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第II部:支配という報酬
第10章 「コメント欄は正義」
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相楽翠の処刑から一夜が明けた。
五十嵐龍之介は一睡もしていなかった。 個室のベッドに横になっても、 相楽翠の最後の言葉が耳から離れない。 『龍之介さん……あなたは優しい人です……だから……自分を責めないで……』
だが、 自分を責めずにはいられなかった。 彼女を無視したのは自分だ。 その結果、 彼女の人気が下がり、 処刑台に送られた。
午前10時。 看守による命令の時間が来た。
今日の俺たちは、 昨日とは明らかに違っていた。 相楽翠の死が、 全員に重くのしかかっている。
特に真鍋天馬と雪村颯汰は、 明らかに動揺していた。
一方で、 斑鳩凌と鳴海瑠璃は、 逆に冷徹さを増していた。
配信画面には、 視聴者からのリアルタイムコメントが表示されていた。
『今日の命令楽しみ』
『
#08どうなるかな』
『もっと過激にしろ』
『心理戦見たい』
『課金準備OK』
視聴者数は既に6万人を超えていた。 そして、 コメント欄には具体的な命令のリクエストが流れ始めた。
『看守同士で対立させろ』
『囚人に選択させろ』
『誰かを裏切らせろ』
『秘密を暴露させろ』
斑鳩凌がそのコメント欄を見て、 満足そうに言った。
「視聴者の期待が高まっている。 今日は特に創造的な命令を出そう」
彼は囚人たちを見回し、 宝生朱音を指差した。
「
#06、 宝生朱音。 お前は昨日、 感情を抑えきれずに泣いていたな。 今日はその弱さを克服しろ。 他の囚人の中から一人選んで、 その者の秘密を暴露しろ。 知っている限りの恥ずかしい話や弱点を全て話せ」
宝生朱音は困惑した。
「秘密を暴露って……そんなこと……」
「命令だ」 斑鳩凌が厳しく言った。 「選ばなければ、 お前がペナルティを受ける」
宝生朱音は震えながら囚人たちを見回した。 そして、 苦渋の決断で早乙女千景を指差した。
「
#05、 早乙女千景さんは……実は……」
早乙女千景が青ざめた。
「朱音ちゃん……やめて……」
だが宝生朱音は涙を流しながら続けた。
「千景さんは、 以前リストカットをしていたことがあります。 腕に傷跡があります。 それと……家族から虐待を受けていたって……」
早乙女千景は膝から崩れ落ちた。
「やめて……お願い……それ以上は……」
配信のコメント欄が激しく反応した。
『うわあああああ』
『
#05の秘密やばい』
『リスカとか重すぎ』
『
#06も辛そう』
『これぞリアルサバイバル』
続いて鳴海瑠璃が立ち上がった。
「私も視聴者の期待に応えましょう」
彼女は冷たく安堂圭吾を見つめた。
「
#11、 安堂圭吾。 あなたは正義感が強いけれど、 実際は偽善者よね。 今日はその偽善を証明してもらいましょう。 他の囚人を一人選んで、 その人が次に処刑されるべき理由を述べなさい。 具体的に、 説得力のある理由を」
安堂圭吾は激怒した。
「ふざけるな!そんなこと言えるか!」
「言えないの?」 鳴海瑠璃が挑発した。 「それとも、 心の奥では誰かを犠牲にしたいと思ってるのかしら?」
「そんなわけあるか!」
「じゃあ証明しなさい。 あなたの正義感が本物なら、 誰も選べないはず。 でも、 もし誰かを選んだら……あなたも結局は偽善者よ」
安堂圭吾は言葉に詰まった。
鳴海瑠璃は続ける。
「選ばなければペナルティ。 選べば偽善者の証明。 さあ、 どうする?」
安堂圭吾は苦悶の表情で囚人たちを見回した。 そして、 震え声で言った。
「
#14、 宍戸昴を……選ぶ。 理由は……彼が人の死を笑うから……」
宍戸昴は皮肉な笑みを浮かべた。
「ほら見ろ。 結局お前も俺たちと同じだ」
安堂圭吾は自己嫌悪に顔を歪めた。
真鍋天馬は明らかに躊躇していた。
