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第IV部:殺したのは、誰か?
第23章「辞めたいけど、辞められない」
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羞恥命令特集から一夜が明けた。
ホール内は地獄そのものだった。葛城翼は完全に精神が破綻し、もはや何の反応も示さない。他の囚人たちも昨日の羞恥命令の恐怖で震え続けている。
床には血文字「ごめんなさい」、汚物、嘔吐物が混在し、空気は腐敗と絶望の臭いに満ちていた。
「もう無理…」白鷺小夜が感染症の高熱で幻覚を見ながら呟く。
「死にたい…楽にして…」安堂圭吾が脱水症状で意識朦朧としながら懇願する。
「生きてる意味がない…」宝生朱音が変形した顔面から血を滴らせながら天井を見つめる。
「終わらせて…お願い…」早乙女千景が腸閉塞の後遺症とTikTok処刑の恐怖で震えている。
4名の死を求める声が、ホール内に響いていた。
五十嵐龍之介は相変わらず血まみれの指で「ごめんなさい」と書き続けているが、その表情には完全な冷酷さがあった。
「人間をやめて正解だった」彼が独り言のように呟く。「こんなに楽になれるなんて」
午前9時、機械音声が響いた。
「視聴者数が80万人を突破いたしました。昨日の『羞恥命令特集』により、新規視聴者が大幅に増加しています」
モニターに視聴者数のグラフが表示される。急激な上昇カーブを描いていた。
「本日は視聴者からの強い要望により、『処刑級制裁』を実施いたします」
配信のコメント欄が狂乱していた。
『処刑級制裁ヤバすぎ』『もっと過激に』『看守の暴走見たい』『限界突破しろ』『課金準備完了』
斑鳩凌が興奮気味に立ち上がった。
「処刑級制裁!素晴らしい!これで完全に粛清できる!」
鳴海瑠璃も冷たく微笑んだ。
「視聴者の期待に応えなければね。より効果的な制裁を実行しましょう」
五十嵐龍之介が血まみれの指を舐めながら残酷に笑った。
「処刑しないで殺す方法ですか。面白いですね」
だが、その時、予想外のことが起こった。
斑鳩凌が突然、手を震わせ始めたのだ。
「俺は…俺はもうこれ以上は…」
全員が彼を見た。
あれほど過激な命令を主導していた斑鳩凌が、突然弱気を見せたのだ。
「どうした、#01?」俺が聞いた。
「もう限界だ…」斑鳩凌が震え声で答えた。「昨日の羞恥命令で#02が完全に壊れるのを見て…俺は一体何をしているんだ…」
「今更何を言ってるの?」鳴海瑠璃が冷笑した。「あなたが一番積極的だったじゃない」
「それは…それは看守でいるためには仕方なかったんだ…」斑鳩凌が苦悶の表情を見せた。「でも、もう無理だ。これ以上過激な命令は出せない」
五十嵐龍之介が冷酷に笑った。
「弱いですね、#01。人間らしさにこだわるからそうなる」
「お前に言われたくない!」斑鳩凌が激昂した。「お前は完全におかしくなってる!」
「おかしい?」五十嵐龍之介が血まみれの指で新たな「ごめんなさい」を書きながら答えた。「俺は正常だ。この状況に最適化されただけ」
その時、機械音声が冷酷に告げた。
「看守の皆様、本日の処刑級制裁を実行してください。拒否した場合、即座に囚人へ降格いたします」
斑鳩凌の顔が青ざめた。
「囚人への降格…それは…」
「処刑対象になるということよ」鳴海瑠璃が冷たく言った。「あなたも分かってるでしょう?」
斑鳩凌は震えながら囚人たちを見回した。
昨日まで自分が積極的に苦しめていた者たちの顔があった。もし自分が囚人に落ちれば、確実に報復を受けるだろう。
「でも…これ以上は…」
「やるしかないでしょう」鳴海瑠璃が冷笑した。「それとも死にたいの?」
配信のコメント欄が斑鳩凌の葛藤を楽しんでいた。
『#01の弱さ出た』『でも辞められないでしょ』『生存本能vs良心』『面白すぎる』
俺は斑鳩凌を見つめた。
彼の苦悩は理解できる。だが、この状況では良心は生存の妨げでしかない。
「#01」俺が声をかけた。
斑鳩凌が俺を見上げた。
「お前の気持ちは分かる。だが、ここで止まれば死ぬ」俺は冷静に続けた。「生きたいなら、続けるしかない」
「でも…人間として…」
「人間らしくいたければ死ねばいい」俺は冷酷に言い放った。「このゲームでは、人間性と生存は両立しない」
斑鳩凌は絶望的な表情を見せた。
その時、五十嵐龍之介が立ち上がった。
「俺が代わりにやりましょう」
「代わりに?」
「#01が躊躇するなら、俺が処刑級制裁を実行します」五十嵐龍之介が残酷な笑みを浮かべた。「人間をやめた俺には、躊躇はありません」
斑鳩凌は安堵と自己嫌悪の混じった表情を見せた。
「龍之介…すまない…」
「謝る必要はありません」五十嵐龍之介が血まみれの指で「ごめんなさい」を書きながら答えた。「これが効率的な役割分担です」
五十嵐龍之介は囚人たちを冷酷な目で見回した。
「処刑級制裁の対象は…#14、宍戸昴にしましょう」
宍戸昴の皮肉な笑みが消えた。
「俺を選ぶ理由は?」
「あなたの皮肉な態度が不快だからです」五十嵐龍之介が淡々と答えた。「それに、恐怖症が複数あるので、効率的に苦痛を与えられる」
「効率的って…」宍戸昴が青ざめた。
「密閉空間、高所、暗闇、すべての恐怖を同時に体験してもらいます」五十嵐龍之介が残酷に説明した。「そして、その状態で24時間放置します」
ホール中央に巨大な装置が上昇してきた。
密閉された透明な箱が、高い位置に設置され、内部は完全に暗闇になっている。
「24時間?」宍戸昴が恐怖に震えた。「そんなの…死ぬかもしれない…」
「死んでも構いません」五十嵐龍之介が冷酷に答えた。「処刑級制裁ですから」
配信のコメント欄が狂乱していた。
『24時間密閉とか鬼畜すぎ』『これもう処刑でしょ』『#08の冷酷さ完璧』『恐怖症利用えぐい』
宍戸昴は震えながら装置に向かった。
「やめてくれ…頼む…俺はもう皮肉は言わない…」
「遅いです」五十嵐龍之介が冷笑した。「効率的に恐怖を体験してください」
宍戸昴は恐怖症の発作を起こしながら、透明な箱に押し込まれた。
密閉され、高所に上がり、暗闇に包まれた瞬間、彼の絶叫がホール内に響いた。
「助けてくれえええええ!」
だが、24時間は容赦なく始まった。
その残酷な光景を見て、斑鳩凌は震えていた。
「俺が…俺がやろうとしていたのは…こんなことだったのか…」
「そうよ」鳴海瑠璃が冷たく答えた。「あなたもこれを望んでいたのよ」
「違う…俺は正義のためだと思っていた…」
「正義?」五十嵐龍之介が血まみれの指で新しい「ごめんなさい」を書きながら笑った。「そんなものは最初からありません。あるのは生存本能だけです」
午後1時、斑鳩凌の苦悩は深まっていた。
宍戸昴の絶叫が続く中、彼は自分の行為を振り返っていた。
「俺は何をしていたんだ…」彼が震え声で呟く。
「生き残ろうとしていただけよ」鳴海瑠璃が冷笑した。「みんな同じよ」
「でも…これじゃあ俺たちは人間じゃない…」
「人間?」五十嵐龍之介が冷酷に笑った。「俺はとっくに人間をやめました。#01も同じはずです」
「俺は…俺はまだ…」
「まだ人間でいたいの?」鳴海瑠璃が冷笑した。「それなら死ねばいいじゃない」
斑鳩凌は絶望的な表情を見せた。
人間でいたいが、死にたくもない。だが、人間らしくいれば死ぬしかない。
この矛盾した状況が、彼を完全に追い詰めていた。
俺は斂鳩凌の苦悩を見つめていた。
彼の葛藤は、俺自身の内面でもあった。
人間性を保ちたいが、生存のためには残酷になるしかない。
このジレンマが、参加者全員を蝕んでいる。
午後3時、ついに斑鳩凌が決断を迫られる時が来た。
機械音声が告げた。
「#01斑鳩凌、処刑級制裁への参加を拒否しています。即座に参加するか、囚人へ降格するか選択してください」
