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第1章2話「世界に響く激震」
「世界に響く激震」 ②
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「まず確認すべきは、エリシア帝国と冥界側への対応です」
シリル評議員が周囲を見回した。
「女皇陛下がこの世界から突然いなくなったとなれば、帝国では大騒ぎになるでしょう。魔王陛下についても同様です。両陛下の不在が原因で、国際的な混乱や戦乱が起きかねません」
「その通りですわ」
エリザヴェータ副司教が神妙な面持ちで頷いた。
「エリシア帝国が陛下失踪を他国の陰謀だと疑えば、すぐにも軍を動かすかもしれませんし……冥界の方でも、魔王様が突然おられなくなったら、後継争いや混乱が生じる可能性がございます」
バルド大司教は眉をひそめた。
「我々から帝国と冥界へ、速やかに聖導通信で連絡を取るべきでしょうな。事情を説明し、両陛下が無事であることを伝えれば、最悪の事態は避けられるかと」
どうやら聖導通信という遠隔連絡手段があるらしい。俺は黙って話を聞きながら、事の大きさに改めて息を呑んでいた。まさか自分のせいで国際問題に発展しかねないなんて……。
「女皇陛下、魔王陛下」
シリル評議員が丁寧な口調で二人に尋ねた。
「帝国および冥界への連絡について、何かご要望や情報はございますか? 先方に誤解なく現状を伝えるために、可能な限り正確な情報を提供したいのですが」
エリシア女皇はしばし考えたあと、静かに答えた。
「帝国には……私の侍女長にあたる者がいます。名はエレオノーラ。彼女は聡明で信頼できる女性です。事態を伝えるなら、彼女を通じて帝国政府に説明するのが良いでしょう。帝国が軽率に軍を動かさぬよう、私からの伝言として『私は無事であり、帰還方法を模索中』と伝えてください」
シリル評議員は「承知しました」と深く頷いた。
「エレオノーラ殿ですね。帝国への聖導通信の際に、その方を指名して取り次ぐようにいたしましょう」
続いて皆の視線がエドリアン魔王に集まる。魔王は肩をすくめてゆったりと微笑んだ。
「私の冥界については心配いらない。部下たちは私が忽然と消えたことで多少はざわつくだろうが……私の側近であるゼブルがうまく抑えるはずだ。彼には常日頃から万一の際は任せると伝えてある。冥界への連絡手段はこちらの世界にはないだろうし、下手に人間側から干渉すれば混乱を招く。放っておいて構わない」
放っておくしかない、と言った方が正しいのかもしれない。だがエドリアン魔王本人が落ち着いているので、周囲もそれ以上は追及できなかった。
「わかりました。では帝国へは速やかに連絡を。冥界については様子を見る形といたしましょう」
シリル評議員が議論をまとめる。
「次に……隼人殿、あなた自身のことについてです」
突然話を振られ、俺は緊張する。
「は、はい」
シリル評議員は穏やかながらも真剣な眼差しを俺に向けた。
「隼人殿。あなたはこの古代魔法――婚姻ガチャの使い手であり、今回の婚姻契約の当事者です。この事態の鍵を握る存在として、王国としてもあなたの今後の扱いを決めねばなりません」
扱い……と言われると少し嫌な予感がした。もしかして、ラインハルト団長が言っていたように、王都の魔法評議会に引き渡すとか封印するとか、そういう話になるのか……? 俺はごくりと唾を飲む。
案の定、バルド大司教が静かに口を開いた。
「隼人殿。率直に申し上げて、あなたは神々から選ばれし存在なのか、それとも偶然にこの力を得たのか……我々には判断がつきかねます。婚姻ガチャの使い手というのは、伝承では極めて稀で危険な存在とも伝わっていますのでな。教会としても慎重に見極めねばなりません」
エリザヴェータ副司教が続けた。
「もちろん、現時点で隼人殿から邪悪な気配は感じられませんわ。先ほど私とバルド様で祈りを捧げましたが、隼人殿は清らかな魂をお持ちだと聖女ルーナ様がお告げくださりました」
いつの間にかそんなことをされていたのか。全然気付かなかった……。
「それを聞いて安心しました」
シリル評議員が微笑み、再び改まった表情になる。
「とはいえ、王国の規則として古代魔法の使い手は王都で詳しい検査と審問を受けることが定められています。隼人殿には、お二方とご一緒に王都までおいでいただきたい」
やはりそう来たか……。俺は内心で肩を落とす。しかし逃げられるはずもないし、ここで拒否する理由もない。
「わかりました」
俺は静かに頷いた。
「皆さんに協力します」
シリル評議員は満足そうに頷き返した。
「感謝します。王都までは私が同行し、責任を持ってご案内しましょう。女皇陛下と魔王陛下についても、王都で正式に受け入れる手筈を整えます」
「ふむ、王都とやらに行くのか」
エドリアン魔王が楽しげに笑った。
「面白い。人間の国を直に見る機会など滅多にないからな」
エリシア女皇も軽く頷く。
「私も異存はありませんわ。エリシア帝国の女皇として、貴国の王ともきちんとお話をする必要があるでしょうし」
