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第IV部:殺したのは、誰か?
第19章「選挙と責任」
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新看守体制から3日が経過した。
ホール内の惨状はさらに悪化していた。安堂圭吾の下剤による激しい下痢で床は汚物まみれとなり、宝生朱音の精神的破綻により意味不明な笑い声が断続的に響いていた。早乙女千景は腸閉塞で倒れ込み、白鷺小夜の感染症は複数の囚人に拡大していた。
そして五十嵐龍之介は、この3日間で明らかに変わっていた。
初日の罪悪感は薄れ、看守としての権力に慣れ始めている。昨日は真鍋天馬に「効率的な屈辱を味わえ」と言い放ち、今朝は雪村颯汰に「希望など捨てろ」と冷たく命じていた。
午前10時。
今日は、いつもと違う空気が流れていた。
機械音声が響く。
「特別企画を発表いたします。本日は『責任追及投票』を実施いたします」
モニターに新しい表示が現れた。
『責任追及投票』
『これまでの処刑について、最も責任が重い参加者を投票で決定します』
『対象:処刑に関与した全参加者』
『最も票を集めた者には特別ペナルティを科します』
ホール内がざわめいた。
安堂圭吾が震え声で言った。
「責任って…俺たちみんな投票したじゃないか…」
機械音声が続ける。
「処刑された者:#13如月蒼依、#03宇佐美凛、#12相楽翠(2回)」
「これらの死について、視聴者と参加者が最も責任が重いと考える者を決定いたします」
画面に選択肢が表示された。
『候補者』
『看守として命令を出した者たち』
『#07 緋村陸翔』
『#01 斑鳩凌』
『#10 鳴海瑠璃』
『#15 真鍋天馬(元看守)』
『#04 雪村颯汰(元看守)』
『#08 五十嵐龍之介(新看守)』
『直接的影響を与えた者たち』
『#08 五十嵐龍之介(相楽翠無視命令)』
『#06 宝生朱音(早乙女秘密暴露)』
『#05 早乙女千景(宇佐美情報暴露)』
俺は冷静に状況を分析していた。
これは看守と囚人の分裂をさらに深めるための仕掛けだ。責任を個人に押し付けることで、参加者同士の対立を煽ろうとしている。
葛城翼が怒りを露わにした。
「ふざけるな!俺たちは投票を強制されただけだ!本当の責任者はこのシステムを作った奴らだろう!」
斑鳩凌が冷たく返した。
「現実を見ろ。俺たちは確実に人を殺した。その責任から逃れることはできない」
鳴海瑠璃も同調した。
「感情的になっても仕方ないわ。事実は事実よ」
宍戸昴が皮肉な笑みを浮かべた。
「面白いじゃないか。殺人者同士で責任の押し付け合いか」
その時、五十嵐龍之介が立ち上がった。
「俺が…俺が一番悪いんだ」
全員が彼を見た。
「翠さんを無視したのは俺だ。あの命令がなければ、翠さんは死ななかった」
真鍋天馬が機械的な声で言った。
「効率的な分析では、直接的因果関係が最も明確だ」
雪村颯汰も苦悩の表情で頷いた。
「龍之介の気持ちは分かる…俺も看守として、責任を感じている」
だが俺は、この状況の危険性を理解していた。
責任を個人に集中させれば、その個人が標的になる。そして、責任追及は新たな処刑の理由になる可能性が高い。
「待て」俺は立ち上がった。
「責任を一人に押し付けるのは間違っている」
全員の視線が俺に向く。
「俺たちは全員、このシステムの被害者だ。同時に、全員が加害者でもある」
安堂圭吾が俺を見つめた。
「でも…誰かは他の人より責任が重いだろう…」
「重い軽いの問題ではない」俺は冷静に答えた。「このゲームの本質を理解しろ。俺たちを分裂させることが目的だ」
配信のコメント欄が激しく流れていた。
『#07の分析正しい』
『でも責任追及面白い』
『#08が一番悪いでしょ』
『看守が全部悪い』
『全員殺人者』
機械音声が告げる。
「投票時間:30分間。参加者票と視聴者票で決定いたします」
投票が始まった。
ホール内では、参加者同士が互いを見つめ合っていた。誰に投票するか、誰が最も責任が重いか。
早乙女千景が震え声で言った。
「私…私が宇佐美さんの秘密を知ってたから…」
宝生朱音も変形した顔で呟いた。
「私も…千景ちゃんの秘密を…」
