告発ゲーム

みにぶた🐽

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第4章 最初の審判

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食堂は明るく開放的な空間だったが、十三人の参加者たちの表情は暗く沈んでいた。

配られた夕食は意外にも豪華で、メインディッシュからデザートまで揃っていた。しかし、誰も食事を楽しんでいるようには見えなかった。みんな、午後9時に迫った告発時間のことで頭がいっぱいだった。

蓮は隣に座った奈々を見つめた。彼女は普通に食事をしているように見えたが、フォークを持つ手が微かに震えているのに気づいた。

「大丈夫ですか?」蓮が小声で尋ねた。

「ええ、大丈夫よ」奈々は笑顔で答えたが、その笑顔はいつもより硬かった。

食堂の向こうでは、健太が他の参加者たちと積極的に会話をしていた。まるで情報収集をしているかのような熱心さで、一人一人に話しかけている。

「あいつ、何を企んでるんだ?」拓海が健太を睨みながら呟いた。

「生き残るために必要な情報を集めてるのよ」莉子が冷やかに答えた。「賢い選択だと思うわ」

美咲がワイングラス(中身はジュースだったが)を回しながら言った。

「でも、情報収集も諸刃の剣ね。自分の情報も相手に渡してしまうから」

食事が終わると、参加者たちは自然とロビーに集まった。壁の時計は午後8時45分を指している。告発時間まで、あと15分。

「ねえ、本当に誰かを告発するの?」千尋が震え声で言った。

「告発しなければ、自分が告発される可能性がある」大輔が冷静に分析した。「心理学的に考えて、最初の告発は必ず起こる」

「でも、誰を告発するんだ?」翔太が落ち着きなく言った。「まだお互いのことをよく知らないのに」

沙織が小さな声で言った。

「さっきの自己紹介で、みんな何かしらの問題を抱えてることは分かったけど……」

「問題は、どの程度のデジタル犯罪なのかよ」莉子が言った。「軽い犯罪の人から先に脱落させられるかもしれない」

亮介が腕組みしながら言った。

「逆に、重い犯罪の人を最初に排除するという考え方もある」

「でも、重い犯罪って何?」雪菜が顔を上げて言った。「個人情報流出?詐欺?それとも……」

みんなが黙り込んだ。自分の犯罪がどの程度のものなのか、客観的に判断するのは難しい。

午後8時55分。

「そろそろ時間ね」美咲が立ち上がった。

「どこで告発時間が行われるんだ?」拓海が尋ねた。

その答えは、すぐにスピーカーから流れてきた。

「告発時間開始5分前です。全員、ロビーに着席してください」

十三人がロビーのソファに座ると、正面の大型スクリーンが点灯した。

「告発時間開始1分前です。各参加者の前に端末が配置されます」

突然、各自の前のテーブルからタブレット端末がせり上がってきた。画面には参加者全員の名前がリストアップされており、タッチして選択できるようになっていた。

蓮の心臓が激しく鼓動した。本当に誰かを告発しなければならないのか。

「告発時間を開始します」

スクリーンに大きく「ACCUSATION TIME」の文字が表示された。

「制限時間は30分です。告発する場合は、対象者の名前をタッチし、理由を入力してください。告発は匿名で行われます」

蓮は端末の画面を見つめた。十三人の名前が並んでいる。自分の名前もその中にあった。

周囲を見回すと、みんな同じように端末を見つめていた。誰も最初の一歩を踏み出せずにいる。

10分が経過した。

15分が経過した。

20分が経過したとき、ついに最初の告発が行われた。

スクリーンに「1票」の表示が現れた。しかし、誰が告発されたのかは表示されない。

それをきっかけに、次々と告発が行われ始めた。

「2票」  
「3票」  
「4票」

蓮の手は端末の上で震えていた。誰かを告発すべきなのか。しかし、根拠もないのに人を告発するのは間違っている。

25分が経過したとき、スクリーンに新しい表示が現れた。

**「健太:3票」**

健太の顔が青ざめた。

「ちょっと待ってよ。俺が何をしたっていうんだ?」

しかし、誰も答えなかった。告発は匿名だからだ。

「まだ時間はあります」機械音声が告げた。「追加の告発、または異議申し立てが可能です」

健太は必死に周囲を見回した。

「みんな、俺の何が気に入らないんだ?確かに人を騙したことはあるけど、それは生活のためだった。他のみんなだって、似たようなことをしてるじゃないか」

その瞬間、蓮は気づいた。健太が「人を騙した」と言ったことで、彼の犯罪の内容がより具体的になった。そして、それが追加の告発を引き起こした。

「健太:4票」  
「健太:5票」

「やめてくれ!」健太が立ち上がろうとしたが、首輪から電流が流れて椅子に崩れ落ちた。

制限時間終了のブザーが鳴った。

「告発時間を終了します。審判を開始します」

スクリーンに健太の情報が表示された。

**被告発者:健太(21歳)**  
**告発票数:5票**  
**犯罪内容:高齢者詐欺に関与し、複数の被害者を経済的・精神的に追い込んだ。うち1名は孤独死に至る**

健太の顔が真っ青になった。

「それは……俺だけの責任じゃない。組織でやってたことだ」

**「審判結果:有罪。適性度:最低レベル。即時脱落」**

「待ってくれ!俺は反省してる!もう二度とやらないから!」

しかし、健太の首輪が青く光り始めた。

「脱落処理を開始します」

健太は椅子から立ち上がろうとしたが、身体が動かない。首輪から何らかの薬物が注入されているようだった。

「助けて……助けて……」

健太の声は次第に小さくなり、やがて完全に静かになった。彼の身体はそのまま椅子にもたれかかり、まるで眠っているように見えた。

しばらくして、黒い作業服を着た人影が現れ、健太の身体を運び去った。その人影の顔は見えず、まるで影のような存在だった。

ロビーには十二人が残された。

みんな、呆然と健太がいた椅子を見つめていた。

「本当に死んだのかしら?」千尋が震え声で言った。

「眠らされただけかもしれない」大輔が希望的観測を述べた。

しかし、誰もその希望を信じてはいなかった。

「明日も告発時間があります」機械音声が告げた。「本日の告発時間で得られたデータは、明日以降の参考資料として活用されます。おやすみなさい」

スクリーンが消え、ロビーが薄暗くなった。

蓮は立ち上がろうとしたが、足に力が入らなかった。今夜起こったことが現実だとは思えない。しかし、健太がいなくなったという事実は動かしようがなかった。

「みんな、部屋に戻りましょう」美咲が震え声で言った。

一人、また一人と部屋に戻っていく。

蓮が部屋に戻ろうとしたとき、奈々が近づいてきた。

「蓮くん、大丈夫?」

「正直、大丈夫じゃありません」蓮は答えた。「僕たち、本当に人を殺したんでしょうか」

「殺したのは私たちじゃない」奈々が小さく言った。「システムよ。私たちは選択しただけ」

「でも、選択したのは僕たちです」

奈々は蓮の手を軽く握った。

「生き残るためには、仕方のないことよ。健太さんは確かに悪いことをしてた。あの告発は正しかった」

蓮は奈々の言葉に救いを求めようとしたが、胸の奥の違和感は消えなかった。

部屋に戻ったとき、蓮は窓の外を見つめた。星空が美しく輝いているが、その美しさが今は空虚に感じられた。

明日も告発時間がある。そして、また誰かが脱落する。

果たして、自分は最後まで生き残れるのか。

そして、生き残る価値があるのか。
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