「僕は……こんな命令は……」
だが配信のコメント欄が彼を糾弾し始めた。
『
#15甘すぎ』
『つまらん命令出すな』
『もっと面白くしろ』
『課金する価値ない』
そのコメントを見た真鍋天馬は、 苦悩の表情で白鷺小夜を指差した。
「
#09、 白鷺小夜さん。 あなたは……他の人の長所を一つずつ言ってください。 みんなが少しでも元気になるように」
その温情的な命令に、 配信のコメント欄は不満を爆発させた。
『つまらねー』
『
#15はクビにしろ』
『こんなの命令じゃない』
『課金返せ』
機械音声が警告した。
「視聴者満足度が低下しています。 より効果的な命令を実行してください」
真鍋天馬は青ざめた。
雪村颯汰も同様に優しい命令を出そうとしたが、 視聴者の圧力に屈した。
「
#02、 葛城翼。 君は……みんなの前で自分の一番恥ずかしい体験を話してください」
葛城翼は困惑した。
「恥ずかしい体験って……」
「お願いします」 雪村颯汰は苦しそうに言った。 「コメント欄の要求で……」
そして俺の番が来た。
俺は五十嵐龍之介を見つめた。 彼は昨夜から完全に気力を失っていた。
配信のコメント欄には俺への期待が溢れていた。
『
#07の心理戦見たい』
『
#08をどう料理するか』
『期待してる』
『課金増額』
俺は冷静に命令を下した。
「
#08、 五十嵐龍之介。 お前は昨日から自分を責め続けている。 だが、 そのような状態では他の仲間にも悪影響を与える。 今日は相楽翠への追悼として、 彼女について知っていることを全て話せ。 そして、 彼女の死から学んだことを発表しろ」
五十嵐龍之介は俺を見上げた。
「翠さんについて……」
「そうだ。 彼女を忘れないために。 彼女の人となりを記録に残すために」
五十嵐龍之介は涙を拭いながら話し始めた。
「翠さんは……とても優しい人でした。 いつも他の人を気遣って……怖がりだったけど、 勇気のある人でした……」
配信のコメント欄が反応した。
『
#07の命令巧妙』
『追悼という名の責め』
『
#08完全に操られてる』
『心理戦の天才』
午後になると、 命令の効果が如実に表れた。
宝生朱音と早乙女千景の関係は完全に破綻していた。 秘密を暴露された早乙女千景は、 宝生朱音を見ることもできずにいた。
安堂圭吾は自分の偽善を暴かれ、 深い自己嫌悪に陥っていた。
五十嵐龍之介は相楽翠について語ることで、 さらに罪悪感を深めていた。
白鷺小夜は他の人の長所を語ったものの、 誰もその言葉に心を開いていなかった。
葛城翼は恥ずかしい体験を話して屈辱を味わっていた。
宍戸昴だけが、 相変わらず冷笑を浮かべていた。
午後3時頃、 配信画面に特別なメッセージが表示された。
『視聴者投票企画』
『今日最も優秀だった看守に特別ボーナス票を付与します』
『投票してください』
看守たちに対する人気投票が始まった。
結果は数分で出た。
『1位:#07 緋村陸翔 45%』
『2位:#01 斑鳩凌 28%』
『3位:#10 鳴海瑠璃 18%』
『4位:#04 雪村颯汰 5%』
『5位:#15 真鍋天馬 4%』
俺が1位だった。 相楽翠への追悼という名目で五十嵐龍之介を心理的に追い詰める命令が、 視聴者に高く評価されたのだ。
配信のコメント欄が俺を称賛していた。
『
#07天才すぎ』
『心理戦の教科書』
『追悼で責めるとか鬼畜』
『だからこそ面白い』
『
#07に課金する』
斑鳩凌が俺に近づいてきた。
「#07、 流石だな。 お前の命令は常に効果的だ」
「そうか」 俺は淡々と答えた。
「視聴者のコメントを見ろ。 彼らはお前の手法を絶賛している」
確かに、 コメント欄には俺への賞賛が溢れていた。
『
#07の命令分析』
『表面的には優しく見えるけど実は残酷』
『相手の心理を完全に読んでる』
『これがプロの技』
だが同時に、 俺は複雑な気持ちを抱いていた。
確かに俺の命令は効果的だった。 五十嵐龍之介を追悼という美名の下で心理的に追い詰め、 視聴者の満足も得た。
