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第94話『食べた日記』怖さ:☆☆☆☆☆
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部屋の整理をしていて見つけた白紙の日記帳。表紙には「食事記録」と手書きで書かれている。何かの拍子に買ったまま忘れていたのだろう。
健康管理のために使おうと思い、その日から食べたものを記録し始めた。
一日目:朝食・トースト、昼食・ラーメン、夕食・カレー
翌朝、日記を開くと新しい行が勝手に追加されていた。
一日目:朝食・トースト、昼食・ラーメン、夕食・カレー、深夜・指
俺は指なんて食べていない。誰かのいたずらだろうか。だが部屋は施錠してあったし、誰も入れるはずがない。
二日目も記録をつけた。
二日目:朝食・パン、昼食・弁当、夕食・焼き魚
翌朝、また勝手に追加されていた。
二日目:朝食・パン、昼食・弁当、夕食・焼き魚、深夜・足の指
気味が悪くなって、日記をつけるのをやめた。しかし日記は勝手に記録を続けていた。
三日目:何も食べず、深夜・手首
四日目:何も食べず、深夜・耳
俺が何も食べない日でも、深夜の食事だけは記録されていく。しかも内容がどんどん大きな部位になっている。
一週間後、記録は恐ろしいものに変わっていた。
八日目:何も食べず、深夜・田中の足
田中は俺の同僚だ。慌てて電話をかけると、田中は足を怪我したと言った。昨夜、原因不明の激痛で救急搬送されたが、外傷はなく、ただ足の肉が一部なくなっていたという。
俺は震え上がった。日記の記録は、俺が無意識に人を食べていることを示している。
日記を燃やそうとしたが、火をつけても燃えない。破ろうとしても破れない。
記録は続いていた。
九日目:何も食べず、深夜・山田の腕
山田は隣の住人だ。翌日、彼は腕の肉が突然消失する奇病にかかったとニュースになった。
俺は精神科を受診したが、医師は「夢遊病の一種かもしれない」と言うだけだった。しかし、俺には記憶がない。人を食べた覚えも、部屋から出た覚えもない。
記録は加速していた。
十日目:何も食べず、深夜・佐藤の胸、深夜・鈴木の背中
一晩で二人も被害者が出ている。そして記録の最後に、恐ろしい予告が書かれていた。
十五日目:何も食べず、深夜・自分の心臓
あと四日で、俺は自分の心臓を食べることになる。
俺は必死に阻止しようとした。手を縛り、足を縛り、部屋から出られないようにした。しかし十一日目の朝、記録は増えていた。
十一日目:何も食べず、深夜・近所の老人の肝臓
縛っていたロープは切れており、俺の口元には血がついていた。
十二、十三、十四日目も同様だった。俺は無意識のうちに人を襲い、その肉を食べている。しかし記憶は一切ない。
そして十五日目の夜。
俺は鏡の前に座って待っていた。自分が自分を食べる瞬間を、この目で見届けるために。
午前零時、鏡の中の俺が動き出した。いや、俺ではない。俺の姿をした何かが、鏡の向こうから手を伸ばしてくる。
鏡を突き破って現れたもう一人の俺は、こちらの俺の胸に手を突っ込んだ。痛みはなかった。ただ、心臓が抜き取られる感覚だけがあった。
鏡の俺は、俺の心臓を美味しそうに食べ始めた。
俺は理解した。日記をつけ始めた瞬間から、鏡の世界の俺が現実の人々を食べていたのだ。そして最後に、現実の俺を食べて入れ替わる。
翌朝、新しい日記が始まった。
一日目:朝食・トースト、昼食・ラーメン、夕食・カレー
俺は今度こそ、健康管理をしっかりやろうと思っている。
健康管理のために使おうと思い、その日から食べたものを記録し始めた。
一日目:朝食・トースト、昼食・ラーメン、夕食・カレー
翌朝、日記を開くと新しい行が勝手に追加されていた。
一日目:朝食・トースト、昼食・ラーメン、夕食・カレー、深夜・指
俺は指なんて食べていない。誰かのいたずらだろうか。だが部屋は施錠してあったし、誰も入れるはずがない。
二日目も記録をつけた。
二日目:朝食・パン、昼食・弁当、夕食・焼き魚
翌朝、また勝手に追加されていた。
二日目:朝食・パン、昼食・弁当、夕食・焼き魚、深夜・足の指
気味が悪くなって、日記をつけるのをやめた。しかし日記は勝手に記録を続けていた。
三日目:何も食べず、深夜・手首
四日目:何も食べず、深夜・耳
俺が何も食べない日でも、深夜の食事だけは記録されていく。しかも内容がどんどん大きな部位になっている。
一週間後、記録は恐ろしいものに変わっていた。
八日目:何も食べず、深夜・田中の足
田中は俺の同僚だ。慌てて電話をかけると、田中は足を怪我したと言った。昨夜、原因不明の激痛で救急搬送されたが、外傷はなく、ただ足の肉が一部なくなっていたという。
俺は震え上がった。日記の記録は、俺が無意識に人を食べていることを示している。
日記を燃やそうとしたが、火をつけても燃えない。破ろうとしても破れない。
記録は続いていた。
九日目:何も食べず、深夜・山田の腕
山田は隣の住人だ。翌日、彼は腕の肉が突然消失する奇病にかかったとニュースになった。
俺は精神科を受診したが、医師は「夢遊病の一種かもしれない」と言うだけだった。しかし、俺には記憶がない。人を食べた覚えも、部屋から出た覚えもない。
記録は加速していた。
十日目:何も食べず、深夜・佐藤の胸、深夜・鈴木の背中
一晩で二人も被害者が出ている。そして記録の最後に、恐ろしい予告が書かれていた。
十五日目:何も食べず、深夜・自分の心臓
あと四日で、俺は自分の心臓を食べることになる。
俺は必死に阻止しようとした。手を縛り、足を縛り、部屋から出られないようにした。しかし十一日目の朝、記録は増えていた。
十一日目:何も食べず、深夜・近所の老人の肝臓
縛っていたロープは切れており、俺の口元には血がついていた。
十二、十三、十四日目も同様だった。俺は無意識のうちに人を襲い、その肉を食べている。しかし記憶は一切ない。
そして十五日目の夜。
俺は鏡の前に座って待っていた。自分が自分を食べる瞬間を、この目で見届けるために。
午前零時、鏡の中の俺が動き出した。いや、俺ではない。俺の姿をした何かが、鏡の向こうから手を伸ばしてくる。
鏡を突き破って現れたもう一人の俺は、こちらの俺の胸に手を突っ込んだ。痛みはなかった。ただ、心臓が抜き取られる感覚だけがあった。
鏡の俺は、俺の心臓を美味しそうに食べ始めた。
俺は理解した。日記をつけ始めた瞬間から、鏡の世界の俺が現実の人々を食べていたのだ。そして最後に、現実の俺を食べて入れ替わる。
翌朝、新しい日記が始まった。
一日目:朝食・トースト、昼食・ラーメン、夕食・カレー
俺は今度こそ、健康管理をしっかりやろうと思っている。
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