ランキングデスゲーム〜辛くて拡散希望、生き残りたいです〜

みにぶた🐽

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第IV部:殺したのは、誰か?

第21章「バズる処刑」

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ホール内の惨状は、もはや人間が住む場所ではなかった。

床には血文字「ごめんなさい」と汚物、血痕が混在し、空気は絶望の臭いに満ちている。

4名の囚人が死を求めながら、昨日の命令の後遺症に苦しんでいた。安堂圭吾は脱水症状で虚ろな目をしており、白鷺小夜は感染症の後遺症で高熱に震え、早乙女千景は腸閉塞の後遺症で顔面蒼白、宝生朱音は変形した顔から時折血を滴らせていた。

「死にたい…楽にして…」白鷺小夜が震え声で呟く。

「いっそ死んだ方がマシだ…」安堂圭吾が意識朦朧としながら答える。

その光景を、五十嵐龍之介は血まみれの指で再び「ごめんなさい」と床に書きながら見つめていた。

「人間をやめました」

昨日の彼の宣言が、ホール内に重くのしかかっていた。

午前9時、機械音声が響いた。

「視聴者数が35万人を突破いたしました。本日からは処刑および命令のエンタメ化を完全実装いたします」

「エンタメ化?」俺は看守席から立ち上がった。

「視聴者の皆様から、処刑と命令に関する大量のアイデアが投稿されています。『バズる処刑』特別企画を開始いたします」

ホール中央に巨大なモニターが上昇してきた。画面には視聴者からの投稿が次々と流れている。

『ルーレット式処刑!最後の5分間で処刑方法をライブ投票!』
『囚人同士のガチバトル!勝者は処刑免除!』
『TikTok風ダンス処刑!バズれば生存!』
『謎解き処刑!制限時間内に解けなければ即死!』
『料理対決処刑!まずいと即終了!』
『整形手術処刑!美しくなれなければ排除!』

配信のコメント欄が狂乱状態になっていた。

『これこそエンタメ!』『バズる処刑天才すぎ』『課金しまくる!』『もっと派手にしろ!』『囚人の反応見たい』

機械音声が続けた。

「本日の人気投票では、最下位の方にこれらのアイデアから選択して処刑を実行いたします。視聴者投票により処刑方法を決定します」

囚人たちの表情が恐怖に歪んだ。

「バズる処刑って…」葛城翼が震え声で呟く。

「エンタメにされるのか…俺たちの死が…」真鍋天馬が絶望的な表情を見せた。

斑鳩凌が立ち上がった。

「素晴らしい!これでより効率的に粛清できる!」

鳴海瑠璃も冷たく微笑んだ。

「視聴者の期待に応えるのは当然よ。私たちは芸人なんだから」

だが、最も興味深い反応を見せたのは五十嵐龍之介だった。

「バズる処刑…面白いじゃないか」

彼は血まみれの指を舐めながら立ち上がった。

「どうせ人殺しなら、盛大にやろう。視聴者も喜ぶ。俺たちも楽しめる。三方良しだ」

完全に変貌した五十嵐龍之介の言葉に、囚人たちが戦慄した。

「龍之介…お前…」安堂圭吾が信じられない表情で見つめる。

「『お前』じゃない。『五十嵐看守』だ」彼が冷笑した。「俺はもう囚人の味方じゃない」

午前10時、最初の「バズる命令」が始まった。

機械音声が告げる。

「視聴者投票により、本日の命令テーマは『SNS映え地獄』に決定いたしました」

モニターに表示されたのは、信じられない命令の数々だった。

『#02葛城翼:自分の屈辱体験をラップにして熱唱せよ。バズらなければペナルティ』
『#04雪村颯汰:土下座で世界一周。5時間以内に完走せよ』
『#14宍戸昴:恐怖症克服チャレンジ。失敗すれば即処刑投票』
『#15真鍋天馬:感情機能を50%まで削減。改造ライブ配信』

