ランキングデスゲーム〜辛くて拡散希望、生き残りたいです〜

みにぶた🐽

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第III部:崩れる倫理

第14章「もう誰も、助けてくれない」

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 相楽翠の復活から一夜が明けた。

 俺たちは看守として、囚人を見下ろしていた。その中には、昨日復活した相楽翠の姿もあった。

 彼女は相変わらず虚ろな表情で座り続けていた。時々小さく呟くが、その内容は不明瞭で、誰にも理解できなかった。

 五十嵐龍之介は一晩中彼女を見つめ続けていたようで、目が赤く腫れていた。

 午前10時。命令の時間が始まった。

 斑鳩凌が最初に立ち上がった。彼の表情は、昨日よりもさらに冷徹になっていた。

「復活者が加わったことで、規律がさらに重要になった」

 彼は囚人たちを見回し、五十嵐龍之介を指差した。

「#08、五十嵐龍之介。お前は昨夜、復活者を見つめ続けていたな。そのような感傷は、このゲームには不要だ」

 五十嵐龍之介は俯いたまま答えた。

「でも…翠さんが…」

「翠?」斑鳩凌が冷笑した。「あれはもう翠ではない。システムに操られた人形だ。それを理解させてやる」

 斑鳩凌は残酷な命令を下した。

「復活者#12に向かって、『お前は偽物だ。本物の相楽翠はもう死んでいる』と言え。大きな声で、はっきりと」

 五十嵐龍之介は青ざめた。

「そんな…できません…」

「命令だ」斑鳩凌が厳しく言った。「従わなければ、お前がペナルティを受ける」

 五十嵐龍之介は震えながら相楽翠を見つめた。彼女は相変わらず虚ろな目をしていた。

 長い沈黙の後、五十嵐龍之介は涙を流しながら言った。

「翠さん…あなたは…あなたは偽物です…本物の翠さんはもう…」

 彼の声は震えていた。

 相楽翠はゆっくりと五十嵐龍之介を見つめたが、特に反応は示さなかった。記憶の欠落により、その言葉の意味すら理解していないのかもしれない。

 配信のコメント欄が反応した。

『#01鬼畜すぎ』
『#08可哀想』
『復活者への仕打ちエグい』
『でも面白い』

 続いて鳴海瑠璃が立ち上がった。

「私も非情な現実を教えてあげましょう」

 彼女は早乙女千景を指差した。

「#05、早乙女千景。あなたは宝生朱音との関係が破綻したことで、孤立を深めているわね。今日はその孤立を完全なものにしましょう」

 早乙女千景は不安そうに鳴海瑠璃を見上げた。

「他の囚人全員の前で、一人ずつに向かって『私はあなたを信用していません』と言いなさい。そして、その理由も述べなさい」

 早乙女千景は絶望的な表情を見せた。

「そんな…みんなを…」

「そうよ。あなたにはもう味方はいない。それを理解しなさい」

 早乙女千景は震えながら、まず雪村颯汰に向かって言った。

「颯汰さん…私は…私はあなたを信用していません。元看守だったのに、結局何もできなかったから…」

 雪村颯汰は傷ついた表情を見せた。

 早乙女千景は続けて他の囚人たちにも同様の言葉を向けていく。一人ずつ、確実に関係を破壊していく。

 その光景を見て、真鍋天馬が立ち上がった。

「やめてください!これは人間のやることじゃない!」

 斑鳩凌が真鍋天馬を睨んだ。

「また甘いことを言うのか、#15」

「甘いって…人として当然の感情でしょう!」

 鳴海瑠璃が冷たく笑った。

「人として?あなたはまだそんなことを言ってるの?」

 その時、機械音声が警告した。

「#15真鍋天馬の命令実行率が著しく低下しています。即座に効果的な命令を実行してください。従わない場合、特別措置を発動いたします」

 真鍋天馬は追い詰められた。

 彼は苦悩の表情で白鷺小夜を見つめた後、震え声で言った。

「#09、白鷺小夜さん…その…今日は…」

 長い沈黙の後、彼は涙を流しながら命令を下した。

「自分の一番怖い体験を、みんなの前で詳しく話してください…それで少しでも…恐怖を共有することで…」

 その中途半端な命令に、配信のコメント欄は容赦なかった。

『#15もうダメだ』
『これで命令のつもり?』
『完全に壊れてる』
『特別措置発動しろ』

 機械音声が冷たく告げた。

「#15の命令は不適切と判断いたします。特別措置を検討いたします」

 真鍋天馬は絶望的な表情を見せた。

 そして俺の番が来た。

 俺は冷静に状況を分析していた。真鍋天馬の破綻、囚人たちの絶望、復活者の存在。これらの要素を効果的に利用する命令を考える必要があった。

 俺は葛城翼を指差した。

「#02、葛城翼。お前は怒りを内に秘めているが、その怒りの矛先が曖昧だ。今日ははっきりさせろ」

 葛城翼は俺を見上げた。

「この中で最も不要だと思う人間を一人選び、その者に向かって『お前は生きている価値がない』と言え。そして、なぜそう思うのか、具体的な理由を述べろ」

 葛城翼は困惑した。

「生きている価値がないって…そんなこと…」

「言えないのか?」俺は冷たく続けた。「お前の中には確実にそう思っている相手がいるはずだ。偽善を捨てて、本音を言え」

 葛城翼は苦悶の表情で囚人たちを見回した。

