ランキングデスゲーム〜辛くて拡散希望、生き残りたいです〜

みにぶた🐽

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第I部:投票はじまりの檻

第3章「最下位は処刑されます」

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# 第3章「最下位は処刑されます」

 午後8時。

 機械音声が冷たくホールに響き渡った。

「投票時間が終了いたしました。集計結果を発表いたします」

 俺たち十五人は、中央のモニターの前に半円状に並ばされていた。誰もが息を殺し、自分の運命が告げられるのを待っている。

 画面には投票結果が表示された。

『第1回人気投票結果』

『1位:#07 緋村陸翔 3,247票』

『2位:#01 斑鳩凌 2,891票』

『3位:#04 雪村颯汰 2,556票』

『4位:#10 鳴海瑠璃 2,234票』

『5位:#15 真鍋天馬 2,012票』

 上位5名。看守に任命される者たちだ。

 俺は1位だった。

 冷静な分析者というキャラクターが視聴者に受けたのだろう。だが、この結果に安堵を感じる暇はなかった。

 画面はスクロールを続ける。

『6位:#02 葛城翼 1,789票』

『7位:#06 宝生朱音 1,634票』

『8位:#08 五十嵐龍之介 1,456票』

『9位:#09 白鷺小夜 1,289票』

『10位:#11 安堂圭吾 1,156票』

『11位:#05 早乙女千景 987票』

『12位:#14 宍戸昴 823票』

『13位:#12 相楽翠 645票』

『14位:#03 宇佐美凛 432票』

 そして、最下位。

『15位:#13 如月蒼依 298票』

 如月蒼依の顔が青ざめた。

「嘘……嘘よ……」

 彼女の震え声が、静寂のホールに響く。

「やめて……お願い……私、死にたくない……」

 機械音声は容赦なく続けた。

「最下位、#13如月蒼依の処刑を執行いたします。処刑台へ移動してください」

 ホールの中央に、俺たちが気づかないうちに巨大な処刑台が上昇していた。金属製の拘束具が取り付けられた、まさに処刑のための装置。

「いや……いやあああああ!」

 如月蒼依は叫び声を上げて後ずさりした。

「誰か!誰か助けて!私、何も悪いことしてない!なんで私が死ななきゃいけないの!」

 だが、誰も動かなかった。動けなかった。

 機械的な音と共に、ホールの壁から金属製のアームが伸びてきた。如月蒼依を捕獲するためのアームだった。

「やめて!離して!」

 如月蒼依は必死に逃げ回ったが、アームは冷酷に彼女を捕らえ、処刑台へと運んでいく。

 宇佐美凛が嗚咽を上げた。

「やめて……お願い……代わりに私を……」

 だが、システムは人間の感情など考慮しない。

 如月蒼依は処刑台に固定された。金属製の拘束具が彼女の手首、足首、首に巻き付く。

「最終発言の時間を与えます。1分間です」

 如月蒼依は涙を流しながら叫んだ。

「なんで……なんで私だけ……私、みんなと仲良くしたかっただけなのに……人間らしくいたかっただけなのに……」

 彼女の声は次第に嗄れていく。

「お母さん……お父さん……ごめんなさい……」

 そして、時間が来た。

「処刑方法は視聴者投票により決定されました。『溶解処刑』を執行いたします」

 溶解処刑。

 その瞬間、俺は配信画面のコメント欄を見た。

『きたああああ』

『グロ神回』

『溶解とかやべーwww』

『録画してる人いる?』

『#13かわいそうだけど仕方ない』

『これがリアルデスゲームか』

 視聴者たちは、一人の人間の死を娯楽として楽しんでいる。

 処刑台から細いノズルが伸び、如月蒼依の全身に向けられた。

「やめて……やめてください……」

 如月蒼依の最後の懇願も、システムには届かない。

 ノズルから透明な液体が噴射された。

 最初は何も起こらなかった。だが数秒後、如月蒼依の皮膚が赤くなり始める。

「痛い……痛い!」

 彼女の悲鳴がホールに響いた。

 俺は見ていなければならなかった。これが現実だということを、しっかりと目に焼き付けるために。

 溶解液は皮膚を侵食し、筋肉を溶かし、骨を露出させていく。如月蒼依の身体は文字通り溶けていく。

 早乙女千景が嘔吐した。

 相楽翠は震えながら目を閉じた。

 五十嵐龍之介は顔を両手で覆った。

 だが俺は、最後まで見続けた。

 如月蒼依の悲鳴が次第に弱くなり、やがて静寂が訪れた。処刑台には、もはや人の形を留めない何かが残されているだけだった。

「処刑完了。#13如月蒼依の排除を確認いたします」

 機械音声は事務的に告げる。

 そして、配信画面のコメント欄は狂乱状態だった。

『うわああああ』

『マジで溶けた』

『グロすぎて無理』

『でも止められない』

『神配信すぎる』

『次は誰が死ぬかな』

 俺は深く息を吸った。

 これが現実だ。これが俺たちが置かれた状況だ。

 人の命が、視聴者の娯楽として消費される世界。そして、その娯楽を”正義”として受け入れる視聴者たち。

 機械音声が続ける。

「処刑を以て、看守と囚人の役割が確定いたしました」

 画面に新たな表示が現れた。

『看守』

『#07 緋村陸翔』

『#01 斑鳩凌』

『#04 雪村颯汰』

『#10 鳴海瑠璃』

『#15 真鍋天馬』

『囚人』

『#02 葛城翼』

『#06 宝生朱音』

『#08 五十嵐龍之介』

『#09 白鷺小夜』

『#11 安堂圭吾』

『#05 早乙女千景』

『#14 宍戸昴』

『#12 相楽翠』

『#03 宇佐美凛』

 看守と囚人。

 俺は看守側だ。つまり、命令を出す側。

 だが、この立場にいることで安全というわけではない。明日の投票で順位が変われば、俺も囚人になる可能性がある。

 安堂圭吾が俺たち看守を睨んだ。

「おい……まさか本当に命令なんて出すつもりじゃないだろうな」

 俺は彼を見つめた。

「このゲームのルールに従わなければ、俺たちも彼女と同じ運命を辿ることになる」

「じゃあ……じゃあどうしろって言うんだ!」

 安堂圭吾の声が裏返った。

「俺たちは……俺たちは人を殺したんだぞ!投票で!」

 葛城翼も拳を握り締めた。

「クソが……こんなの間違ってる……」

 宝生朱音は呆然と処刑台を見つめていた。

「さっきまで……さっきまで一緒にいたのに……」

 白鷺小夜は震えを止められずにいた。

 だが、宍戸昴だけは違った。彼は冷笑を浮かべていた。

「面白くなってきたじゃないか。これで本格的にゲームが始まったってことだ」

 全員が宍戸昴を見た。

 相楽翠が震え声で言った。

「あなた……人が死んだのよ……どうして笑っていられるの……」

「だって、しょうがないじゃないか」宍戸昴は肩をすくめた。「俺たちは参加者なんだ。ルールに従うしかない。だったら、楽しまなきゃ損だろ?」

 その瞬間、早乙女千景が宍戸昴に向かって駆け出した。

「ふざけないで!」

 彼女は宍戸昴の胸を叩いた。

「蒼依ちゃんが死んだのよ!それなのに楽しいって!あなた最低よ!」

 宍戸昴は早乙女千景を軽く押しのけた。

「最低?俺が最低だって?じゃあ聞くが、お前は如月に投票しなかったのか?」

 早乙女千景は言葉に詰まった。

 宍戸昴は続ける。

「俺たちは全員、誰かに投票した。つまり、全員が殺人者だ。俺だけが最低なんじゃない。俺たちは全員、同じ穴の狢だ」

 その言葉に、誰も反論できなかった。

 なぜなら、それが真実だったから。

 俺は宍戸昴を見つめた。彼の言葉は残酷だったが、正確だった。

 俺たちは全員、如月蒼依を殺した。投票という形で。

 機械音声が告げる。

「明日の看守は、命令権の行使について検討してください。囚人の皆様は、看守の命令に従ってください。違反した場合は、ペナルティを科します」

 命令権。

 俺は看守として、囚人の誰かに命令を出さなければならない。

 だが、どんな命令を出せばいいのだろうか。

 そして、命令を出すことで、俺は如月蒼依を殺した時よりもさらに深い罪を背負うことになるのだろうか。

 配信画面では、視聴者たちが明日への期待を込めたコメントを流し続けていた。

『看守の命令楽しみ』

『誰がどんな命令出すかな』

『#07の命令見たい』

『囚人たちの反応が楽しみ』

 俺は処刑台の残骸を見つめた。

 如月蒼依はもういない。彼女の”人間らしくいたい”という願いも、一緒に溶け去った。

 そして俺たちは、彼女の死の上に立って、このゲームを続けなければならない。

 これが”正義”として消費される世界。

 俺たちの苦悩と破綻が、娯楽として楽しまれる世界。

 俺は心の奥で、深い絶望を感じていた。

 だが同時に、生き残るためには、この現実を受け入れなければならないということも理解していた。

 明日からは、看守として。

 命令を出す者として。

 俺は、さらに深い地獄に足を踏み入れることになる。
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