「これは…」俺は愕然とした。

視聴者たちが、囚人の苦痛を完全にエンタメとして消費している。そして、それを看守が実行することを期待している。

斑鳩凌が興奮気味に叫んだ。

「素晴らしいアイデアだ!即座に実行しよう!」

鳴海瑠璃が頷いた。

「視聴率のためなら何でもやりましょう」

五十嵐龍之介が残酷な笑みを浮かべた。

「俺も参加したい。特に#02の屈辱ラップ、是非聞いてみたい」

葛城翼が青ざめた。

「やめてくれ…そんな屈辱的なこと…」

「嫌なら死ねばいい」五十嵐龍之介が冷たく言い放った。「どうせお前の人生に価値はない」

その瞬間、配信のコメント欄が爆発した。

『#08の変化やばすぎ!』『完全にサイコパス化』『これぞ真の看守』『人間性放棄完了』『五十嵐最高!』

視聴者数が40万人に急上昇していた。

俺は看守席から立ち上がった。

「#02、葛城翼」

葛城翼が俺を見上げた。その目には、かすかな希望の光があった。

俺は冷静に言った。

「自分の屈辱体験をラップにしろ。昨日の公開自慰も含めて、全て歌にしろ。視聴者が満足するまで歌い続けろ」

葛城翼の表情が絶望に変わった。

「陸翔…お前まで…」

「命令だ」俺は感情を押し殺して答えた。「従わなければ、即処刑投票にかける」

午後1時、狂乱の「SNS映え地獄」が本格始動した。

葛城翼が震え声で自分の屈辱をラップにして歌っている。

雪村颯汰は土下座のまま、血だらけの膝でホールを這い回っている。

宍戸昴は恐怖症を克服するため、密閉空間に入れられて絶叫している。

真鍋天馬は改造手術台で、感情機能をさらに削減されている。

そしてその全てが、40万人の視聴者にライブ配信されていた。

『神回すぎる!』『これぞエンタメ!』『課金止まらない!』『もっとやれ!』『バズってる!』

コメント欄は歓喜に溢れていた。

俺は看守席から、この地獄絵図を見下ろしていた。

昨日まで仲間だった者たちが、今は完全に敵になっている。

そして俺自身も、その変化を受け入れている。

「これが人間の本性なのか」俺は心の中で呟いた。

「権力を与えられた時、人間は容易に怪物になる」

五十嵐龍之介が俺の隣に立った。

「#07、面白くなってきましたね」

「ああ」俺は答えた。「視聴者の期待に応えることが、俺たちの使命だ」

「人間をやめて正解でした」彼が血まみれの指で新たな「ごめんなさい」を書きながら言った。「もう罪悪感はありません」

午後3時、ついに最下位が発表される時間が来た。

『第21回人気投票結果』

『1位:#07 緋村陸翔 9,876票』
『2位:#08 五十嵐龍之介 8,234票』
『3位:#01 斑鳩凌 7,891票』
『4位:#10 鳴海瑠璃 6,543票』

五十嵐龍之介が2位に上昇していた。彼の完全変貌が視聴者に大きく評価されたのだ。

『5位:#02 葛城翼 3,456票』
『6位:#04 雪村颯汰 2,987票』
『7位:#06 宝生朱音 2,654票』
『8位:#15 真鍋天馬 2,123票』
『9位:#11 安堂圭吾 1,789票』
『10位:#14 宍戸昴 1,456票』
『11位:#09 白鷺小夜 1,234票』

そして最下位。

『12位:#05 早乙女千景 987票』

早乙女千景が膝から崩れ落ちた。

腸閉塞の後遺症で顔面蒼白だった彼女は、もはや抵抗する力も残っていなかった。

機械音声が冷酷に告げた。

「最下位、#05早乙女千景の『バズる処刑』を執行いたします。視聴者投票により処刑方法を決定いたします」

モニターに処刑方法の選択肢が表示された。

『A:謎解き処刑(制限時間内に謎を解けなければ溶解)』
『B:料理対決処刑(まずい料理を作れば電撃)』
『C:整形手術処刑(美しくなれなければ解体)』
『D:TikTokダンス処刑(バズらなければ圧死)』
『E:ルーレット処刑(運次第で処刑方法変更)』

視聴者投票が始まった。

リアルタイムで票数が更新されていく。

『A:15,234票』『B:12,876票』『C:18,943票』『D:22,156票』『E:19,876票』

「TikTokダンス処刑」が最多票を獲得していた。

配信のコメント欄が狂乱していた。

『ダンス処刑最高!』『バズらせろ!』『踊れ踊れ!』『死ぬまで踊れ!』『エンタメの極致!』

早乙女千景は絶望的な表情で立ち上がった。

「踊れって…私、ダンスなんて…」

五十嵐龍之介が冷酷に笑った。

「バズらなければ死ぬだけ。簡単でしょう?」

斑鳩凌が興奮して叫んだ。

「これこそ現代的な処刑だ!時代に合わせて進化している!」

ホール中央に処刑台が上昇してきた。

だが、それは従来の処刑台とは全く異なっていた。

巨大なLEDスクリーン、スピーカー、そして上部には巨大な圧縮装置が設置されている。

「TikTokダンス処刑の説明をいたします」機械音声が告げた。

「被処刑者は5分間ダンスを踊り続けます。その様子は全世界に配信され、リアルタイムでいいね数が表示されます。5分以内に10万いいねを獲得できなければ、上部の圧縮装置が作動し、圧死いたします」

早乙女千景の顔が真っ青になった。

「10万いいね…そんなの無理…」

「でも、やるしかないですね」鳴海瑠璃が冷たく微笑んだ。「これも視聴者サービスよ」

早乙女千景は震えながら処刑台に向かった。

その瞬間、視聴者数が50万人を突破した。

『史上初のTikTok処刑!』『神企画すぎる!』『いいねしまくる!』『でも10万は厳しい』『踊れ~!』

処刑台上で、早乙女千景が震えながら立っていた。

腸閉塞の後遺症で満足に動けない状態だったが、生きるためには踊るしかなかった。

「開始します」機械音声が告げると、軽快な音楽が流れ始めた。

早乙女千景は必死にダンスを始めた。

だが、体調不良と恐怖で、とても人に見せられるようなダンスではなかった。

リアルタイムのいいね数が表示される。

『現在のいいね数:234』

あまりにも少ない数字に、早乙女千景の顔が絶望に歪んだ。

「もっと激しく踊れ!」斑鳩凌が叫んだ。

「セクシーに踊らないと誰も見ないわよ!」鳴海瑠璃が冷笑した。

五十嵐龍之介が血まみれの指で新たな「ごめんなさい」を書きながら言った。

「死ぬ気で踊れ。文字通りな」

早乙女千景は涙を流しながら、より激しく踊り始めた。

だが、いいね数は一向に増えない。

『現在のいいね数:1,876』

『残り時間:3分12秒』

配信のコメント欄に残酷な言葉が並んでいた。

『ダンス下手すぎ』『これじゃバズらない』『もっと脱げ』『死確定』『可哀想だけど仕方ない』

早乙女千景は完全に限界だった。

腸閉塞の後遺症で激痛が走る中、必死に踊り続けている。

だが、視聴者の心を掴むことはできなかった。

『現在のいいね数:3,456』

『残り時間:1分45秒』

「お願い…お願いします…」早乙女千景が踊りながら泣き叫んだ。「いいねしてください…死にたくない…」

その必死な姿に、わずかにいいね数が増加した。

『現在のいいね数:5,234』

だが、10万には程遠い数字だった。

五十嵐龍之介が冷酷に笑った。

「無駄な努力ですね。どうせ死ぬんだから、最後くらい美しく踊れば?」

『残り時間:30秒』

早乙女千景は最後の力を振り絞って踊った。

だが、いいね数は8,976で止まった。

10万には遠く及ばない。

「時間終了」機械音声が冷酷に告げた。

上部の圧縮装置が作動を始めた。

「やめろ!」安堂圭吾が叫んだ。「千景は何も悪いことしてない!」

「ルールはルールです」五十嵐龍之介が冷静に答えた。「バズらなかった彼女の責任です」

圧縮装置がゆっくりと降下してくる。