斑鳩凌の顔が真っ青になった。
「選択って…」
「簡単よ」鳴海瑠璃が冷笑した。「人間らしく死ぬか、怪物として生きるか」
五十嵐龍之介も血まみれの指で「ごめんなさい」を書きながら追い打ちをかけた。
「どちらにしても、あなたの人生は終わりです。人間としても、怪物としても、中途半端では生き残れません」
斑鳩凌は震えながら囚人たちを見回した。
彼らの目には、恨みと恐怖が宿っていた。もし自分が囚人に落ちれば、確実に最下位になるだろう。
「俺は…俺は…」
長い沈黙の後、斑鳩凌は震え声で言った。
「やる…俺もやる…」
配信のコメント欄が爆発した。
『#01屈服した』『生存本能の勝利』『人間性完全敗北』『これぞリアル』『課金しまくる』
斑鳩凌は絶望的な表情で立ち上がった。
「#04、雪村颯汰」
雪村颯汰が恐怖に震えながら見上げた。
「お前は元看守として、囚人の気持ちを理解している」斑鳩凌が震え声で続けた。「だからこそ、より深い絶望を味わってもらう」
「何をさせるつもりだ?」
「#14と同じ密閉装置に入れ」斑鳩凌が涙を流しながら命じた。「24時間、二人で恐怖を共有しろ」
雪村颯汰の顔が絶望に歪んだ。
「そんな…狭い密閉空間に二人で24時間…」
「やれ」斑鳩凌が自己嫌悪に顔を歪めながら叫んだ。「俺だって好きでやってるわけじゃない!」
雪村颯汰は絶望的な表情で密閉装置に向かった。
宍戸昴と二人、狭い密閉空間に押し込まれた。
両者の絶叫がホール内に響いた。
「助けてくれ!」
「もう無理だ!」
その残酷な光景を見て、斑鳩凌は完全に精神が破綻した。
「俺は…俺は一体何をしているんだ…」
彼は看守席で泣き崩れた。
五十嵐龍之介が冷酷に笑った。
「これで#01も完成ですね。人間をやめる過程が見られて面白かった」
「完成って…」
「あなたも俺と同じです」五十嵐龍之介が血まみれの指で新たな「ごめんなさい」を書きながら答えた。「人間をやめた怪物です」
夕方、機械音声が告げた。
「本日の『処刑級制裁』により、視聴者数が新記録の90万人に到達いたしました。看守の葛藤と屈服が高い評価を受けています」
俺は看守席から状況を見回した。
斑鳩凌は人間性を失い、完全に精神が破綻している。
五十嵐龍之介は人間をやめ、完全な怪物になっている。
鳴海瑠璃は最初から冷酷で、変化がない。
そして俺自身も、この状況に適応してしまっている。
密閉装置からは、宍戸昴と雪村颯汰の絶叫が続いている。
他の囚人たちは、更なる絶望に陥っていた。
「もう誰も助けてくれない…」葛城翼が精神破綻状態で呟く。
「看守も壊れた…」安堂圭吾が絶望的な表情を見せる。
「終わりだ…完全に終わりだ…」白鷺小夜が虚ろな目で天井を見つめる。
俺たちは確実に一線を越えた。
看守も囚人も、全員が人間性を失いつつある。
そして、その破綻を90万人の視聴者が楽しんでいる。
夜になると、ホール内は絶望に満ちていた。
密閉装置からは、まだ微かに絶叫が聞こえている。
斑鳩凌は看守席で呆然としている。
五十嵐龍之介は血まみれの指で「ごめんなさい」を書き続けている。
俺は看守席から配信画面を見つめた。
視聴者数90万人。
俺たちの完全な破綻が、これほどまでに多くの人々を魅了している。
そして明日も、この狂乱は続く。
より過激に、より残酷に、より非人道的に。
視聴者の欲望に応えるために。
俺たちは確実に、人間ではない何かになっていた。
辞めたいが、辞められない。
人間でいたいが、人間では生き残れない。
この矛盾した状況が、俺たち全員を怪物に変えていく。
配信は続き、明日はさらなる地獄が待っている。
俺たちの人間性が、完全に商品として消費される日まで。
ホール内に響く、五十嵐龍之介の血文字を書く音と、密閉装置からの絶叫だけが、静寂を破っていた。
「ごめんなさい」
「助けて…」
