1話5分でゾッと出来る話。短編ホラー集。短編怖い話は、そこにある

みにぶた🐽

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第96話『知らない自分』怖さ:☆☆☆☆☆

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 祖母の遺品整理で見つけた古いアルバム。黄ばんだ写真が丁寧に貼られている。

 最初のページは祖母の若い頃の写真だった。見知らぬ男性と一緒に写っているものもある。祖父とは違う人だ。

 ページをめくっていくと、俺と同じ顔の人物が写っている写真を発見した。髪型や服装は古いが、間違いなく俺の顔だ。

 写真の裏には「昭和四十五年、秋彦十八歳」と書かれている。俺の名前も秋彦だが、昭和四十五年に俺は生まれてもいない。

 次のページにも同じ顔の写真があった。今度は「昭和五十年、秋彦結婚式」と書かれている。写真の俺は見知らぬ女性と結婚式を挙げている。

 さらにページをめくると、「昭和五十五年、秋彦と息子」「昭和六十年、秋彦一家」と続いていく。俺の顔をした男性が、知らない人生を送っている記録だった。

 最後のページには「平成二年、秋彦葬儀」と書かれた写真があった。棺桶に横たわる俺の顔。参列者には見知らぬ妻と子供たちが泣いている。

 俺は祖母に電話で確認しようとしたが、祖母は三年前に亡くなっている。

 近所の古い住人に聞いてみると、驚くべき話を聞いた。

「秋彦君なら覚えてるよ。君にそっくりだった。でも彼は三十年前に病気で亡くなったはずだよ」

 俺は混乱した。では俺は何者なのか。なぜ死んだはずの人間と同じ顔、同じ名前なのか。

 その夜、アルバムを見直していると、新しいページが追加されていた。

「平成三十五年、秋彦復活」

 そこには現在の俺の写真が貼られていた。今日撮った覚えのない写真だった。

 翌日も新しい写真が増えていた。俺が今日したことの記録写真。誰が撮ったのかわからないが、俺の一日が完璧に記録されている。

 一週間後、アルバムは俺の現在の生活で埋まっていた。そして最後のページに、恐ろしい写真が追加された。

「平成三十六年、秋彦再死」

 俺が病院のベッドで息を引き取る写真だった。まだ起こっていない未来の写真。

 俺は急いで病院で検査を受けた。結果は異常なし。写真は間違いだと思った。

 しかし翌週、アルバムに新しい写真が現れた。

「平成三十七年、秋彦三度目の人生」

 今度は別の顔をした俺が写っていた。同じ名前だが、全く違う顔。そして見知らぬ家族と一緒にいる。

 俺は理解し始めた。秋彦という存在は、何度も生まれ変わっている。同じ名前で、時には同じ顔で、時には違う顔で。そして毎回、同じように生きて、同じように死ぬ。

 アルバムを最初から見直すと、さらに古いページがあることに気づいた。

「大正十年、秋彦誕生」「昭和五年、秋彦成人」「昭和十五年、秋彦戦死」

 秋彦は百年以上前から存在している。何度も生まれ、何度も死んでいる。

 そして今の俺も、その循環の一部でしかない。

 最新のページには恐ろしい予告が書かれていた。

「平成三十六年、秋彦再死後、次の秋彦探索開始」

 俺が死んだ後、また新しい秋彦が現れる。どこかで、俺と同じ名前の赤ん坊が生まれて、俺と同じ人生を歩む。

 俺は秋彦という名前に取り憑かれた魂の器でしかない。

 今日、アルバムに新しい写真が追加された。

「平成三十六年、秋彦病院搬送」

 俺はまだ病気になっていないが、写真の中の俺は確実に病院に運ばれている。

 アルバムの最後のページには、空白の枠がある。そこに貼られる写真のために、俺は今日を生きている。
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