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第10章 崩壊する正義
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翌朝、食堂の空気は異常だった。
昨夜の告白で、参加者たちの間に見えない亀裂が生じていた。みんな、自分以外の全員が敵だと理解していた。
蓮は一人で朝食をとっていたが、食べ物が喉を通らなかった。橋本美咲の顔が、記憶の中で鮮明によみがえってくる。あの時、自分が告発さえしなければ……
「おはよう、殺人者さんたち」
奈々の声が食堂に響いた。彼女は昨夜とは打って変わって、明るい笑顔を浮かべていた。しかし、その笑顔は狂気に満ちていた。
「昨夜はよく眠れた?美咲ちゃんが夢に出てこなかった?」
誰も答えなかった。
美咲(従姉妹の方)が震え声で言った。
「奈々……あなた、何をするつもり?」
「何って、ゲームを続けるのよ」奈々が椅子に座りながら答えた。「美咲ちゃんを殺した犯人たちを、一人ずつ処刑していくの」
「処刑って……」千尋がスマートフォンを握り締めた。「私たちはもう十分苦しんでる。これ以上何を……」
「苦しんでる?」奈々が笑った。「美咲ちゃんが死んでから、あなたたちは普通に生活してたじゃない。学校に行って、バイトして、恋愛して……美咲ちゃんのことなんて忘れて」
拓海が拳を握り締めた。
「俺たちだって反省してる。もう取り返しのつかないことだって分かってる」
「反省?」奈々の目が危険に光った。「口だけの反省に何の意味があるの?美咲ちゃんは戻ってこないのよ」
大輔が眼鏡を外して顔を覆った。
「私は……教師を辞めました。もう二度と、子供たちに関わる仕事はしないと決めました」
「それで?」奈々が冷たく言った。「それで美咲ちゃんが生き返るの?」
沙織が泣きながら言った。
「私たちにどうしろって言うの?もう美咲ちゃんは……」
「死んだから何?」奈々が立ち上がった。「死んだら全て水に流されるとでも思ってるの?」
奈々は食堂の中央に立ち、全員を見回した。
「今日から、新しいルールを追加しましょう」
「新しいルール?」亮介が警戒しながら尋ねた。
「毎日、誰か一人は必ず告発される」奈々が宣言した。「そして、最も票を集めた人は脱落する。例外はなし」
「そんなルール、勝手に決められるわけ……」莉子の言葉が途中で途切れた。
スピーカーから機械音声が流れたからだ。
「ルール変更を承認します。本日より、毎日最低一名の脱落者を出すことが義務付けられます」
参加者たちが凍りついた。
「どうして運営側がそんなことを……」翔太が震え声で言った。
「私が提案したのよ」奈々が得意げに答えた。「このプログラムの真の目的は、極限状態での人間心理の観察。より過酷な条件の方が、研究機関にとって価値がある」
圭が小さな声で言った。
「つまり、10日後には……」
「一人だけが残る」奈々が頷いた。「そして、その一人が美咲ちゃんへの真の償いをすることになる」
「償いって何?」蓮が尋ねた。
奈々は蓮を見つめ、狂気に満ちた笑顔を浮かべた。
「最後に残った一人が、美咲ちゃんの墓前で、全ての真実を告白する。そして……」
奈々の声が一オクターブ低くなった。
「そして、美咲ちゃんと同じように死ぬのよ」
食堂が静寂に包まれた。
蓮は奈々の言葉の意味を理解して愕然とした。これは復讐ゲームではない。集団自殺だった。
「あなた……最初から全員を殺すつもりだったんですね」
「殺す?」奈々が首を傾げた。「違うわよ。あなたたちは自分で選択するの。告発し合って、最後の一人になるまで」
美咲が立ち上がった。
「そんなこと、できるわけない!私たちは人間よ!」
「人間?」奈々が冷笑した。「美咲ちゃんを殺した時、あなたたちは人間だった?」