早乙女千景は絶望的な表情で見上げた。

「お母さん…ごめんなさい…」

その瞬間、俺は立ち上がった。

「待て」

全員が俺を見た。

「視聴者の皆さん、これで満足ですか?」俺はカメラに向かって語りかけた。「彼女の必死な姿を見て、それでも心が動かないのですか?」

配信のコメント欄が騒然となった。

『#07何言ってる?』『ルールでしょ』『感情論やめろ』『でも確かに可哀想』『人間性残ってる?』

だが、俺は続けた。

「エンタメとして楽しむのは構いません。でも、これは本物の人間の命です。画面の向こうにいる皆さんは、今この瞬間、一人の人間の生死を決めているんです」

いいね数が急激に上昇し始めた。

『9,234…9,567…9,823…』

「お願いします」俺は頭を下げた。「一人の人間として、彼女に最後のチャンスを与えてください」

その瞬間、いいね数が10万を突破した。

『100,234いいね達成!』

圧縮装置が停止した。

早乙女千景は処刑台で崩れ落ち、激しく泣いた。

「ありがとう…ありがとうございます…」

だが、五十嵐龍之介は不満そうだった。

「せっかくの処刑が台無しですね、#07」

「時にはこういう演出も必要だ」俺は答えた。「視聴者の感情を揺さぶることで、より深いエンガージメントを生み出せる」

斑鳩凌が頷いた。

「なるほど。それも戦略か」

配信のコメント欄は賛否両論に分かれていた。

『#07かっこいい』『でも甘すぎ』『人間味あるな』『これも計算?』『複雑な気持ち』

夕方、機械音声が告げた。

「本日の『バズる処刑』企画により、視聴者数が新記録の55万人に到達いたしました。明日以降も引き続き、視聴者参加型エンタメを実施いたします」

俺は看守席から囚人たちを見下ろした。

今日の出来事で、明らかに新たな段階に入った。

処刑と命令が完全にエンタメ化され、視聴者の欲望が直接的に反映されるようになった。

そして俺たちは、その欲望に応える performer として位置づけられた。

五十嵐龍之介が俺に近づいてきた。

「#07、今日の演出は見事でした」

「演出?」

「視聴者の感情を操作して、最後に救済する。より深い感動を生み出すテクニックですね」

俺は彼を見つめた。

完全に変貌した五十嵐龍之介は、もはや人間の感情を理解していなかった。

全てを戦略と計算で考えている。

「人間をやめた」というのは、本当だった。

夜になると、囚人たちの状況はさらに悪化していた。

「バズる処刑」の恐怖が、彼らの精神を完全に破綻させていた。

「次は俺の番かもしれない」葛城翼が震えながら呟く。

「もう何も信じられない」真鍋天馬が虚ろな目で天井を見つめている。

4名の死を求める囚人たちは、今日の出来事で更なる絶望に陥っていた。

俺は看守席から配信画面を見つめた。

視聴者数55万人。

俺たちの堕落が、これほどまでに多くの人々を魅了している。

そして明日も、この狂乱は続く。

より過激に、より残酷に、より面白く。

視聴者の欲望に応えるために。

俺たちは確実に、人間ではない何かに変わりつつあった。

そして、その変化を俺自身が受け入れ始めていることに、深い恐怖を感じていた。

配信は続き、明日はさらなる「バズる処刑」が待っている。

俺たちの人間性が、完全に商品として消費される日まで。

あと何人が死ねば、この地獄は終わるのだろうか。

そして、最後に残るのは本当に人間なのだろうか。

ホール内に響く、五十嵐龍之介の血文字を書く音だけが、静寂を破っていた。

「ごめんなさい」

その文字は、もはや謝罪ではなく、彼の完全な変貌を象徴する記号になっていた。

人間をやめた者の、最後の痕跡として。
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