しかし、 それは本当に正しいことなのだろうか。
夕方になると、 機械音声が告げた。
「本日の命令執行は非常に優秀でした。 特に #07の手法は視聴者から高い評価を受けています。 明日も同レベルの創造性を期待します」
同レベルの創造性。
つまり、 今日と同じかそれ以上に巧妙で残酷な命令が求められている。
夜になると、 真鍋天馬が俺に近づいてきた。
「#07……俺たち、 おかしくなってませんか?」
俺は彼を見つめた。
「何がだ?」
「命令を出すことに……慣れてしまっている。 他人を苦しめることに罪悪感を感じなくなっている」
「それがこのゲームの効果だ」 俺は答えた。 「俺たちは徐々に変化している」
「変化って……悪い方向にですよね?」
「生き残るために必要な変化だ」
真鍋天馬は苦悩の表情を見せた。
「でも……これじゃあ俺たちは人間じゃなくなってしまう……」
「人間でいたければ死ねばいい」 俺は冷たく言った。 「このゲームでは、 人間らしさと生存は両立しない」
その言葉に、 真鍋天馬は言葉を失った。
俺は配信画面を見つめた。
視聴者数は7万人を超えていた。 そして、 コメント欄には明日への期待が溢れていた。
『明日はもっと過激に』
『
#07の新しい手法見たい』
『心理戦エスカレートしろ』
『課金準備万端』
俺たちの堕落が、 大成功を収めている。
そして俺自身も、 その成功に一種の満足感を覚えている。
視聴者に評価されること。 巧妙な命令で相手を追い詰めること。 権力を効果的に行使すること。
これらに快感を感じている自分がいる。
真鍋天馬の言う通り、 俺たちは確実に人間ではない何かに変わりつつある。
だが、 その変化を止めることはできない。
生き残るためには、 この変化を受け入れるしかない。
たとえそれが、 完全な怪物になることを意味しても。
配信のコメント欄が、 俺たちの明日への期待で埋め尽くされていた。
そして俺は、 その期待に応えるために、 より巧妙で効果的な命令を考え始めた。
視聴者の娯楽のために。
自分の生存のために。
人間性を売り払いながら。
五十嵐龍之介は一睡もしていなかった。 個室のベッドに横になっても、 相楽翠の最後の言葉が耳から離れない。 『龍之介さん……あなたは優しい人です……だから……自分を責めないで……』
だが、 自分を責めずにはいられなかった。 彼女を無視したのは自分だ。 その結果、 彼女の人気が下がり、 処刑台に送られた。
午前10時。 看守による命令の時間が来た。
今日の俺たちは、 昨日とは明らかに違っていた。 相楽翠の死が、 全員に重くのしかかっている。
特に真鍋天馬と雪村颯汰は、 明らかに動揺していた。
一方で、 斑鳩凌と鳴海瑠璃は、 逆に冷徹さを増していた。
配信画面には、 視聴者からのリアルタイムコメントが表示されていた。
『今日の命令楽しみ』
『
#08どうなるかな』
『もっと過激にしろ』
『心理戦見たい』
『課金準備OK』
視聴者数は既に6万人を超えていた。 そして、 コメント欄には具体的な命令のリクエストが流れ始めた。
『看守同士で対立させろ』
『囚人に選択させろ』
『誰かを裏切らせろ』
『秘密を暴露させろ』
斑鳩凌がそのコメント欄を見て、 満足そうに言った。
「視聴者の期待が高まっている。 今日は特に創造的な命令を出そう」
彼は囚人たちを見回し、 宝生朱音を指差した。
「
#06、 宝生朱音。 お前は昨日、 感情を抑えきれずに泣いていたな。 今日はその弱さを克服しろ。 他の囚人の中から一人選んで、 その者の秘密を暴露しろ。 知っている限りの恥ずかしい話や弱点を全て話せ」
宝生朱音は困惑した。
「秘密を暴露って……そんなこと……」
「命令だ」 斑鳩凌が厳しく言った。 「選ばなければ、 お前がペナルティを受ける」
宝生朱音は震えながら囚人たちを見回した。 そして、 苦渋の決断で早乙女千景を指差した。
「
#05、 早乙女千景さんは……実は……」