午後、蓮は一人で島を歩いていた。
奈々の復讐の全貌が見えてきた。彼女は最初から、参加者全員の死を計画していた。そして、最後の一人には、美咲の死の全責任を負わせるつもりだった。
しかし、蓮の心の中には、別の感情も芽生えていた。
もしかしたら、奈々の復讐は正しいのかもしれない。
自分たちは確かに美咲を殺した。直接手を下さなくても、結果的に一人の少女を死に追いやった。
そして、その後も何事もなかったかのように生活を続けていた。
美咲の苦痛、絶望、孤独——それらを想像することもなく。
夕方、蓮は奈々の部屋を訪れた。
「入って」
部屋に入ると、奈々は窓際に立って外を見つめていた。その横顔には、年齢に似合わない疲労が刻まれていた。
「後悔してるんですか?」蓮が尋ねた。
「後悔?」奈々が振り返った。「何を?」
「こんな復讐をして、美咲さんが喜ぶと思いますか?」
奈々の表情が一瞬だけ揺らいだ。
「美咲ちゃんは……優しい子だった。きっと、こんなことは望んでない」
「だったら、なぜ……」
「でも!」奈々が叫んだ。「でも、あなたたちが生きてるのが許せない!美咲ちゃんが死んだのに、あなたたちだけが幸せになるなんて!」
奈々の目から涙が溢れた。
「私は……私は美咲ちゃんを救えなかった。最後まで、何もできなかった。だから、せめて復讐だけでも……」
蓮は奈々の肩に手を置いた。
「奈々さん。復讐をしても、美咲さんは戻ってきません。でも、僕たちが生きて、美咲さんのことを忘れずに、二度と同じ過ちを繰り返さないようにすることはできます」
「きれいごとよ」奈々が涙を拭いた。「あなたたちは結局、また忘れる。また誰かを傷つける」
「それでも……」
午後9時のチャイムが鳴り響いた。
告発時間の始まりだった。
蓮と奈々は、ロビーに向かった。
今夜、必ず誰かが脱落する。
そして、復讐の連鎖が本格的に始まる。
果たして、この地獄から抜け出す道はあるのだろうか。
昨夜の告白で、参加者たちの間に見えない亀裂が生じていた。みんな、自分以外の全員が敵だと理解していた。
蓮は一人で朝食をとっていたが、食べ物が喉を通らなかった。橋本美咲の顔が、記憶の中で鮮明によみがえってくる。あの時、自分が告発さえしなければ……
「おはよう、殺人者さんたち」
奈々の声が食堂に響いた。彼女は昨夜とは打って変わって、明るい笑顔を浮かべていた。しかし、その笑顔は狂気に満ちていた。
「昨夜はよく眠れた?美咲ちゃんが夢に出てこなかった?」
誰も答えなかった。
美咲(従姉妹の方)が震え声で言った。
「奈々……あなた、何をするつもり?」
「何って、ゲームを続けるのよ」奈々が椅子に座りながら答えた。「美咲ちゃんを殺した犯人たちを、一人ずつ処刑していくの」
「処刑って……」千尋がスマートフォンを握り締めた。「私たちはもう十分苦しんでる。これ以上何を……」
「苦しんでる?」奈々が笑った。「美咲ちゃんが死んでから、あなたたちは普通に生活してたじゃない。学校に行って、バイトして、恋愛して……美咲ちゃんのことなんて忘れて」
拓海が拳を握り締めた。
「俺たちだって反省してる。もう取り返しのつかないことだって分かってる」
「反省?」奈々の目が危険に光った。「口だけの反省に何の意味があるの?美咲ちゃんは戻ってこないのよ」
大輔が眼鏡を外して顔を覆った。
「私は……教師を辞めました。もう二度と、子供たちに関わる仕事はしないと決めました」
「それで?」奈々が冷たく言った。「それで美咲ちゃんが生き返るの?」
沙織が泣きながら言った。
「私たちにどうしろって言うの?もう美咲ちゃんは……」
「死んだから何?」奈々が立ち上がった。「死んだら全て水に流されるとでも思ってるの?」
奈々は食堂の中央に立ち、全員を見回した。
