99 / 100
第99話『見知らぬ笑顔』怖さ:☆☆☆☆☆
しおりを挟む
スマートフォンのカメラロールに、撮った覚えのない集合写真があった。俺一人が写っているはずなのに、隣に知らない人が立っている。
中年の男性で、俺に向かって満面の笑みを浮かべていた。俺も笑顔だが、その男性と写真を撮った記憶は全くない。
翌日、また新しい写真が追加されていた。今度は先日の男性に加えて、若い女性も一緒に写っている。三人で肩を組んで、楽しそうに笑っている。
俺はその女性を知らない。見覚えもない。
三日目には四人の集合写真になっていた。老人が一人加わっている。四人全員が俺を囲むように立ち、まるで長年の友人のような親しげな笑顔を見せていた。
一週間が過ぎる頃には、十人を超える集合写真になっていた。男女、老若問わず、様々な人々が俺と一緒に写っている。みんな心から楽しそうに笑っている。
俺は写真を削除しようとしたが、削除ボタンを押しても消えない。それどころか、削除を試みるたび、写真の人数が増えていった。
二週間目、写真の人々に変化が現れた。最初に現れた中年男性の笑顔が、微妙に歪んでいる。口角は上がっているが、目が笑っていない。
三週間目、全員の表情が不自然になった。笑顔は保っているが、どこか作り物めいている。強制的に笑わされているような、ぎこちない笑い方だった。
一ヶ月後、写真は五十人を超える大集合写真になっていた。そして俺は恐ろしいことに気づいた。
写真の中の俺以外の全員が、同じ顔をしている。
最初はそれぞれ違う人だと思っていたが、よく見ると全員同じ人物だった。性別、年齢、服装は違うが、顔の造作は完全に同一。同じ人間が何度も写真に写り込んでいる。
そして全員が俺を見つめている。笑顔のまま、じっと俺を見つめている。
その夜、俺は写真の人物を街で見かけた。コンビニの店員が、写真と同じ顔だった。笑顔で「いらっしゃいませ」と言ったが、目だけは笑っていない。
翌日、電車で隣に座った乗客も同じ顔だった。道ですれ違った通行人も、レストランの客も、みんな写真の人物と同じ顔。
俺の周りが、写真の人々で埋め尽くされていく。
一週間後、俺以外の全ての人間が同じ顔になった。家族も友人も同僚も、みんな写真の人物の顔に置き換わっている。
彼らは俺に向かって笑いかける。不自然な、作り物の笑顔で。
「一緒に写真を撮りましょう」彼らは口を揃えて言う。
俺は逃げ回ったが、どこに行っても同じ顔の人々が待っている。みんな俺と写真を撮りたがっている。
ついに俺は観念した。カメラを構える同じ顔の人々に囲まれて、集合写真に参加した。
シャッターが切られる瞬間、俺は理解した。
俺も同じ顔になっていた。
写真の中の全員が、完全に同一の顔で笑っている。俺を含めて。
今度は俺たちが、新しい一人を探す番だ。
次の写真に加わってくれる、まだ同じ顔になっていない人を。
俺たちは街を歩き回る。同じ顔で、同じ笑顔で、新しい仲間を探しながら。
中年の男性で、俺に向かって満面の笑みを浮かべていた。俺も笑顔だが、その男性と写真を撮った記憶は全くない。
翌日、また新しい写真が追加されていた。今度は先日の男性に加えて、若い女性も一緒に写っている。三人で肩を組んで、楽しそうに笑っている。
俺はその女性を知らない。見覚えもない。
三日目には四人の集合写真になっていた。老人が一人加わっている。四人全員が俺を囲むように立ち、まるで長年の友人のような親しげな笑顔を見せていた。
一週間が過ぎる頃には、十人を超える集合写真になっていた。男女、老若問わず、様々な人々が俺と一緒に写っている。みんな心から楽しそうに笑っている。
俺は写真を削除しようとしたが、削除ボタンを押しても消えない。それどころか、削除を試みるたび、写真の人数が増えていった。
二週間目、写真の人々に変化が現れた。最初に現れた中年男性の笑顔が、微妙に歪んでいる。口角は上がっているが、目が笑っていない。
三週間目、全員の表情が不自然になった。笑顔は保っているが、どこか作り物めいている。強制的に笑わされているような、ぎこちない笑い方だった。
一ヶ月後、写真は五十人を超える大集合写真になっていた。そして俺は恐ろしいことに気づいた。
写真の中の俺以外の全員が、同じ顔をしている。
最初はそれぞれ違う人だと思っていたが、よく見ると全員同じ人物だった。性別、年齢、服装は違うが、顔の造作は完全に同一。同じ人間が何度も写真に写り込んでいる。
そして全員が俺を見つめている。笑顔のまま、じっと俺を見つめている。
その夜、俺は写真の人物を街で見かけた。コンビニの店員が、写真と同じ顔だった。笑顔で「いらっしゃいませ」と言ったが、目だけは笑っていない。
翌日、電車で隣に座った乗客も同じ顔だった。道ですれ違った通行人も、レストランの客も、みんな写真の人物と同じ顔。
俺の周りが、写真の人々で埋め尽くされていく。
一週間後、俺以外の全ての人間が同じ顔になった。家族も友人も同僚も、みんな写真の人物の顔に置き換わっている。
彼らは俺に向かって笑いかける。不自然な、作り物の笑顔で。
「一緒に写真を撮りましょう」彼らは口を揃えて言う。
俺は逃げ回ったが、どこに行っても同じ顔の人々が待っている。みんな俺と写真を撮りたがっている。
ついに俺は観念した。カメラを構える同じ顔の人々に囲まれて、集合写真に参加した。
シャッターが切られる瞬間、俺は理解した。
俺も同じ顔になっていた。
写真の中の全員が、完全に同一の顔で笑っている。俺を含めて。
今度は俺たちが、新しい一人を探す番だ。
次の写真に加わってくれる、まだ同じ顔になっていない人を。
俺たちは街を歩き回る。同じ顔で、同じ笑顔で、新しい仲間を探しながら。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
静かに壊れていく日常
井浦
ホラー
──違和感から始まる十二の恐怖──
いつも通りの朝。
いつも通りの夜。
けれど、ほんの少しだけ、何かがおかしい。
鳴るはずのないインターホン。
いつもと違う帰り道。
知らない誰かの声。
そんな「違和感」に気づいたとき、もう“元の日常”には戻れない。
現実と幻想の境界が曖昧になる、全十二話の短編集。
一話完結で読める、静かな恐怖をあなたへ。
※表紙は生成AIで作成しております。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる