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第IV部:殺したのは、誰か?
第20章「命令と意思」
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記憶投影から一夜が明けた。
ホール内は依然として血と汚物にまみれていたが、昨日とは異なる重苦しい空気が流れていた。五十嵐龍之介の記憶を共有したことで、参加者全員が罪悪感と責任について深く考えさせられていた。
だが、その影響は予想とは異なる形で現れていた。
五十嵐龍之介は昨日の記憶投影後、完全に変わっていた。罪悪感から解放されたかのように、冷たく無機質な表情をしている。
斑鳩凌が最初に立ち上がった。
「昨日の記憶共有で、責任の重さを理解したはずだ。今日からはより厳格に行く」
彼は真鍋天馬を指差した。
「#15、真鍋天馬。お前は改造されたにも関わらず看守から転落した失敗作だ。その無能さを証明するため、今から逆立ちで30分間歩き続けろ。倒れたら電気ショックだ」
真鍋天馬は共感機能を削減されているため、感情的な反応は示さなかった。
「効率的でない指示ですが、従います」
彼は機械的に逆立ちを始めた。だが、改造されているとはいえ、体力的には一般人と変わらない。すぐに震え始めた。
続いて鳴海瑠璃が立ち上がった。
「私は心理的な実験をしてみましょう」
彼女は雪村颯汰を指差した。
「#04、雪村颯汰。あなたは記憶共有で五十嵐龍之介の苦しみを体験したわね。今度はあなたが他の囚人に同じ苦しみを与えなさい。誰か一人を選んで、1時間完全に無視しなさい」
雪村颯汰は困惑した。
「そんな…龍之介さんの苦しみを知ったからこそ、同じことはできません…」
「できないの?」鳴海瑠璃が冷笑した。「それとも、あなたも龍之介と同じ責任を負いたいのかしら?」
雪村颯汰は苦悩の表情で囚人たちを見回した。記憶共有で体験した五十嵐龍之介の苦痛が鮮明に蘇る。
長い沈黙の後、雪村颯汰は震え声で言った。
「#14、宍戸昴を…無視します…」
宍戸昴は皮肉な笑みを浮かべた。
「ほら見ろ。結局みんな同じだ」
俺が立ち上がった。
「#02、葛城翼。お前は昨日、看守への怒りを露わにした。その怒りを屈辱で矯正する必要がある。今からみんなの見えるところで全裸になり、自慰行為をしろ。1時間継続しろ」
葛城翼は青ざめた。
「そんな…そんなことできるか!」
「拒否すれば、他の囚人全員にペナルティが科される」俺は冷静に言った。「お前の選択だ」
葛城翼は震えながら他の囚人たちを見回した。皆が苦痛に苦しんでいる姿を見て、さらなる苦痛を与えるわけにはいかないと判断したようだった。
「分かった…俺が…俺がやる…」
葛城翼は屈辱に顔を歪めながら服を脱ぎ始めた。全裸になると、震えながら自慰行為を開始した。
他の囚人たちは目を逸らしたが、強制的に見せられている状況だった。
そして、五十嵐龍之介の番が来た。
彼は立ち上がると、冷たい目で囚人たちを見回した。
「記憶を共有されて分かったことがある」
全員が彼を見つめた。
「俺は確実に人殺しだ。それを受け入れた以上、中途半端な優しさは捨てる」
五十嵐龍之介は宝生朱音を指差した。
「#06、宝生朱音。お前の変形した顔は見ていて不快だ。今から頭を壁に打ち付けて、さらに変形させろ。美しさなど、この状況には不要だ」
宝生朱音は衝撃を受けた。
「龍之介さん…なんで…昨日まであんなに苦しんでいたのに…」
「苦しんでいたからこそ、現実を受け入れた」五十嵐龍之介が冷たく答えた。「俺は殺人者だ。殺人者らしく振る舞う」
宝生朱音は涙を流しながら壁に向かった。そして、自分の顔を壁に打ち付け始める。
配信のコメント欄が激しく反応した。
『うわあああああ』
『#08完全に壊れた』
『記憶共有の副作用か』
『逆に冷酷になってる』
『これは予想外』
午後になると、命令の効果が深刻に表れていた。
真鍋天馬は逆立ち歩行により頭部に血が溜まり、意識を失いかけていた。
雪村颯汰は宍戸昴を無視することで、五十嵐龍之介と同じ罪悪感を味わい始めていた。
葛城翼は公開自慰の屈辱により精神的に完全に破綻し、自暴自棄状態になっていた。
宝生朱音は頭部を壁に打ち付けた結果、顔面の変形がさらに悪化し、出血も始まっていた。
そして継続苦痛中の3名も、状況が悪化していた。
安堂圭吾は脱水症状が進行し、意識が朦朧としている。
白鷺小夜は感染症が全身に広がり、高熱で痙攣を起こしていた。
早乙女千景は腸閉塞で激痛に苦しみ続けていた。
午後3時頃、異変が起こった。
白鷺小夜が突然、立ち上がったのだ。
「もう…もう嫌…」
彼女は感染症で朦朧とした意識の中、突然叫び始めた。
「死にたい…楽にして…お願い…殺して…」
彼女の精神が完全に崩壊したのだ。
続いて安堂圭吾も立ち上がった。
「俺も…俺ももう限界だ…」
脱水症状で意識が朦朧とする中、彼も叫んだ。
「こんな生き方…人間じゃない…いっそ死んだ方がマシだ…」
早乙女千景も腸閉塞の激痛の中、震え声で呟いた。
「痛い…痛い…もう耐えられない…誰か…終わらせて…」
3名の囚人が、同時に死を求め始めたのだ。
宝生朱音も変形した顔から血を流しながら言った。
「私も…もう醜くて…生きてる意味がない…」
ホール内で、複数の囚人が自暴自棄になり始めた。
斑鳩凌が冷たく言った。
「弱い者から死んでいく。自然の摂理だ」
鳴海瑠璃も同調した。
「感情的になっても仕方ない。これが現実よ」
だが五十嵐龍之介は、予想外の反応を見せた。
「死にたいなら死ねばいい」
全員が彼を見た。
「俺も人殺しになった。お前たちも死に急いでいる。全員、人間として終わってるんだ」
その冷たい言葉に、囚人たちは更なる絶望を感じた。
昨日まで優しかった五十嵐龍之介からの拒絶。それは、最後の希望を奪う言葉だった。
俺は冷静に状況を観察していた。
記憶投影の効果は、予想とは逆に現れた。五十嵐龍之介は罪悪感から解放されるのではなく、罪悪感を受け入れることで完全に冷酷になった。
そして、その変化が他の囚人たちの精神的崩壊を加速させている。
これは、システムが意図した結果なのかもしれない。
夕方になると、機械音声が告げた。
「本日の命令執行を評価いたします」
画面に評価が表示された。
『看守評価』
『#08 五十嵐龍之介:96点』
『#07 緋村陸翔:95点』
『#01 斑鳩凌:93点』
『#10 鳴海瑠璃:91点』
五十嵐龍之介の評価が最高点になっていた。
配信のコメント欄が彼の変化を絶賛していた。
『#08の変化すげー』
『優しさから冷酷への転換完璧』
『記憶共有の効果やばい』
『これぞ真の看守』
『もっと冷酷になれ』
夜になると、五十嵐龍之介は一人で座っていた。
俺は彼に近づいた。
「#08」
五十嵐龍之介が俺を見上げた。その目には、以前の温かさは微塵もなかった。
「俺は変わったんですね」
「どう変わったと思う?」俺は聞いた。
「人間をやめました」五十嵐龍之介が淡々と答えた。「罪悪感を受け入れることで、逆に自由になった」
「自由?」
「そうです。人間らしくいようとする制約から解放された。今の俺は、効率的に生き残ることだけを考えています」
俺は彼の変化を見つめた。
これが、記憶投影の真の効果だったのかもしれない。罪悪感を共有することで、逆にその罪悪感を正当化し、完全に開き直らせる。
善良だった人間を、完全な怪物に変える装置。
そして、その変化を視聴者が楽しむ。