だが宍戸昴が冷笑した。
「お前たちの秘密暴露なんて大した影響じゃないだろう。一番は五十嵐の無視命令だ」
五十嵐龍之介は俯いていた。
「俺が…俺が殺したんだ…」
その時、葛城翼が怒鳴った。
「違う!殺したのは俺たちじゃない!このクソシステムだ!」
斑鳩凌が葛城翼を睨んだ。
「現実逃避をするな。俺たちは確実に手を汚している」
「手を汚してるのは看守だろう!」葛城翼が反発した。「命令を出して、俺たちを追い詰めて!」
鳴海瑠璃が冷たく返した。
「命令に従ったのはあなたたちよ。選択したのもあなたたち」
「選択?」安堂圭吾が激怒した。「従わなければ拷問だっただろう!選択の余地なんてなかった!」
ホール内で激しい口論が始まった。
看守と囚人の対立。囚人同士の責任の押し付け合い。
そして、その全てを視聴者が楽しみながら見ている。
30分後、投票結果が発表された。
『責任追及投票結果』
『1位:#08 五十嵐龍之介 45%』
『2位:#07 緋村陸翔 23%』
『3位:#01 斑鳩凌 18%』
『4位:#10 鳴海瑠璃 8%』
『5位:#06 宝生朱音 6%』
五十嵐龍之介が最も責任が重いと判断された。
彼自身も、その結果を受け入れるように頷いた。
「そうだ…俺が一番悪い…俺が翠さんを殺した…」
機械音声が告げる。
「最高責任者として、#08五十嵐龍之介に特別ペナルティを科します」
ホール中央に、これまでとは異なる装置が上昇してきた。椅子のような形状だが、頭部に複雑な機械が取り付けられている。
「これは記憶投影装置です。#08の記憶を全参加者と視聴者に投影し、責任の重さを共有していただきます」
五十嵐龍之介は青ざめた。
「記憶を…投影?」
「あなたが相楽翠を無視した時の心境、命令を受けた時の気持ち、そして彼女が処刑された時の感情。全てを他者に体験させます」
つまり、五十嵐龍之介の罪悪感と苦痛を、全員で共有するということだった。
機械のアームが五十嵐龍之介を捕獲し、記憶投影装置に運んでいく。
「やめて…それは…俺だけの苦しみだから…」
だが、システムは人間の感情など考慮しない。
五十嵐龍之介は装置に固定された。頭部の機械が作動し始める。
「記憶投影を開始いたします。処理時間:1時間」
装置が作動すると、ホール内の全員の頭に映像が流れ始めた。
相楽翠を無視しなければならないと命令された時の五十嵐龍之介の苦悩。
優しい性格と命令への恐怖の間で揺れる心。
相楽翠の悲しそうな表情を見ながらも、無視を続けなければならない罪悪感。
そして、彼女が処刑台で消えていく時の絶望と自己嫌悪。
その全ての感情が、参加者全員に流れ込んできた。
早乙女千景が嘔吐した。
「やめて…こんな苦しみ…」
安堂圭吾も涙を流した。
「龍之介…こんなに苦しんでいたのか…」
宝生朱音は変形した顔で泣いていた。
「私も…私も同じことを…」
だが斑鳩凌は冷静だった。
「これが責任の重さだ。理解しろ」
鳴海瑠璃も表情を変えなかった。
「感情に流されても意味がない」
1時間の記憶投影が終わると、五十嵐龍之介は装置から解放された。
だが、彼は完全に変わっていた。
自分の罪悪感が全員に共有されたことで、逆に開き直ったような表情を見せていた。
「もういい…俺は確実に人殺しだ。それを受け入れる」
配信のコメント欄が反応していた。
『記憶投影やばすぎ』
『#08の苦しみリアル』
『全員で共有とか残酷』
『でも面白い』
『次は誰の記憶見たい』
機械音声が告げた。
「記憶投影により、責任の共有が完了いたします。明日からは、この経験を踏まえて活動してください」
夜になると、参加者たちは皆、複雑な感情を抱いていた。
五十嵐龍之介の記憶を体験したことで、それぞれが自分の責任について考えさせられた。
だが同時に、その体験が新たな分裂を生み出していた。
「俺はあそこまで苦しんでいない」と考える者。
「俺の方がもっと辛い」と思う者。
「彼だけが責任を負うのは不公平だ」と感じる者。
責任の共有は、結果的により深い対立を生み出していた。
俺は看守席から囚人たちを見下ろした。
今日の出来事で、明らかに新たな段階に入った。
単純な支配と被支配の関係から、複雑な責任と罪悪感の関係へ。
そして、その複雑さが、さらなる悲劇を生み出すことになるだろう。
