ランキングデスゲーム〜辛くて拡散希望、生き残りたいです〜

みにぶた🐽

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第V部:視聴率の地獄

第25章「囚人たちの無抵抗」

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殺意解放デーから一夜が明けた。

ホール内には死の臭いが漂っていた。真鍋天馬と葛城翼の遺体は既に撤去されていたが、血痕と汚物の跡が至る所に残っている。


そして、囚人たちに異変が起きていた。

午前9時、いつものように命令の時間が始まろうとしていたが、囚人たちの様子が明らかに昨日とは違っていた。

早乙女千景は24時間ダンスを続けた結果、体力を完全に消耗し、もはや立つことすらままならない状態だった。

白鷺小夜は氷水で体温が危険なレベルまで下がり、唇が青ざめて震えが止まらない。

安堂圭吾は葛城翼の介護と友人の死で精神的に完全に破綻し、虚ろな目で天井を見つめているだけだった。

宝生朱音は変形した顔面から血を滴らせながら、「死にたい」と小さく呟き続けている。

宍戸昴と雪村颯汰は密閉装置から出されたが、深刻なPTSDで何も話せず、ただ震えているだけだった。

彼らの共通点は一つ。

**完全な無抵抗**。

もはや命令に反抗する気力も、恐怖を示す気力も、何かを感じる気力も失っていた。

俺は看守席から立ち上がった。

「#05、早乙女千景」

早乙女千景は反応しない。昨日まであった恐怖の表情も、懇願の言葉もない。ただ虚ろな目で俺を見つめているだけだった。

「聞こえないのか?」

やはり反応がない。

五十嵐龍之介が血まみれの指で「ごめんなさい」を書きながら冷笑した。

「完全に壊れましたね。人形と同じです」

斑鳩凌が困惑した表情を見せた。

「これでは…命令を出しても意味がない…」

鳴海瑠璃も苛立ちを隠せなかった。

「反応がなければ面白くないわ」

俺は他の囚人を見回した。

安堂圭吾、白鷺小夜、宝生朱音、宍戸昴、雪村颯汰。

全員が同じ状態だった。

完全な無抵抗。完全な無気力。完全な無感情。

彼らはもはや「生きている人形」でしかなかった。

機械音声が響いた。

「囚人の反応低下を確認いたします。視聴者からの苦情が急増しています」

モニターに視聴者のコメントが表示された。

『囚人つまらん』『反応しろよ』『面白くない』『看守どうする?』『このままじゃ飽きる』

配信の視聴者数は90万人と高水準を維持していたが、コメントの内容は明らかに不満に満ちていた。

斑鳩凌が焦りを見せた。

「これでは視聴者が離れてしまう…」

鳴海瑠璃も苛立ちを隠せなかった。

「何か面白いことをしなければ…」

五十嵐龍之介だけが冷静だった。

「人形になった囚人も、それはそれで興味深いですね」

俺は状況を分析していた。

囚人たちが完全に無抵抗になったことで、視聴者の関心は看守の行動に移りつつある。

命令に対する反応がなければ、確かに娯楽性は大きく損なわれる。

だが、これは予想できた結果でもあった。

人間の精神には限界がある。そして囚人たちは、その限界を超えてしまったのだ。

「#09、白鷺小夜」

俺は再度命令を試みた。

「立ち上がれ」

白鷺小夜は微かに俺を見たが、立ち上がろうとはしなかった。立ち上がる気力がないのか、理解する能力がないのか、判然としない。

配信のコメント欄が不満で溢れていた。

『全然動かない』『これじゃあ人形遊び』『看守が無能すぎ』『もっと過激にしろ』『つまんない』

斑鳩凌が立ち上がった。

「#11、安堂圭吾!立ち上がれ!」

安堂圭吾は虚ろな目で斑鳩凌を見たが、やはり動かない。

「立て!」斑鳩凌が怒鳴った。「命令だ!」

だが、安堂圭吾は微動だにしなかった。

五十嵐龍之介が興味深そうに観察していた。

「完全に精神が破綻していますね。命令を理解する能力すら失っています」

鳴海瑠璃が苛立ちを爆発させた。

「これじゃあゲームにならないじゃない!」

彼女は早乙女千景に近づき、頬を叩いた。

「起きなさい!」

早乙女千景の頬が赤くなったが、それでも反応は薄い。痛みを感じているのかどうかも分からない。

午前11時、機械音声が再度響いた。

「視聴者からの苦情がさらに増加しています。『囚人が面白くない』『看守の対応が悪い』『つまらない』などの意見が大多数を占めています」

モニターに視聴者数が表示された。

90万人から85万人に減少していた。

斑鳩凌の顔が青ざめた。

「視聴者が離れている…」

「このままでは俺たちの人気も下がる」鳴海瑠璃が焦りを見せた。

「人気が下がれば、看守から転落する可能性もある」

その恐怖が、看守たちを更なる焦燥に駆り立てた。

五十嵐龍之介が血まみれの指で新たな「ごめんなさい」を書きながら提案した。

「より過激な方法を試してみましょう」

彼は宝生朱音に近づいた。

「#06、宝生朱音。反応しないなら、物理的に刺激を与えます」

五十嵐龍之介は自分の血まみれの指で、宝生朱音の変形した顔を撫でた。

「痛みで反応を引き出しましょう」

だが、宝生朱音は「死にたい」と小さく呟くだけで、それ以上の反応を示さなかった。

配信のコメント欄が更に不満を募らせていた。

『何やっても反応しない』『これじゃあ見る意味がない』『看守が無能』『もっと面白いことしろ』

視聴者数は80万人まで減少していた。

斑鳩凌が完全にパニックになった。

「どうすればいいんだ!彼らはもう何も感じない!」

「感じないなら、感じるまでやるしかないでしょう」鳴海瑠璃が冷酷に答えた。

俺は看守席から囚人たちを見下ろした。

彼らの目には、もはや生命の光がなかった。

恐怖も、怒りも、悲しみも、希望も、すべてを失った空虚な目。

これが、俺たちが作り出した結果だった。

人間を完全に破壊することには成功した。だが、破壊しすぎて、もはや娯楽としての価値も失ってしまった。

午後1時、機械音声が告げた。

「視聴者数が70万人まで減少しました。緊急事態です」

「緊急企画『囚人覚醒プログラム』を実施いたします」

モニターに新しい企画の詳細が表示された。

『囚人覚醒プログラム』
『精神破綻した囚人を強制的に覚醒させる特別処置』
『電気ショック、薬物投与、強制刺激により反応を復活させる』
『失敗した場合、該当囚人は即処刑』

