ランキングデスゲーム〜辛くて拡散希望、生き残りたいです〜

みにぶた🐽

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第I部:投票はじまりの檻

第4章「上位5名、看守へ」

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 如月蒼依の処刑から一夜が明けた。

 俺たちは皆、ほとんど眠れなかった。個室のベッドに横になっても、彼女の最期の叫び声が耳から離れない。溶けていく身体の光景が瞼の裏に焼き付いている。

 だが、ゲームは容赦なく続いていく。

 午後8時。2回目の投票結果発表の時間だった。

 俺たちは再び中央ホールに集められ、モニターの前に並んだ。昨日は十五人だったが、今日は十四人。如月蒼依の不在が、改めて現実を突きつける。

 機械音声が冷たく響く。

「第2回人気投票結果を発表いたします」

 画面に結果が表示された。

『第2回人気投票結果』

『1位:#07 緋村陸翔 4,156票』

『2位:#01 斑鳩凌 3,789票』

『3位:#15 真鍋天馬 3,234票』

『4位:#04 雪村颯汰 2,987票』

『5位:#10 鳴海瑠璃 2,756票』

 俺は再び1位。そして看守の顔ぶれに変化があった。真鍋天馬が3位に上昇し、雪村颯汰が4位に下がっている。

 続いて下位の結果。

『6位:#08 五十嵐龍之介 2,345票』

『7位:#02 葛城翼 2,134票』

『8位:#06 宝生朱音 1,876票』

『9位:#09 白鷺小夜 1,567票』

『10位:#11 安堂圭吾 1,432票』

『11位:#14 宍戸昴 1,289票』

『12位:#05 早乙女千景 1,056票』

『13位:#12 相楽翠 834票』

『14位:#03 宇佐美凛 623票』

 宇佐美凛が最下位。昨日の如月蒼依の死を見た後では、その意味は誰にとっても明確だった。

 宇佐美凛は膝から崩れ落ちた。

「嘘……また私……」

 だが今回は、機械音声の内容が異なった。

「本日の処刑は延期いたします。看守任命式を先に執行いたします」

 延期?