配信は続き、視聴者たちは俺たちの新たな苦悩を楽しみにしている。
責任追及。
それは、俺たちを更なる地獄へと導く新たな武器だった。
ホール内の惨状はさらに悪化していた。安堂圭吾の下剤による激しい下痢で床は汚物まみれとなり、宝生朱音の精神的破綻により意味不明な笑い声が断続的に響いていた。早乙女千景は腸閉塞で倒れ込み、白鷺小夜の感染症は複数の囚人に拡大していた。
そして五十嵐龍之介は、この3日間で明らかに変わっていた。
初日の罪悪感は薄れ、看守としての権力に慣れ始めている。昨日は真鍋天馬に「効率的な屈辱を味わえ」と言い放ち、今朝は雪村颯汰に「希望など捨てろ」と冷たく命じていた。
午前10時。
今日は、いつもと違う空気が流れていた。
機械音声が響く。
「特別企画を発表いたします。本日は『責任追及投票』を実施いたします」
モニターに新しい表示が現れた。
『責任追及投票』
『これまでの処刑について、最も責任が重い参加者を投票で決定します』
『対象:処刑に関与した全参加者』
『最も票を集めた者には特別ペナルティを科します』
ホール内がざわめいた。
安堂圭吾が震え声で言った。
「責任って…俺たちみんな投票したじゃないか…」
機械音声が続ける。
「処刑された者:#13如月蒼依、#03宇佐美凛、#12相楽翠(2回)」
「これらの死について、視聴者と参加者が最も責任が重いと考える者を決定いたします」
画面に選択肢が表示された。
『候補者』
『看守として命令を出した者たち』
『#07 緋村陸翔』
『#01 斑鳩凌』
『#10 鳴海瑠璃』
『#15 真鍋天馬(元看守)』
『#04 雪村颯汰(元看守)』
『#08 五十嵐龍之介(新看守)』
『直接的影響を与えた者たち』
『#08 五十嵐龍之介(相楽翠無視命令)』
『#06 宝生朱音(早乙女秘密暴露)』
『#05 早乙女千景(宇佐美情報暴露)』
俺は冷静に状況を分析していた。
これは看守と囚人の分裂をさらに深めるための仕掛けだ。責任を個人に押し付けることで、参加者同士の対立を煽ろうとしている。
葛城翼が怒りを露わにした。
「ふざけるな!俺たちは投票を強制されただけだ!本当の責任者はこのシステムを作った奴らだろう!」
斑鳩凌が冷たく返した。
「現実を見ろ。俺たちは確実に人を殺した。その責任から逃れることはできない」
鳴海瑠璃も同調した。
「感情的になっても仕方ないわ。事実は事実よ」
宍戸昴が皮肉な笑みを浮かべた。
「面白いじゃないか。殺人者同士で責任の押し付け合いか」
その時、五十嵐龍之介が立ち上がった。
「俺が…俺が一番悪いんだ」
全員が彼を見た。
「翠さんを無視したのは俺だ。あの命令がなければ、翠さんは死ななかった」
真鍋天馬が機械的な声で言った。
「効率的な分析では、直接的因果関係が最も明確だ」
雪村颯汰も苦悩の表情で頷いた。
「龍之介の気持ちは分かる…俺も看守として、責任を感じている」
だが俺は、この状況の危険性を理解していた。
責任を個人に集中させれば、その個人が標的になる。そして、責任追及は新たな処刑の理由になる可能性が高い。
「待て」俺は立ち上がった。
「責任を一人に押し付けるのは間違っている」
全員の視線が俺に向く。
「俺たちは全員、このシステムの被害者だ。同時に、全員が加害者でもある」
安堂圭吾が俺を見つめた。
「でも…誰かは他の人より責任が重いだろう…」
「重い軽いの問題ではない」俺は冷静に答えた。「このゲームの本質を理解しろ。俺たちを分裂させることが目的だ」
配信のコメント欄が激しく流れていた。
『#07の分析正しい』
『でも責任追及面白い』
『#08が一番悪いでしょ』
『看守が全部悪い』
『全員殺人者』
機械音声が告げる。
「投票時間:30分間。参加者票と視聴者票で決定いたします」
投票が始まった。
ホール内では、参加者同士が互いを見つめ合っていた。誰に投票するか、誰が最も責任が重いか。
早乙女千景が震え声で言った。
「私…私が宇佐美さんの秘密を知ってたから…」
宝生朱音も変形した顔で呟いた。
「私も…千景ちゃんの秘密を…」
だが宍戸昴が冷笑した。
「お前たちの秘密暴露なんて大した影響じゃないだろう。一番は五十嵐の無視命令だ」
五十嵐龍之介は俯いていた。
「俺が…俺が殺したんだ…」
その時、葛城翼が怒鳴った。