配信は続き、俺たちの人間性はさらに削り取られていく。
命令と意思。
それらの境界が曖昧になった時、俺たちは完全に人間ではない何かになるのかもしれない。
ホール内は依然として血と汚物にまみれていたが、昨日とは異なる重苦しい空気が流れていた。五十嵐龍之介の記憶を共有したことで、参加者全員が罪悪感と責任について深く考えさせられていた。
だが、その影響は予想とは異なる形で現れていた。
五十嵐龍之介は昨日の記憶投影後、完全に変わっていた。罪悪感から解放されたかのように、冷たく無機質な表情をしている。
斑鳩凌が最初に立ち上がった。
「昨日の記憶共有で、責任の重さを理解したはずだ。今日からはより厳格に行く」
彼は真鍋天馬を指差した。
「#15、真鍋天馬。お前は改造されたにも関わらず看守から転落した失敗作だ。その無能さを証明するため、今から逆立ちで30分間歩き続けろ。倒れたら電気ショックだ」
真鍋天馬は共感機能を削減されているため、感情的な反応は示さなかった。
「効率的でない指示ですが、従います」
彼は機械的に逆立ちを始めた。だが、改造されているとはいえ、体力的には一般人と変わらない。すぐに震え始めた。
続いて鳴海瑠璃が立ち上がった。
「私は心理的な実験をしてみましょう」
彼女は雪村颯汰を指差した。
「#04、雪村颯汰。あなたは記憶共有で五十嵐龍之介の苦しみを体験したわね。今度はあなたが他の囚人に同じ苦しみを与えなさい。誰か一人を選んで、1時間完全に無視しなさい」
雪村颯汰は困惑した。
「そんな…龍之介さんの苦しみを知ったからこそ、同じことはできません…」
「できないの?」鳴海瑠璃が冷笑した。「それとも、あなたも龍之介と同じ責任を負いたいのかしら?」
雪村颯汰は苦悩の表情で囚人たちを見回した。記憶共有で体験した五十嵐龍之介の苦痛が鮮明に蘇る。
長い沈黙の後、雪村颯汰は震え声で言った。
「#14、宍戸昴を…無視します…」
宍戸昴は皮肉な笑みを浮かべた。
「ほら見ろ。結局みんな同じだ」
俺が立ち上がった。
「#02、葛城翼。お前は昨日、看守への怒りを露わにした。その怒りを屈辱で矯正する必要がある。今からみんなの見えるところで全裸になり、自慰行為をしろ。1時間継続しろ」
葛城翼は青ざめた。
「そんな…そんなことできるか!」
「拒否すれば、他の囚人全員にペナルティが科される」俺は冷静に言った。「お前の選択だ」
葛城翼は震えながら他の囚人たちを見回した。皆が苦痛に苦しんでいる姿を見て、さらなる苦痛を与えるわけにはいかないと判断したようだった。
「分かった…俺が…俺がやる…」
葛城翼は屈辱に顔を歪めながら服を脱ぎ始めた。全裸になると、震えながら自慰行為を開始した。
他の囚人たちは目を逸らしたが、強制的に見せられている状況だった。
そして、五十嵐龍之介の番が来た。
彼は立ち上がると、冷たい目で囚人たちを見回した。
「記憶を共有されて分かったことがある」
全員が彼を見つめた。
「俺は確実に人殺しだ。それを受け入れた以上、中途半端な優しさは捨てる」
五十嵐龍之介は宝生朱音を指差した。
「#06、宝生朱音。お前の変形した顔は見ていて不快だ。今から頭を壁に打ち付けて、さらに変形させろ。美しさなど、この状況には不要だ」
宝生朱音は衝撃を受けた。
「龍之介さん…なんで…昨日まであんなに苦しんでいたのに…」
「苦しんでいたからこそ、現実を受け入れた」五十嵐龍之介が冷たく答えた。「俺は殺人者だ。殺人者らしく振る舞う」
宝生朱音は涙を流しながら壁に向かった。そして、自分の顔を壁に打ち付け始める。
配信のコメント欄が激しく反応した。
『うわあああああ』
『#08完全に壊れた』
『記憶共有の副作用か』
『逆に冷酷になってる』
『これは予想外』