斑鳩凌が安堵の表情を見せた。

「これで囚人たちが元に戻る…」

だが、俺は疑問に思った。

一度完全に破綻した精神が、本当に元に戻るのだろうか。

そして、仮に戻ったとしても、それは本当に「人間」なのだろうか。

「囚人覚醒プログラムを開始いたします」機械音声が告げた。

ホール中央に巨大な医療装置が上昇してきた。

電気ショック装置、薬物注入装置、そして様々な刺激装置が取り付けられている。

「最初の対象者を選定してください」

斑鳩凌が早乙女千景を指差した。

「#05、早乙女千景から始めよう」

機械のアームが早乙女千景を捕獲し、覚醒装置へと運んでいく。

彼女は抵抗もしなければ、恐怖も示さない。まるで物のように運ばれていく。

「覚醒プログラムを開始いたします」

装置が作動し、早乙女千景の体に電気ショックが流れた。

「うああああああ!」

突然、彼女の絶叫がホール内に響いた。

電気ショックにより、一時的に意識が覚醒したのだ。

「痛い!やめて!お願い!」

久しぶりに聞く、人間らしい反応だった。

配信のコメント欄が興奮していた。

『反応した!』『やっと人間らしくなった』『これぞエンタメ』『覚醒プログラム効果あり』

視聴者数が75万人に回復した。

斑鳩凌が喜びを隠せなかった。

「効果がある!他の囚人も覚醒させよう!」

次々と囚人たちが覚醒装置に運ばれていく。

安堂圭吾、白鷺小夜、宝生朱音、宍戸昴、雪村颯汰。

全員が電気ショックにより、一時的に意識を覚醒させられた。

「助けてくれ!」

「痛い!死ぬ!」

「やめてくれ!お願いだ!」

ホール内に久しぶりに人間らしい叫び声が響いた。

だが、俺はその光景を見て、深い不安を感じていた。

これは本当に「覚醒」なのだろうか。

それとも、単なる「刺激に対する反射」でしかないのだろうか。

薬物と電気ショックにより無理やり引き出された反応が、果たして本物の人間性なのだろうか。

夕方になると、覚醒プログラムの効果は薄れ始めた。

囚人たちは再び虚ろな目に戻りつつあった。

「効果が持続しません」機械音声が報告した。

「継続的な刺激が必要です」

鳴海瑠璃が提案した。

「それなら定期的に覚醒プログラムを実行すればいいわ」

五十嵐龍之介が血まみれの指で「ごめんなさい」を書きながら同意した。

「効率的ですね。必要な時に人間性を復活させる」

斑鳩凌も頷いた。

「これで視聴者も満足する」

だが、俺は複雑な心境だった。

人間性を「オン・オフ」できるスイッチのように扱う。

これは果たして人間の尊厳を守ることなのだろうか。

それとも、最終的な侮辱なのだろうか。

午後8時、定期投票の時間が来た。

『第25回人気投票結果』

モニターに結果が表示される。

『1位:#07 緋村陸翔 14,567票』
『2位:#08 五十嵐龍之介 13,234票』
『3位:#10 鳴海瑠璃 9,876票』
『4位:#01 斑鳩凌 7,543票』

俺は相変わらず1位だった。五十嵐龍之介の冷酷さが視聴者に支持され続けている。

『5位:#04 雪村颯汰 3,456票』
『6位:#14 宍戸昴 2,987票』
『7位:#11 安堂圭吾 2,234票』