 俺たちの困惑をよそに、機械音声は続けた。

「新たに看守に任命される皆様、前方へお進みください」

 俺、斑鳩凌、真鍋天馬、雪村颯汰、鳴海瑠璃の五人が前に出る。

 ホールの中央に、看守専用の席が上昇してきた。高級そうな革張りの椅子が五脚、囚人たちを見下ろすような位置に配置されている。

「看守の皆様、席にお着きください」

 俺たちは戸惑いながらも席に座った。

 この瞬間、明確に”上”と”下”の関係が視覚化された。

 真鍋天馬が困惑気味に呟いた。

「こんな……こんなことして何の意味が……」

 だが斑鳩凌は険しい表情で囚人たちを見下ろしていた。

「俺たちは選ばれた。つまり、責任がある」

 鳴海瑠璃は冷静に状況を分析していた。

「これは視聴者への演出でしょうね。権力構造を明確にして、対立を煽ろうとしている」

 雪村颯汰は苦悩の表情を浮かべていた。

「こんなの……仲間を見下すなんて……」

 そして俺は、この状況を冷静に観察していた。

 看守席から見る光景は、確実に俺の心理に影響を与えていた。上から見下ろす囚人たちが、どこか小さく、従属的に見える。

 これが権力の心理的効果か。

 機械音声が告げる。

「看守の皆様には、命令権が付与されました。囚人の中から1名を選び、命令を下してください」

 命令。

 ついにその時が来た。

 配信画面のコメント欄が激しく流れていた。

『きたああああ』

『初命令タイム』

『どんな命令出すかな』

『#07から見たい』

『囚人の反応楽しみ』

 斑鳩凌が最初に立ち上がった。

「俺から行く」

 彼は囚人たちを見回し、宍戸昴を指差した。

「#14、宍戸昴。お前は昨日、如月の死を笑った。その軽率さを反省するため、1時間、土下座していろ」

 宍戸昴は皮肉な笑みを浮かべた。

「はいはい、分かりましたよ」

 彼は床に膝をつき、頭を下げた。しかし、その表情には反省の色はまったく見えない。

 配信のコメント欄が反応した。

『#01正義感強いな』

『でも命令軽すぎない?』

『#14むかつく態度』

 続いて真鍋天馬が立ち上がった。

「僕は……」

 彼は迷うような素振りを見せた後、早乙女千景を指差した。

「#05、早乙女千景さん。みんなで歌を歌って、少しでも雰囲気を明るくしてください」

 早乙女千景は困惑した表情を見せた。

「歌……ですか?」

「お願いします。みんなが少しでも元気になるように」

 早乙女千景は震え声で童謡を歌い始めた。だが、この状況での歌声は、むしろ不気味に響いた。

 雪村颯汰は葛城翼を指差した。

「#02、葛城翼。腕立て伏せを50回」

 葛城翼は舌打ちをした。

「チッ……分かったよ」

 彼は床に手をつき、腕立て伏せを始めた。

 鳴海瑠璃は冷静に宝生朱音を指差した。

「#06、宝生朱音。今の心境を正直に話してください。嘘は禁止です」

 宝生朱音は戸惑った。

「心境って……」

「今、何を考えているか。何を感じているか。全て話してください」

 宝生朱音は涙ぐみながら答えた。

「怖いです……いつ自分が殺されるか分からなくて……でも、看守の人たちを恨んでしまう自分も嫌で……」

 その告白に、ホール内が静まり返った。

 そして、俺の番が来た。

 俺は立ち上がり、囚人たちを見回した。

 誰に命令を出すべきか。どんな命令を出すべきか。

 俺は安堂圭吾を指差した。

「#11、安堂圭吾。お前の怒りは理解できる。だが、感情的になれば判断力が鈍る。10分間、完全に静止していろ。動いてはいけない。話してもいけない」

 安堂圭吾は俺を睨んだ。

「お前……俺を馬鹿にしてるのか?」

「命令だ」俺は冷静に答えた。「従わなければペナルティが科される」

 安堂圭吾は拳を握り締めたが、最終的に従った。彼は立ったまま動かなくなった。

 配信のコメント欄が盛り上がった。

『#07の命令えぐい』

『心理戦すぎる』

『#11キレそう』

『看守の本性出てきたな』

 機械音声が告げる。

「命令の執行を確認いたしました。囚人の皆様、命令違反は即座にペナルティの対象となります」

 俺は看守席に座りながら、自分の心境を分析していた。

 命令を出すことで、確実に何かが変わった。

 上から見下ろすという物理的な位置関係。命令を出すという権力の行使。そして、それに従わせるという支配の快感。

 俺は権力を手に入れた。そして、その権力を使うことに、わずかながら快感を覚えている自分がいた。

 これは危険な兆候だった。

 囚人たちの表情を見れば、それは明らかだった。

 五十嵐龍之介は怯えた目で看守席を見上げていた。

 白鷺小夜は震えながらうつむいていた。

 相楽翠は涙を流していた。

 そして宇佐美凛は、絶望に顔を歪めていた。

 俺たちと囚人たちの間に、明確な分断が生まれた。

 昨日まで同じ境遇だった仲間が、今日は支配する者と支配される者に分かれた。

 真鍋天馬が小さく呟いた。

「これで良かったのかな……」

 斑鳩凌は厳格な表情で答えた。

「俺たちには責任がある。ルールを守らせ、秩序を維持する責任が」

 だが鳴海瑠璃は首を振った。

「これはゲームよ。私たちがやっていることは、視聴者の娯楽でしかない」

 雪村颯汰は苦悩の表情で言った。

「でも……従わなければ、俺たちも囚人に戻る。そうなれば……」

 そうなれば、死ぬ可能性が高まる。

 それが現実だった。

 配信のコメント欄では、看守たちの議論が話題になっていた。

『看守同士でも分裂してる』

『#15と#04は甘すぎる』

『#01と#07が強いな』

『#10は冷静すぎて怖い』

 俺は安堂圭吾を見た。彼は命令通り、10分間静止し続けていた。拳は握り締められ、全身に怒りが満ちているのが分かる。

 だが、彼は従った。

 それが俺に妙な満足感を与えた。

 自分の意志を他人に強制し、それを実現させる力。

 これが権力の本質なのか。

 そして、この権力を失いたくないという欲望も、確実に俺の中に生まれつつあった。

 機械音声が告げる。

「命令の執行時間が終了いたしました。看守の皆様、明日も引き続き権限を行使してください」

 明日も。

 つまり、この支配関係は続く。そして、俺たちは命令を出し続けなければならない。

 さもなければ、囚人に戻り、死の恐怖に怯えることになる。

 俺は看守席から囚人たちを見下ろした。

 彼らの目には、恐怖と絶望、そして俺たちへの恨みが宿っていた。

 昨日まで仲間だった者たちが、今日は敵になった。

 そして俺は、その変化を受け入れつつある自分に、深い危機感を抱いていた。

 命令に対する倫理的疑念は確かにある。だが同時に、権力の快感も無視できない。

 このゲームは、俺たちの人間性を確実に蝕んでいる。

 だが、生き残るためには、この変化を受け入れなければならないのかもしれない。

 配信は続き、視聴者たちは俺たちの堕落を楽しみ続けている。

 俺たちは、もはや後戻りできない地点に立っていた。
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