人間性の放棄と、人間らしい叫びが、同時に響いている。
これが、俺たちの現実だった。
ホール内は地獄そのものだった。葛城翼は完全に精神が破綻し、もはや何の反応も示さない。他の囚人たちも昨日の羞恥命令の恐怖で震え続けている。
床には血文字「ごめんなさい」、汚物、嘔吐物が混在し、空気は腐敗と絶望の臭いに満ちていた。
「もう無理…」白鷺小夜が感染症の高熱で幻覚を見ながら呟く。
「死にたい…楽にして…」安堂圭吾が脱水症状で意識朦朧としながら懇願する。
「生きてる意味がない…」宝生朱音が変形した顔面から血を滴らせながら天井を見つめる。
「終わらせて…お願い…」早乙女千景が腸閉塞の後遺症とTikTok処刑の恐怖で震えている。
4名の死を求める声が、ホール内に響いていた。
五十嵐龍之介は相変わらず血まみれの指で「ごめんなさい」と書き続けているが、その表情には完全な冷酷さがあった。
「人間をやめて正解だった」彼が独り言のように呟く。「こんなに楽になれるなんて」
午前9時、機械音声が響いた。
「視聴者数が80万人を突破いたしました。昨日の『羞恥命令特集』により、新規視聴者が大幅に増加しています」
モニターに視聴者数のグラフが表示される。急激な上昇カーブを描いていた。
「本日は視聴者からの強い要望により、『処刑級制裁』を実施いたします」
配信のコメント欄が狂乱していた。
『処刑級制裁ヤバすぎ』『もっと過激に』『看守の暴走見たい』『限界突破しろ』『課金準備完了』
斑鳩凌が興奮気味に立ち上がった。
「処刑級制裁!素晴らしい!これで完全に粛清できる!」
鳴海瑠璃も冷たく微笑んだ。
「視聴者の期待に応えなければね。より効果的な制裁を実行しましょう」
五十嵐龍之介が血まみれの指を舐めながら残酷に笑った。
「処刑しないで殺す方法ですか。面白いですね」
だが、その時、予想外のことが起こった。
斑鳩凌が突然、手を震わせ始めたのだ。
「俺は…俺はもうこれ以上は…」
全員が彼を見た。
あれほど過激な命令を主導していた斑鳩凌が、突然弱気を見せたのだ。
「どうした、#01?」俺が聞いた。
「もう限界だ…」斑鳩凌が震え声で答えた。「昨日の羞恥命令で#02が完全に壊れるのを見て…俺は一体何をしているんだ…」
「今更何を言ってるの?」鳴海瑠璃が冷笑した。「あなたが一番積極的だったじゃない」
「それは…それは看守でいるためには仕方なかったんだ…」斑鳩凌が苦悶の表情を見せた。「でも、もう無理だ。これ以上過激な命令は出せない」
五十嵐龍之介が冷酷に笑った。
「弱いですね、#01。人間らしさにこだわるからそうなる」
「お前に言われたくない!」斑鳩凌が激昂した。「お前は完全におかしくなってる!」
「おかしい?」五十嵐龍之介が血まみれの指で新たな「ごめんなさい」を書きながら答えた。「俺は正常だ。この状況に最適化されただけ」
その時、機械音声が冷酷に告げた。
「看守の皆様、本日の処刑級制裁を実行してください。拒否した場合、即座に囚人へ降格いたします」
斑鳩凌の顔が青ざめた。
「囚人への降格…それは…」
「処刑対象になるということよ」鳴海瑠璃が冷たく言った。「あなたも分かってるでしょう?」
斑鳩凌は震えながら囚人たちを見回した。
昨日まで自分が積極的に苦しめていた者たちの顔があった。もし自分が囚人に落ちれば、確実に報復を受けるだろう。
「でも…これ以上は…」
「やるしかないでしょう」鳴海瑠璃が冷笑した。「それとも死にたいの?」
配信のコメント欄が斑鳩凌の葛藤を楽しんでいた。
『#01の弱さ出た』『でも辞められないでしょ』『生存本能vs良心』『面白すぎる』
俺は斑鳩凌を見つめた。
彼の苦悩は理解できる。だが、この状況では良心は生存の妨げでしかない。
「#01」俺が声をかけた。
斑鳩凌が俺を見上げた。
「お前の気持ちは分かる。だが、ここで止まれば死ぬ」俺は冷静に続けた。「生きたいなら、続けるしかない」