早乙女千景が青ざめた。
「朱音ちゃん……やめて……」
だが宝生朱音は涙を流しながら続けた。
「千景さんは、 以前リストカットをしていたことがあります。 腕に傷跡があります。 それと……家族から虐待を受けていたって……」
早乙女千景は膝から崩れ落ちた。
「やめて……お願い……それ以上は……」
配信のコメント欄が激しく反応した。
『うわあああああ』
『
#05の秘密やばい』
『リスカとか重すぎ』
『
#06も辛そう』
『これぞリアルサバイバル』
続いて鳴海瑠璃が立ち上がった。
「私も視聴者の期待に応えましょう」
彼女は冷たく安堂圭吾を見つめた。
「
#11、 安堂圭吾。 あなたは正義感が強いけれど、 実際は偽善者よね。 今日はその偽善を証明してもらいましょう。 他の囚人を一人選んで、 その人が次に処刑されるべき理由を述べなさい。 具体的に、 説得力のある理由を」
安堂圭吾は激怒した。
「ふざけるな!そんなこと言えるか!」
「言えないの?」 鳴海瑠璃が挑発した。 「それとも、 心の奥では誰かを犠牲にしたいと思ってるのかしら?」
「そんなわけあるか!」
「じゃあ証明しなさい。 あなたの正義感が本物なら、 誰も選べないはず。 でも、 もし誰かを選んだら……あなたも結局は偽善者よ」
安堂圭吾は言葉に詰まった。
鳴海瑠璃は続ける。
「選ばなければペナルティ。 選べば偽善者の証明。 さあ、 どうする?」
安堂圭吾は苦悶の表情で囚人たちを見回した。 そして、 震え声で言った。
「
#14、 宍戸昴を……選ぶ。 理由は……彼が人の死を笑うから……」
宍戸昴は皮肉な笑みを浮かべた。
「ほら見ろ。 結局お前も俺たちと同じだ」
安堂圭吾は自己嫌悪に顔を歪めた。
真鍋天馬は明らかに躊躇していた。
「僕は……こんな命令は……」
だが配信のコメント欄が彼を糾弾し始めた。
『
#15甘すぎ』
『つまらん命令出すな』
『もっと面白くしろ』
『課金する価値ない』
そのコメントを見た真鍋天馬は、 苦悩の表情で白鷺小夜を指差した。
「
#09、 白鷺小夜さん。 あなたは……他の人の長所を一つずつ言ってください。 みんなが少しでも元気になるように」
その温情的な命令に、 配信のコメント欄は不満を爆発させた。
『つまらねー』
『
#15はクビにしろ』
『こんなの命令じゃない』
『課金返せ』
機械音声が警告した。
「視聴者満足度が低下しています。 より効果的な命令を実行してください」
真鍋天馬は青ざめた。
雪村颯汰も同様に優しい命令を出そうとしたが、 視聴者の圧力に屈した。
「
#02、 葛城翼。 君は……みんなの前で自分の一番恥ずかしい体験を話してください」
葛城翼は困惑した。
「恥ずかしい体験って……」
「お願いします」 雪村颯汰は苦しそうに言った。 「コメント欄の要求で……」
そして俺の番が来た。
俺は五十嵐龍之介を見つめた。 彼は昨夜から完全に気力を失っていた。
配信のコメント欄には俺への期待が溢れていた。
『
#07の心理戦見たい』
『
#08をどう料理するか』
『期待してる』
『課金増額』
俺は冷静に命令を下した。
「
#08、 五十嵐龍之介。 お前は昨日から自分を責め続けている。 だが、 そのような状態では他の仲間にも悪影響を与える。 今日は相楽翠への追悼として、 彼女について知っていることを全て話せ。 そして、 彼女の死から学んだことを発表しろ」
五十嵐龍之介は俺を見上げた。
「翠さんについて……」
「そうだ。 彼女を忘れないために。 彼女の人となりを記録に残すために」
五十嵐龍之介は涙を拭いながら話し始めた。
「翠さんは……とても優しい人でした。 いつも他の人を気遣って……怖がりだったけど、 勇気のある人でした……」
配信のコメント欄が反応した。
『
#07の命令巧妙』
『追悼という名の責め』
『
#08完全に操られてる』
『心理戦の天才』
午後になると、 命令の効果が如実に表れた。
宝生朱音と早乙女千景の関係は完全に破綻していた。 秘密を暴露された早乙女千景は、 宝生朱音を見ることもできずにいた。