「今日から、新しいルールを追加しましょう」
「新しいルール?」亮介が警戒しながら尋ねた。
「毎日、誰か一人は必ず告発される」奈々が宣言した。「そして、最も票を集めた人は脱落する。例外はなし」
「そんなルール、勝手に決められるわけ……」莉子の言葉が途中で途切れた。
スピーカーから機械音声が流れたからだ。
「ルール変更を承認します。本日より、毎日最低一名の脱落者を出すことが義務付けられます」
参加者たちが凍りついた。
「どうして運営側がそんなことを……」翔太が震え声で言った。
「私が提案したのよ」奈々が得意げに答えた。「このプログラムの真の目的は、極限状態での人間心理の観察。より過酷な条件の方が、研究機関にとって価値がある」
圭が小さな声で言った。
「つまり、10日後には……」
「一人だけが残る」奈々が頷いた。「そして、その一人が美咲ちゃんへの真の償いをすることになる」
「償いって何?」蓮が尋ねた。
奈々は蓮を見つめ、狂気に満ちた笑顔を浮かべた。
「最後に残った一人が、美咲ちゃんの墓前で、全ての真実を告白する。そして……」
奈々の声が一オクターブ低くなった。
「そして、美咲ちゃんと同じように死ぬのよ」
食堂が静寂に包まれた。
蓮は奈々の言葉の意味を理解して愕然とした。これは復讐ゲームではない。集団自殺だった。
「あなた……最初から全員を殺すつもりだったんですね」
「殺す?」奈々が首を傾げた。「違うわよ。あなたたちは自分で選択するの。告発し合って、最後の一人になるまで」
美咲が立ち上がった。
「そんなこと、できるわけない!私たちは人間よ!」
「人間?」奈々が冷笑した。「美咲ちゃんを殺した時、あなたたちは人間だった?」
午後、蓮は一人で島を歩いていた。
奈々の復讐の全貌が見えてきた。彼女は最初から、参加者全員の死を計画していた。そして、最後の一人には、美咲の死の全責任を負わせるつもりだった。
しかし、蓮の心の中には、別の感情も芽生えていた。
もしかしたら、奈々の復讐は正しいのかもしれない。
自分たちは確かに美咲を殺した。直接手を下さなくても、結果的に一人の少女を死に追いやった。
そして、その後も何事もなかったかのように生活を続けていた。
美咲の苦痛、絶望、孤独——それらを想像することもなく。
夕方、蓮は奈々の部屋を訪れた。
「入って」
部屋に入ると、奈々は窓際に立って外を見つめていた。その横顔には、年齢に似合わない疲労が刻まれていた。
「後悔してるんですか?」蓮が尋ねた。
「後悔?」奈々が振り返った。「何を?」
「こんな復讐をして、美咲さんが喜ぶと思いますか?」
奈々の表情が一瞬だけ揺らいだ。
「美咲ちゃんは……優しい子だった。きっと、こんなことは望んでない」
「だったら、なぜ……」
「でも!」奈々が叫んだ。「でも、あなたたちが生きてるのが許せない!美咲ちゃんが死んだのに、あなたたちだけが幸せになるなんて!」
奈々の目から涙が溢れた。
「私は……私は美咲ちゃんを救えなかった。最後まで、何もできなかった。だから、せめて復讐だけでも……」
蓮は奈々の肩に手を置いた。
「奈々さん。復讐をしても、美咲さんは戻ってきません。でも、僕たちが生きて、美咲さんのことを忘れずに、二度と同じ過ちを繰り返さないようにすることはできます」
「きれいごとよ」奈々が涙を拭いた。「あなたたちは結局、また忘れる。また誰かを傷つける」
「それでも……」
午後9時のチャイムが鳴り響いた。
告発時間の始まりだった。
蓮と奈々は、ロビーに向かった。
今夜、必ず誰かが脱落する。
そして、復讐の連鎖が本格的に始まる。
果たして、この地獄から抜け出す道はあるのだろうか。
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