告発ゲーム

みにぶた🐽

文字の大きさ
3 / 15

第3章 仮面の下の真実

しおりを挟む
蓮の部屋は思っていたより広く、シンプルながらも機能的だった。ベッド、デスク、クローゼット、そして小さなバスルーム。窓からは島の中央部が見渡せたが、鉄格子がはめられており、開けることはできなかった。

荷物を整理していると、ドアをノックする音がした。

「入れる?」

奈々の声だった。蓮がドアを開けると、彼女は人懐っこい笑顔を浮かべて立っていた。

「お隣さんなの。何か不安になっちゃって」

「僕も同じです。入ってください」

奈々は部屋を見回しながら言った。

「みんな同じ作りの部屋みたいね。公平に作られてる」

「公平って言葉が、今は皮肉に聞こえますね」蓮は苦笑いした。

奈々はベッドに腰かけ、急に表情を曇らせた。

「ねえ、蓮くん。本当のことを聞いてもいい?」

「何を?」

「あなたも何かしたの?みんなここに連れてこられた理由があるって言ってたから」

蓮の胸がきゅっと締め付けられた。しかし、奈々の瞳には純粋な好奇心があるだけで、悪意は感じられなかった。

「僕は……正しいことをしただけです。でも、結果的に傷つく人が出てしまった」

「正しいこと?」

「高校でいじめがあって、それを匿名掲示板で告発したんです。でも……」

蓮は言葉を詰まらせた。あの後の出来事を思い出すたびに、胸が苦しくなる。

「でも、関係ない人まで巻き込んでしまったんですね」奈々が優しく言った。

「そうです。先輩の一人が結局、学校を辞めて行方不明になってしまって……でも僕は悪くない。いじめを見過ごすわけにはいかなかったから」

奈々は小さく頷いた。

「蓮くんは優しいのね。でも、優しさが時として人を傷つけることもある」

「奈々さんは?何でここに?」

奈々の表情が一瞬だけ曇った。しかし、すぐにいつもの笑顔に戻る。

「私も似たようなものよ。人のためと思ってしたことが、結果的に……」

彼女は最後まで言わなかった。

朝食後、美咲が全員を集めて簡単な自己紹介をすることを提案した。

健太が最初に立ち上がった。

「改めまして、健太です。21歳。人間関係のトラブルでカウンセリングを勧められて、このプログラムに参加しました。趣味は人と話すことです」

その笑顔はあまりにも営業的で、蓮は本能的に警戒した。

美咲が続いた。

「美咲、19歳。完璧主義が過ぎて友人関係に問題を抱えてしまい、心理ケアが必要だと判断されました。将来は国際弁護士を目指しています」

完璧に整えられた外見と、計算された話し方。しかし、その完璧さ自体が何かを隠しているような印象を与えた。

拓海は短く答えた。

「拓海、20歳。暴力的な行動で問題になった。以上」

莉子は色っぽい微笑みを浮かべて言った。

「莉子、22歳。恋愛関係のもつれで相手を傷つけてしまいました。でも、愛しすぎただけなの」

その美しい笑顔の裏に、氷のような冷たさを蓮は感じ取った。

雪菜は俯きながら小さな声で言った。

「雪菜、18歳。家庭内の問題で……適応障害と診断されました」

大輔は疲れた表情で答えた。

「大輔、28歳。以前の職場で起こした問題の後遺症で、PTSD治療の一環としてここに」

千尋はスマートフォンを触りながら言った。

「千尋、19歳。SNS依存症の治療。ネットで人を傷つけるような発言をしてしまって」

翔太は落ち着きなく身体を揺らしながら答えた。

「翔太、20歳。ギャンブル依存症とそれに伴う問題行動の治療」

沙織は震え声で言った。

「沙織、21歳。医療現場でのミスが原因で、心的外傷を負いました」

亮介は威圧的な態度で答えた。

「亮介、25歳。職場でのトラブル。新人の頃の問題だが」

圭は最も小さな声で言った。

「圭、19歳。いじめの傍観者として、適切な行動を取れなかった罪悪感」

奈々は最後に立ち上がった。

「奈々、19歳。友人関係での裏切り行為。でも、私はただ真実を伝えただけなんです」

最後に蓮の番が来た。

「蓮、19歳。高校時代に起きたいじめ問題に関与して……正義のつもりだったんですが、結果的に関係ない人を傷つけてしまいました」

自己紹介が終わると、ロビーは重い沈黙に包まれた。みんな、それぞれに重い過去を背負っている。そして、その過去が今夜から暴かれ始める。

「一つ気づいたことがある」大輔が眼鏡を直しながら言った。「みんな、他人を傷つけた経験がある。しかも、多くが『正しいと思ってした行動』の結果だ」

「正義の暴走ってやつか」拓海が皮肉っぽく言った。

「でも、本当に正義だったのかしら?」莉子が蓮を見つめながら言った。「結果的に人を傷つけたなら、それは正義じゃないんじゃない?」

蓮の胸がちくりと痛んだ。

「結果論で判断するのはフェアじゃない」美咲が反論した。「動機が正しければ、それは評価されるべきよ」

「動機が正しくても、手段が間違っていたら意味がない」亮介が言った。

議論が白熱し始めたとき、スピーカーから機械音声が流れた。

「午後6時をお知らせいたします。夕食の時間です。食堂にお集まりください」

食事の時間が、一時的な休戦をもたらした。しかし、蓮の心の中では、不安と恐怖が渦巻いていた。

果たして、今夜の告発時間で何が起こるのか。

そして、自分は本当に正しかったのか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

処理中です...