「違う!殺したのは俺たちじゃない!このクソシステムだ!」
斑鳩凌が葛城翼を睨んだ。
「現実逃避をするな。俺たちは確実に手を汚している」
「手を汚してるのは看守だろう!」葛城翼が反発した。「命令を出して、俺たちを追い詰めて!」
鳴海瑠璃が冷たく返した。
「命令に従ったのはあなたたちよ。選択したのもあなたたち」
「選択?」安堂圭吾が激怒した。「従わなければ拷問だっただろう!選択の余地なんてなかった!」
ホール内で激しい口論が始まった。
看守と囚人の対立。囚人同士の責任の押し付け合い。
そして、その全てを視聴者が楽しみながら見ている。
30分後、投票結果が発表された。
『責任追及投票結果』
『1位:#08 五十嵐龍之介 45%』
『2位:#07 緋村陸翔 23%』
『3位:#01 斑鳩凌 18%』
『4位:#10 鳴海瑠璃 8%』
『5位:#06 宝生朱音 6%』
五十嵐龍之介が最も責任が重いと判断された。
彼自身も、その結果を受け入れるように頷いた。
「そうだ…俺が一番悪い…俺が翠さんを殺した…」
機械音声が告げる。
「最高責任者として、#08五十嵐龍之介に特別ペナルティを科します」
ホール中央に、これまでとは異なる装置が上昇してきた。椅子のような形状だが、頭部に複雑な機械が取り付けられている。
「これは記憶投影装置です。#08の記憶を全参加者と視聴者に投影し、責任の重さを共有していただきます」
五十嵐龍之介は青ざめた。
「記憶を…投影?」
「あなたが相楽翠を無視した時の心境、命令を受けた時の気持ち、そして彼女が処刑された時の感情。全てを他者に体験させます」
つまり、五十嵐龍之介の罪悪感と苦痛を、全員で共有するということだった。
機械のアームが五十嵐龍之介を捕獲し、記憶投影装置に運んでいく。
「やめて…それは…俺だけの苦しみだから…」
だが、システムは人間の感情など考慮しない。
五十嵐龍之介は装置に固定された。頭部の機械が作動し始める。
「記憶投影を開始いたします。処理時間:1時間」
装置が作動すると、ホール内の全員の頭に映像が流れ始めた。
相楽翠を無視しなければならないと命令された時の五十嵐龍之介の苦悩。
優しい性格と命令への恐怖の間で揺れる心。
相楽翠の悲しそうな表情を見ながらも、無視を続けなければならない罪悪感。
そして、彼女が処刑台で消えていく時の絶望と自己嫌悪。
その全ての感情が、参加者全員に流れ込んできた。
早乙女千景が嘔吐した。
「やめて…こんな苦しみ…」
安堂圭吾も涙を流した。
「龍之介…こんなに苦しんでいたのか…」
宝生朱音は変形した顔で泣いていた。
「私も…私も同じことを…」
だが斑鳩凌は冷静だった。
「これが責任の重さだ。理解しろ」
鳴海瑠璃も表情を変えなかった。
「感情に流されても意味がない」
1時間の記憶投影が終わると、五十嵐龍之介は装置から解放された。
だが、彼は完全に変わっていた。
自分の罪悪感が全員に共有されたことで、逆に開き直ったような表情を見せていた。
「もういい…俺は確実に人殺しだ。それを受け入れる」
配信のコメント欄が反応していた。
『記憶投影やばすぎ』
『#08の苦しみリアル』
『全員で共有とか残酷』
『でも面白い』
『次は誰の記憶見たい』
機械音声が告げた。
「記憶投影により、責任の共有が完了いたします。明日からは、この経験を踏まえて活動してください」
夜になると、参加者たちは皆、複雑な感情を抱いていた。
五十嵐龍之介の記憶を体験したことで、それぞれが自分の責任について考えさせられた。
だが同時に、その体験が新たな分裂を生み出していた。
「俺はあそこまで苦しんでいない」と考える者。
「俺の方がもっと辛い」と思う者。
「彼だけが責任を負うのは不公平だ」と感じる者。
責任の共有は、結果的により深い対立を生み出していた。
俺は看守席から囚人たちを見下ろした。
今日の出来事で、明らかに新たな段階に入った。
単純な支配と被支配の関係から、複雑な責任と罪悪感の関係へ。
そして、その複雑さが、さらなる悲劇を生み出すことになるだろう。
配信は続き、視聴者たちは俺たちの新たな苦悩を楽しみにしている。
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