「でも…人間として…」
「人間らしくいたければ死ねばいい」俺は冷酷に言い放った。「このゲームでは、人間性と生存は両立しない」
斑鳩凌は絶望的な表情を見せた。
その時、五十嵐龍之介が立ち上がった。
「俺が代わりにやりましょう」
「代わりに?」
「#01が躊躇するなら、俺が処刑級制裁を実行します」五十嵐龍之介が残酷な笑みを浮かべた。「人間をやめた俺には、躊躇はありません」
斑鳩凌は安堵と自己嫌悪の混じった表情を見せた。
「龍之介…すまない…」
「謝る必要はありません」五十嵐龍之介が血まみれの指で「ごめんなさい」を書きながら答えた。「これが効率的な役割分担です」
五十嵐龍之介は囚人たちを冷酷な目で見回した。
「処刑級制裁の対象は…#14、宍戸昴にしましょう」
宍戸昴の皮肉な笑みが消えた。
「俺を選ぶ理由は?」
「あなたの皮肉な態度が不快だからです」五十嵐龍之介が淡々と答えた。「それに、恐怖症が複数あるので、効率的に苦痛を与えられる」
「効率的って…」宍戸昴が青ざめた。
「密閉空間、高所、暗闇、すべての恐怖を同時に体験してもらいます」五十嵐龍之介が残酷に説明した。「そして、その状態で24時間放置します」
ホール中央に巨大な装置が上昇してきた。
密閉された透明な箱が、高い位置に設置され、内部は完全に暗闇になっている。
「24時間?」宍戸昴が恐怖に震えた。「そんなの…死ぬかもしれない…」
「死んでも構いません」五十嵐龍之介が冷酷に答えた。「処刑級制裁ですから」
配信のコメント欄が狂乱していた。
『24時間密閉とか鬼畜すぎ』『これもう処刑でしょ』『#08の冷酷さ完璧』『恐怖症利用えぐい』
宍戸昴は震えながら装置に向かった。
「やめてくれ…頼む…俺はもう皮肉は言わない…」
「遅いです」五十嵐龍之介が冷笑した。「効率的に恐怖を体験してください」
宍戸昴は恐怖症の発作を起こしながら、透明な箱に押し込まれた。
密閉され、高所に上がり、暗闇に包まれた瞬間、彼の絶叫がホール内に響いた。
「助けてくれえええええ!」
だが、24時間は容赦なく始まった。
その残酷な光景を見て、斑鳩凌は震えていた。
「俺が…俺がやろうとしていたのは…こんなことだったのか…」
「そうよ」鳴海瑠璃が冷たく答えた。「あなたもこれを望んでいたのよ」
「違う…俺は正義のためだと思っていた…」
「正義?」五十嵐龍之介が血まみれの指で新しい「ごめんなさい」を書きながら笑った。「そんなものは最初からありません。あるのは生存本能だけです」
午後1時、斑鳩凌の苦悩は深まっていた。
宍戸昴の絶叫が続く中、彼は自分の行為を振り返っていた。
「俺は何をしていたんだ…」彼が震え声で呟く。
「生き残ろうとしていただけよ」鳴海瑠璃が冷笑した。「みんな同じよ」
「でも…これじゃあ俺たちは人間じゃない…」
「人間?」五十嵐龍之介が冷酷に笑った。「俺はとっくに人間をやめました。#01も同じはずです」
「俺は…俺はまだ…」
「まだ人間でいたいの?」鳴海瑠璃が冷笑した。「それなら死ねばいいじゃない」
斑鳩凌は絶望的な表情を見せた。
人間でいたいが、死にたくもない。だが、人間らしくいれば死ぬしかない。
この矛盾した状況が、彼を完全に追い詰めていた。
俺は斂鳩凌の苦悩を見つめていた。
彼の葛藤は、俺自身の内面でもあった。
人間性を保ちたいが、生存のためには残酷になるしかない。
このジレンマが、参加者全員を蝕んでいる。
午後3時、ついに斑鳩凌が決断を迫られる時が来た。
機械音声が告げた。
「#01斑鳩凌、処刑級制裁への参加を拒否しています。即座に参加するか、囚人へ降格するか選択してください」
斑鳩凌の顔が真っ青になった。
「選択って…」
「簡単よ」鳴海瑠璃が冷笑した。「人間らしく死ぬか、怪物として生きるか」
五十嵐龍之介も血まみれの指で「ごめんなさい」を書きながら追い打ちをかけた。