安堂圭吾は自分の偽善を暴かれ、 深い自己嫌悪に陥っていた。
五十嵐龍之介は相楽翠について語ることで、 さらに罪悪感を深めていた。
白鷺小夜は他の人の長所を語ったものの、 誰もその言葉に心を開いていなかった。
葛城翼は恥ずかしい体験を話して屈辱を味わっていた。
宍戸昴だけが、 相変わらず冷笑を浮かべていた。
午後3時頃、 配信画面に特別なメッセージが表示された。
『視聴者投票企画』
『今日最も優秀だった看守に特別ボーナス票を付与します』
『投票してください』
看守たちに対する人気投票が始まった。
結果は数分で出た。
『1位:#07 緋村陸翔 45%』
『2位:#01 斑鳩凌 28%』
『3位:#10 鳴海瑠璃 18%』
『4位:#04 雪村颯汰 5%』
『5位:#15 真鍋天馬 4%』
俺が1位だった。 相楽翠への追悼という名目で五十嵐龍之介を心理的に追い詰める命令が、 視聴者に高く評価されたのだ。
配信のコメント欄が俺を称賛していた。
『
#07天才すぎ』
『心理戦の教科書』
『追悼で責めるとか鬼畜』
『だからこそ面白い』
『
#07に課金する』
斑鳩凌が俺に近づいてきた。
「#07、 流石だな。 お前の命令は常に効果的だ」
「そうか」 俺は淡々と答えた。
「視聴者のコメントを見ろ。 彼らはお前の手法を絶賛している」
確かに、 コメント欄には俺への賞賛が溢れていた。
『
#07の命令分析』
『表面的には優しく見えるけど実は残酷』
『相手の心理を完全に読んでる』
『これがプロの技』
だが同時に、 俺は複雑な気持ちを抱いていた。
確かに俺の命令は効果的だった。 五十嵐龍之介を追悼という美名の下で心理的に追い詰め、 視聴者の満足も得た。
しかし、 それは本当に正しいことなのだろうか。
夕方になると、 機械音声が告げた。
「本日の命令執行は非常に優秀でした。 特に #07の手法は視聴者から高い評価を受けています。 明日も同レベルの創造性を期待します」
同レベルの創造性。
つまり、 今日と同じかそれ以上に巧妙で残酷な命令が求められている。
夜になると、 真鍋天馬が俺に近づいてきた。
「#07……俺たち、 おかしくなってませんか?」
俺は彼を見つめた。
「何がだ?」
「命令を出すことに……慣れてしまっている。 他人を苦しめることに罪悪感を感じなくなっている」
「それがこのゲームの効果だ」 俺は答えた。 「俺たちは徐々に変化している」
「変化って……悪い方向にですよね?」
「生き残るために必要な変化だ」
真鍋天馬は苦悩の表情を見せた。
「でも……これじゃあ俺たちは人間じゃなくなってしまう……」
「人間でいたければ死ねばいい」 俺は冷たく言った。 「このゲームでは、 人間らしさと生存は両立しない」
その言葉に、 真鍋天馬は言葉を失った。
俺は配信画面を見つめた。
視聴者数は7万人を超えていた。 そして、 コメント欄には明日への期待が溢れていた。
『明日はもっと過激に』
『
#07の新しい手法見たい』
『心理戦エスカレートしろ』
『課金準備万端』
俺たちの堕落が、 大成功を収めている。
そして俺自身も、 その成功に一種の満足感を覚えている。
視聴者に評価されること。 巧妙な命令で相手を追い詰めること。 権力を効果的に行使すること。
これらに快感を感じている自分がいる。
真鍋天馬の言う通り、 俺たちは確実に人間ではない何かに変わりつつある。
だが、 その変化を止めることはできない。
生き残るためには、 この変化を受け入れるしかない。
たとえそれが、 完全な怪物になることを意味しても。
配信のコメント欄が、 俺たちの明日への期待で埋め尽くされていた。
そして俺は、 その期待に応えるために、 より巧妙で効果的な命令を考え始めた。
視聴者の娯楽のために。
自分の生存のために。
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