけに、宗さんにも“監視”を依頼していたのだ。
「やはり、運送屋と魔室がグルか?」
『いや、そうじゃあない』
「と、いうと?」
恭平は、今一つ事態が呑み込めていない。
『活動家の土屋だよ、そして何より奴と対立を装っていた旭日だ。あいつの方が、よほど性質が悪いぞ』
「どういうことだよ、宗さん」
『つまりは、全員がグルになって、“薬”を権力の道具にするルートを作っておるわけだ。その背後にいる連中はかなり“上の方”の連中だろうが、それよりも早く救い出してやらんとあのお嬢ちゃん、消されるぞ』
宗さんも雅子ファンらしく、真面目に彼女の身を案じている様子が声の張り具合から伝わってくる。
「彼女、どこに捕まっているんだ?」
『旭日のアジトで監禁されとった…。が、さっき何処かへ連れ出された。ワシの下の奴が尾行しとったが、まずいことにまかれたよ。…かなり、ヤバい場所へ連行されたらしい…』
(無茶しやがって…薬の運搬現場より、スクープできないビッグニュースの現場に立ち会う羽目になりそうだな…。いや、薬の運搬と雅子の誘拐、関連があるのかもしれん)
恭平はアクセルをふかした――――。
が、雅子は意外な場所へと連行されていた。
(ここって…六本木じゃない?)
雅子は目隠しのされたワンボックスカーの、カーテンの隙間から森タワーの姿を認めた。
雅子の感では車は六本木通りから交差点を曲がり、再開発の進む通りを下る。
そして、小道を小刻みに折れると古びた雑居ビルの裏手で、車は停車した。
「降りろ」
雅子の護送役は、手錠を掛けられたままの雅子を乱暴に引き下ろす。
そこは照明がバチバチと切れかかった、建物内の駐車場だった。
(駐車場の中では声も出せないわね)
車から降ろされた時が脱出のチャンスと、密かに期待していた雅子だが、相手も誘拐に手慣れている様子で、逆らわぬほうが無難と雅子は判断し従う。
(でもこれって逆にチャンスかもしれないわ…。見てはいけない、いえ、取材したくても出来ない場所に連れていかれるのかもしれないわ)
雅子は素直に、魅惑の裸体を揺らしつつ、薄暗い地下への階段を歩いていった。
そこはまるで現代の女郎部屋だった――――。
(いやッ、何なの、ここは?)
雅子は切れ長の瞳を大きく見開き、粘着テープを張られた唇の下でくぐもった驚愕の唸りを漏らした。
地下はいくつかの鉄格子で隔てられており、各部屋の中に女が一人ずつ幽閉されている。
その女たちの眼つき、殊に異常に潤んだ瞳の色を見た雅子は、彼女らが薬物に冒されていることを察した。
女たちにはそれぞれ、奇妙な仮面をつけた男たちがつき、アバンチュールを楽しんでいる様子だ。
女らは皆全裸で、肉体を拘束されているが、絶望に泣き叫んではいなかった。
と、いうよりは常軌を逸した歓喜の声を漏らし、男たちからの性行為を受け入れ、その腰遣いに、欲望の塊に、人間の牝としての本能を露わにされていた。
まるで時代劇のアヘン部屋に堕とされた女たちのようだった。
(あ、あれは…もしかして?)
雅子は、唾液を滴らせ嬌声を漏らしている若い女に見覚えがあった。
一月ほど前、北関東市のコンビニ駐車場で最後に姿を目撃されたフリーターの女性に相違ないと、雅子は確信した。
(こんなところに監禁されていただなんて!)
地元警察は、単なる家出とカタをつけていたが、公権力は信用ならない、と雅子は実感した。
(いえ、公権力というよりも、もっと大きな力が働いているんだわ)
恐怖に慄きつつもジャーナリストとしての使命感と好奇心、そして女性らしい正義感が勝る。
(なんとしても、女性たちを助け出さなくては!)
しかし、雅子自身も虜囚の身だ。
彼女らと同様に、闇の権力に捕まってしまっており、これから同じ運命をたどるのだと知らされると、屈辱に肉体が震えた。
「ふっふっふ、どうだね、美人キャスター殿。多分、今日一番のスクープになるねえ。もっとも、君自身がこの悦楽地獄を、身をもって体験してレポートするしかないわけだが、あいにくとカメラは潜入できないし、君は正気でココからは出られないがね、ククク…」
先回りしてこの地下室に到着していた魔室は、美貌を蒼白にして佇む雅子を愉し気に眺める。
「見ろよ、この幸せそうな女どもの貌を、この世の極楽って感じだぜぇ? それにこのメスどもを抱いている野郎ども…仮面の上からでも誰だか想像がつかんかい?」
雅子が冷静に性戯に興じる男らを凝視する。
いずれも、ハラム人排斥を訴えていた政治家の顔が、雅子の脳裏に浮かぶ。
(まさか、彼らは皆、こうして懐柔…いえ、肉体から洗脳されて、宗旨替えをしたってわけ?)
「エシックスいや…媚薬“極楽浄土”の魔力には誰であろうと逆らえん。まさに歓喜の声を漏らすばかりの、“嬌声収容所”ってわけだよ、この地下室はね」
(あの人…文科大臣じゃない? それに、あの人影…まさか?)
素顔こそ伺えないが、キャスターには見覚えのあるシルエットが地下牢に、集結しているようで雅子は目を疑いたくなった。
世の中の、いや日本の恥部を目の当たりにした気分で、ハラム人問題の闇を知った気分だ。
「さあ、美人キャスター殿。君も極楽浄土の仲間入りだ。とくとその肉体を愉しまれ、そして君自身も溺れるといい」
雅子を鉄格子のなかに突き飛ばす魔室。
中に待っていたのは、パーティマスクの男たち。
「この娘、徹底的にいたぶってやってくださいッ」
魔室の言葉を受けて、淫靡な狂気を帯びた3人の男が、雅子を迎え入れた。
「言っておきますけど、わたくし、早々と簡単に享楽には溺れなくてよ。これでも倫理観の塊ですもの」
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