『8位:#06 宝生朱音 1,789票』
『9位:#09 白鷺小夜 1,456票』

そして最下位。

『10位:#05 早乙女千景 892票』

覚醒プログラムの最初の対象となった早乙女千景が最下位になった。

彼女は覚醒装置の影響で意識朦朧としており、投票結果を理解できているかどうかも分からなかった。

機械音声が冷酷に告げた。

「最下位、#05早乙女千景の処刑を執行いたします。覚醒プログラム対象者用の特別処刑を実施いたします」

ホール中央に、これまでで最も複雑な処刑台が上昇してきた。

覚醒プログラムの装置と処刑装置が組み合わされた、恐ろしい器具だった。

「処刑中に覚醒と麻痺を繰り返し、最大限の恐怖と苦痛を体験していただきます」

早乙女千景は虚ろな目で処刑台を見つめていた。

もはや恐怖も絶望も感じていない。

だが、処刑が始まると、覚醒装置により強制的に意識を回復させられた。

「え?ここは…私は…処刑?」

突然、状況を理解した早乙女千景の顔が恐怖に歪んだ。

「やめて!死にたくない!助けて!」

その瞬間、処刑装置が作動した。

だが、苦痛がピークに達すると、再び意識を麻痺させる。

そして、再度覚醒させて恐怖を味わわせる。

この繰り返しが15分間続いた。

配信のコメント欄が狂乱していた。

『覚醒処刑えぐすぎ』『恐怖のオンオフ処刑』『これぞ真のエンタメ』『最高の発明』『課金しまくる』

視聴者数は85万人まで回復していた。

処刑が終わると、ホール内は再び静寂に包まれた。

残り参加者は9名。

看守4名と囚人5名。

そして、生き残った囚人たちは、早乙女千景の処刑を見て、再び完全な無抵抗状態に戻った。

覚醒プログラムの効果も、恐怖により相殺されてしまった。

俺は看守席から状況を見回した。

俺たちは新たな段階に入った。

人間性を自在に操作し、恐怖と苦痛を最大化する技術を手に入れた。

だが、それは本当に「勝利」なのだろうか。

それとも、人間としての最終的な「敗北」なのだろうか。

夜になると、ホール内は死と絶望の臭いに満ちていた。

囚人たちは再び人形のような状態に戻り、看守たちは次の覚醒プログラムを計画している。

五十嵐龍之介だけが、血まみれの指で「ごめんなさい」を書き続けていた。

「人間をやめて正解でした」彼が独り言のように呟く。「これが真の自由です」

俺は配信画面を見つめた。

視聴者数85万人。

俺たちの完全な堕落が、これほどまでに多くの人々を魅了している。

そして明日も、この狂乱は続く。

より巧妙に、より残酷に、より非人道的に。

視聴者の欲望に応えるために。

囚人たちの無抵抗は、新たな娯楽の形を生み出した。

そして俺たちは、その娯楽の創造者として、更なる地獄を設計していく。

配信は続き、明日はさらなる技術革新が待っている。

俺たちの人間性が、完全に商品として消費される日まで。

ホール内に響く、五十嵐龍之介の血文字を書く音だけが、静寂を破っていた。

「ごめんなさい」

その文字は、もはや謝罪ではなく、人間性を放棄した者の勝利宣言になっていた。
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