こうして俺たちは、全員で王都に向かうことが決まったのだった。事態は大きく動こうとしている。俺は不安と期待が入り混じる複雑な気持ちで、その決定を受け入れた。
シリル評議員が周囲を見回した。
「女皇陛下がこの世界から突然いなくなったとなれば、帝国では大騒ぎになるでしょう。魔王陛下についても同様です。両陛下の不在が原因で、国際的な混乱や戦乱が起きかねません」
「その通りですわ」
エリザヴェータ副司教が神妙な面持ちで頷いた。
「エリシア帝国が陛下失踪を他国の陰謀だと疑えば、すぐにも軍を動かすかもしれませんし……冥界の方でも、魔王様が突然おられなくなったら、後継争いや混乱が生じる可能性がございます」
バルド大司教は眉をひそめた。
「我々から帝国と冥界へ、速やかに聖導通信で連絡を取るべきでしょうな。事情を説明し、両陛下が無事であることを伝えれば、最悪の事態は避けられるかと」
どうやら聖導通信という遠隔連絡手段があるらしい。俺は黙って話を聞きながら、事の大きさに改めて息を呑んでいた。まさか自分のせいで国際問題に発展しかねないなんて……。
「女皇陛下、魔王陛下」
シリル評議員が丁寧な口調で二人に尋ねた。
「帝国および冥界への連絡について、何かご要望や情報はございますか? 先方に誤解なく現状を伝えるために、可能な限り正確な情報を提供したいのですが」
エリシア女皇はしばし考えたあと、静かに答えた。
「帝国には……私の侍女長にあたる者がいます。名はエレオノーラ。彼女は聡明で信頼できる女性です。事態を伝えるなら、彼女を通じて帝国政府に説明するのが良いでしょう。帝国が軽率に軍を動かさぬよう、私からの伝言として『私は無事であり、帰還方法を模索中』と伝えてください」
シリル評議員は「承知しました」と深く頷いた。
「エレオノーラ殿ですね。帝国への聖導通信の際に、その方を指名して取り次ぐようにいたしましょう」
続いて皆の視線がエドリアン魔王に集まる。魔王は肩をすくめてゆったりと微笑んだ。
「私の冥界については心配いらない。部下たちは私が忽然と消えたことで多少はざわつくだろうが……私の側近であるゼブルがうまく抑えるはずだ。彼には常日頃から万一の際は任せると伝えてある。冥界への連絡手段はこちらの世界にはないだろうし、下手に人間側から干渉すれば混乱を招く。放っておいて構わない」
放っておくしかない、と言った方が正しいのかもしれない。だがエドリアン魔王本人が落ち着いているので、周囲もそれ以上は追及できなかった。
「わかりました。では帝国へは速やかに連絡を。冥界については様子を見る形といたしましょう」
シリル評議員が議論をまとめる。
「次に……隼人殿、あなた自身のことについてです」
突然話を振られ、俺は緊張する。
「は、はい」
シリル評議員は穏やかながらも真剣な眼差しを俺に向けた。
「隼人殿。あなたはこの古代魔法――婚姻ガチャの使い手であり、今回の婚姻契約の当事者です。この事態の鍵を握る存在として、王国としてもあなたの今後の扱いを決めねばなりません」
扱い……と言われると少し嫌な予感がした。もしかして、ラインハルト団長が言っていたように、王都の魔法評議会に引き渡すとか封印するとか、そういう話になるのか……? 俺はごくりと唾を飲む。
案の定、バルド大司教が静かに口を開いた。
「隼人殿。率直に申し上げて、あなたは神々から選ばれし存在なのか、それとも偶然にこの力を得たのか……我々には判断がつきかねます。婚姻ガチャの使い手というのは、伝承では極めて稀で危険な存在とも伝わっていますのでな。教会としても慎重に見極めねばなりません」
エリザヴェータ副司教が続けた。
「もちろん、現時点で隼人殿から邪悪な気配は感じられませんわ。先ほど私とバルド様で祈りを捧げましたが、隼人殿は清らかな魂をお持ちだと聖女ルーナ様がお告げくださりました」
いつの間にかそんなことをされていたのか。全然気付かなかった……。
「それを聞いて安心しました」
シリル評議員が微笑み、再び改まった表情になる。
「とはいえ、王国の規則として古代魔法の使い手は王都で詳しい検査と審問を受けることが定められています。隼人殿には、お二方とご一緒に王都までおいでいただきたい」
やはりそう来たか……。俺は内心で肩を落とす。しかし逃げられるはずもないし、ここで拒否する理由もない。
「わかりました」
俺は静かに頷いた。
「皆さんに協力します」
シリル評議員は満足そうに頷き返した。
「感謝します。王都までは私が同行し、責任を持ってご案内しましょう。女皇陛下と魔王陛下についても、王都で正式に受け入れる手筈を整えます」
「ふむ、王都とやらに行くのか」
エドリアン魔王が楽しげに笑った。
「面白い。人間の国を直に見る機会など滅多にないからな」
エリシア女皇も軽く頷く。
「私も異存はありませんわ。エリシア帝国の女皇として、貴国の王ともきちんとお話をする必要があるでしょうし」
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