午後になると、命令の効果が深刻に表れていた。
真鍋天馬は逆立ち歩行により頭部に血が溜まり、意識を失いかけていた。
雪村颯汰は宍戸昴を無視することで、五十嵐龍之介と同じ罪悪感を味わい始めていた。
葛城翼は公開自慰の屈辱により精神的に完全に破綻し、自暴自棄状態になっていた。
宝生朱音は頭部を壁に打ち付けた結果、顔面の変形がさらに悪化し、出血も始まっていた。
そして継続苦痛中の3名も、状況が悪化していた。
安堂圭吾は脱水症状が進行し、意識が朦朧としている。
白鷺小夜は感染症が全身に広がり、高熱で痙攣を起こしていた。
早乙女千景は腸閉塞で激痛に苦しみ続けていた。
午後3時頃、異変が起こった。
白鷺小夜が突然、立ち上がったのだ。
「もう…もう嫌…」
彼女は感染症で朦朧とした意識の中、突然叫び始めた。
「死にたい…楽にして…お願い…殺して…」
彼女の精神が完全に崩壊したのだ。
続いて安堂圭吾も立ち上がった。
「俺も…俺ももう限界だ…」
脱水症状で意識が朦朧とする中、彼も叫んだ。
「こんな生き方…人間じゃない…いっそ死んだ方がマシだ…」
早乙女千景も腸閉塞の激痛の中、震え声で呟いた。
「痛い…痛い…もう耐えられない…誰か…終わらせて…」
3名の囚人が、同時に死を求め始めたのだ。
宝生朱音も変形した顔から血を流しながら言った。
「私も…もう醜くて…生きてる意味がない…」
ホール内で、複数の囚人が自暴自棄になり始めた。
斑鳩凌が冷たく言った。
「弱い者から死んでいく。自然の摂理だ」
鳴海瑠璃も同調した。
「感情的になっても仕方ない。これが現実よ」
だが五十嵐龍之介は、予想外の反応を見せた。
「死にたいなら死ねばいい」
全員が彼を見た。
「俺も人殺しになった。お前たちも死に急いでいる。全員、人間として終わってるんだ」
その冷たい言葉に、囚人たちは更なる絶望を感じた。
昨日まで優しかった五十嵐龍之介からの拒絶。それは、最後の希望を奪う言葉だった。
俺は冷静に状況を観察していた。
記憶投影の効果は、予想とは逆に現れた。五十嵐龍之介は罪悪感から解放されるのではなく、罪悪感を受け入れることで完全に冷酷になった。
そして、その変化が他の囚人たちの精神的崩壊を加速させている。
これは、システムが意図した結果なのかもしれない。
夕方になると、機械音声が告げた。
「本日の命令執行を評価いたします」
画面に評価が表示された。
『看守評価』
『#08 五十嵐龍之介:96点』
『#07 緋村陸翔:95点』
『#01 斑鳩凌:93点』
『#10 鳴海瑠璃:91点』
五十嵐龍之介の評価が最高点になっていた。
配信のコメント欄が彼の変化を絶賛していた。
『#08の変化すげー』
『優しさから冷酷への転換完璧』
『記憶共有の効果やばい』
『これぞ真の看守』
『もっと冷酷になれ』
夜になると、五十嵐龍之介は一人で座っていた。
俺は彼に近づいた。
「#08」
五十嵐龍之介が俺を見上げた。その目には、以前の温かさは微塵もなかった。
「俺は変わったんですね」
「どう変わったと思う?」俺は聞いた。
「人間をやめました」五十嵐龍之介が淡々と答えた。「罪悪感を受け入れることで、逆に自由になった」
「自由?」
「そうです。人間らしくいようとする制約から解放された。今の俺は、効率的に生き残ることだけを考えています」
俺は彼の変化を見つめた。
これが、記憶投影の真の効果だったのかもしれない。罪悪感を共有することで、逆にその罪悪感を正当化し、完全に開き直らせる。
善良だった人間を、完全な怪物に変える装置。
そして、その変化を視聴者が楽しむ。
配信は続き、俺たちの人間性はさらに削り取られていく。
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