 長い沈黙の後、彼は震え声で言った。

「#14…宍戸昴…お前は生きている価値がない」

 宍戸昴は皮肉な笑みを浮かべた。

「ほう、理由は?」

「お前は…お前は人の死を笑う。人の苦しみを楽しむ。そんな人間は…」

「そんな人間は?」宍戸昴が挑発した。

「生きていても意味がない!」葛城翼が叫んだ。

 その瞬間、何かが壊れた音がした。

 葛城翼自身が、自分の言葉に衝撃を受けていた。

 配信のコメント欄が盛り上がった。

『#07の心理戦やばい』
『#02完全に操られてる』
『本音を引き出すの上手すぎ』
『これぞ真の命令』

 午後になると、命令の効果が深刻に表れ始めた。

 五十嵐龍之介は相楽翠を偽物呼ばわりしたことで、さらに深い罪悪感に苛まれていた。

 早乙女千景は全員から不信を表明したことで、完全に孤立していた。

 葛城翼は他人を否定したことで、自己嫌悪に陥っていた。

 白鷺小夜は恐怖体験を語ることで、さらに不安定になっていた。

 そして真鍋天馬は、特別措置の恐怖に震えていた。

 午後3時頃、機械音声が告げた。

「#15真鍋天馬に対する特別措置を発動いたします」

 ホール中央に、これまでとは異なる装置が上昇してきた。椅子のような形状だが、頭部に何らかの機械が取り付けられている。

「これは思考調整装置です。#15の過度な良心を適正レベルに調整いたします」

 真鍋天馬は青ざめた。

「思考調整って…僕の頭に何をするつもりですか…」

「あなたの脳内の共感回路を一部制限し、より効率的な判断ができるよう調整いたします」

 つまり、強制的に良心を削り取るということだった。

 真鍋天馬は必死に抵抗した。

「やめてください!僕は僕のままでいたい!」

 だが、機械のアームが彼を捕獲し、思考調整装置に運んでいく。

 雪村颯汰が立ち上がった。

「やめろ!それは人間改造だ!」

 安堂圭吾も抗議した。

「こんなのおかしい!」

 だが、斑鳩凌が冷たく言った。

「彼は看守として不適格だった。調整は当然の措置だ」

 鳴海瑠璃も同調した。

「感傷的すぎる看守など、このゲームには不要よ」

 真鍋天馬は装置に固定された。頭部の機械が作動し始める。

「やめて…やめてください…僕の心を…」

 彼の悲鳴が響いたが、誰も助けることはできなかった。

 機械音声が事務的に告げる。

「思考調整を開始いたします。処理時間:30分」

 30分間、真鍋天馬の苦悶の声がホールに響き続けた。

 そして、処理が終わると、彼は装置から解放された。

 だが、真鍋天馬は完全に変わっていた。

 表情から優しさが消え、冷たく無機質になっていた。

 機械音声が告げる。

「思考調整完了。#15の共感機能を40%削減いたしました。これで効率的な看守活動が可能になります」

 真鍋天馬はゆっくりと立ち上がり、囚人たちを見下ろした。

 その目には、以前の温かさはまったくなかった。

 配信のコメント欄が反応した。

『うわあああああ』
『#15改造された』
『人格変わってる』
『これヤバすぎ』
『でも面白い』

 夕方になると、改造された真鍋天馬が初めて命令を出した。

「#09、白鷺小夜。お前の弱さは他の囚人に悪影響を与える。今日から泣くことを禁止する。涙を流したら、即座にペナルティを科す」

 その冷酷な命令に、囚人たちは戦慄した。

 以前の優しかった真鍋天馬は、もういなかった。

 雪村颯汰が震え声で言った。

「天馬…君じゃない…君はそんな人じゃなかった…」

 だが、真鍋天馬は無表情で答えた。

「効率的でない感情は除去された。これで適切な判断ができる」

 俺は冷静にその光景を観察していた。

 システムは、最終的に看守を完全に支配下に置こうとしている。良心を持つ者は改造し、従順な駒に変える。

 これが、このゲームの最終段階なのかもしれない。

 夜になると、囚人たちは絶望に沈んでいた。

 五十嵐龍之介は相楽翠を見つめながら呟いた。

「もう誰も…誰も助けてくれない…」

 早乙女千景は一人で座り込み、誰とも話そうとしなかった。

 葛城翼は自分の発言を悔やんでいた。

 安堂圭吾は怒りを感じながらも、どうすることもできずにいた。

 白鷺小夜は涙を流したくても流せずに震えていた。

 宍戸昴だけが、相変わらず状況を楽しんでいるようだった。

 そして復活した相楽翠は、虚ろな目で宙を見つめ続けていた。

 俺は看守席から囚人たちを見下ろした。

 もはや希望の光は完全に消えていた。

 看守は冷酷になり、囚人は絶望し、復活者は魂を失っていた。

 システムの目的は達成されつつあった。

 完全に支配された参加者たち。感情を削り取られた看守たち。

 これが、人間を家畜化する最終段階なのだろう。

 配信の視聴者数は12万人を超えていた。

 そして俺自身も、その光景を見て何も感じなくなっている自分に気づいていた。

 いつの間にか、俺も人間性の一部を失っていたのかもしれない。

 だが、それでも生き残らなければならない。

 この地獄のような世界で。

 たとえ人間でなくなったとしても。
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