「どちらにしても、あなたの人生は終わりです。人間としても、怪物としても、中途半端では生き残れません」
斑鳩凌は震えながら囚人たちを見回した。
彼らの目には、恨みと恐怖が宿っていた。もし自分が囚人に落ちれば、確実に最下位になるだろう。
「俺は…俺は…」
長い沈黙の後、斑鳩凌は震え声で言った。
「やる…俺もやる…」
配信のコメント欄が爆発した。
『#01屈服した』『生存本能の勝利』『人間性完全敗北』『これぞリアル』『課金しまくる』
斑鳩凌は絶望的な表情で立ち上がった。
「#04、雪村颯汰」
雪村颯汰が恐怖に震えながら見上げた。
「お前は元看守として、囚人の気持ちを理解している」斑鳩凌が震え声で続けた。「だからこそ、より深い絶望を味わってもらう」
「何をさせるつもりだ?」
「#14と同じ密閉装置に入れ」斑鳩凌が涙を流しながら命じた。「24時間、二人で恐怖を共有しろ」
雪村颯汰の顔が絶望に歪んだ。
「そんな…狭い密閉空間に二人で24時間…」
「やれ」斑鳩凌が自己嫌悪に顔を歪めながら叫んだ。「俺だって好きでやってるわけじゃない!」
雪村颯汰は絶望的な表情で密閉装置に向かった。
宍戸昴と二人、狭い密閉空間に押し込まれた。
両者の絶叫がホール内に響いた。
「助けてくれ!」
「もう無理だ!」
その残酷な光景を見て、斑鳩凌は完全に精神が破綻した。
「俺は…俺は一体何をしているんだ…」
彼は看守席で泣き崩れた。
五十嵐龍之介が冷酷に笑った。
「これで#01も完成ですね。人間をやめる過程が見られて面白かった」
「完成って…」
「あなたも俺と同じです」五十嵐龍之介が血まみれの指で新たな「ごめんなさい」を書きながら答えた。「人間をやめた怪物です」
夕方、機械音声が告げた。
「本日の『処刑級制裁』により、視聴者数が新記録の90万人に到達いたしました。看守の葛藤と屈服が高い評価を受けています」
俺は看守席から状況を見回した。
斑鳩凌は人間性を失い、完全に精神が破綻している。
五十嵐龍之介は人間をやめ、完全な怪物になっている。
鳴海瑠璃は最初から冷酷で、変化がない。
そして俺自身も、この状況に適応してしまっている。
密閉装置からは、宍戸昴と雪村颯汰の絶叫が続いている。
他の囚人たちは、更なる絶望に陥っていた。
「もう誰も助けてくれない…」葛城翼が精神破綻状態で呟く。
「看守も壊れた…」安堂圭吾が絶望的な表情を見せる。
「終わりだ…完全に終わりだ…」白鷺小夜が虚ろな目で天井を見つめる。
俺たちは確実に一線を越えた。
看守も囚人も、全員が人間性を失いつつある。
そして、その破綻を90万人の視聴者が楽しんでいる。
夜になると、ホール内は絶望に満ちていた。
密閉装置からは、まだ微かに絶叫が聞こえている。
斑鳩凌は看守席で呆然としている。
五十嵐龍之介は血まみれの指で「ごめんなさい」を書き続けている。
俺は看守席から配信画面を見つめた。
視聴者数90万人。
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そして明日も、この狂乱は続く。
より過激に、より残酷に、より非人道的に。
視聴者の欲望に応えるために。
俺たちは確実に、人間ではない何かになっていた。
辞めたいが、辞められない。
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この矛盾した状況が、俺たち全員を怪物に変えていく。
配信は続き、明日はさらなる地獄が待っている。
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ホール内に響く、五十嵐龍之介の血文字を書く音と、密閉装置からの絶叫だけが、静寂を破っていた。
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