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第三十二話
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「いや、お二人はなにをなさるつもりなのですか......」
恐る恐るセレネが聞いてきた。
「えっ? 王をしばけばいいんだろ?」
「うむ、それがてっとりばやいな」
「だめですよ! なんで暴力ありきなんですか!」
セレネがあわてて止める。
「でも俺たち、暴力しかないし、なあ」
「うむ、ない」
ディンがうなづく。
「暴力しかないですか!? いえ、もうかまわないのでこの国をでましょう!」
「本当にこのままでいいのか?」
「それは...... でも暴力でなんとかできるとは思いません。 モンスターではないのですから」
「ふむ、力なしか...... それでそのアブリオとは、どのようなブ男なのだ」
ディンがそうきく。
「なんでブ男と決めつけてるのですか...... 病に伏せている前王をアベル王子が王の殺害の嫌疑で投獄されたことで、親族のアブリオが王となってから重税をかすようになり、散財をするようになったとのことです」
セレネが困った顔でそういう。
「バカ王か...... どうするサキミ?」
「アベルはなんで王を殺害しようとしたんだ?」
「王になるためといわれています......」
そう考えるようにセレネはいった。
「言われているってことは、確定ではないのか」
「もはや病に伏せた王をわざわざ殺害しようとするか...... そういう話がありましたが、貴族たちがアブリオに味方したために、考慮されず王子は投獄されました」
「貴族はアブリオについてるってことか」
「......はい、貴族たちはアブリオが王となったことで、その恩恵を受けるのです。 アベル王子は元々庶民の人気が高く。 貴族の特権を次々剥奪してきました。 貴族の商業、貿易の独占禁止を進めていましたから」
「ふむ、それで王子を排除したか」
ディンがいうとセレネの顔がくもる。
「それは...... ですが証拠もなく、貴族はアブリオ王の味方、これではなんの手だてもありません。 王子は殺されこそしてませんが、あの屋敷で軟禁状態だそうです」
セレネは遠くにある小さな屋敷を指差した。
「なるほど、確かに厳しいな...... とはいえ何とかしないとな。 なあセレネ、民はアベル王子の支持なんだろ。 貴族たちを打倒しようとしないのか」
「......そうですね。 ですが前王など優しい王もいたため、反抗する気にはならないのでしょう。 騎士団に縛られる私のように......」
そうセレネが悲しげにつぶやく。
「ふむ、ならディン少し頼めるか」
「なにか思い付いたか、わかった、いってみろ」
ディンに頼みごとをした。
「ディンさんがまたでかけていきましたが?」
「ああ、問題ない。 だがセレネの方は大丈夫だったか」
次の日の昼、俺たちは城の見える道を歩いていた。
「ええ、騎士団のものたちに話をして謁見の許可をえてもらいました」
「よく、聞いてくれたな」
「元々私の父は騎士団長だったので、その関係があるのです」
「そんな人間よく追放できたな。 不満もすごいだろ」
「そう声があがりましたが、皆には私から抑えるようにいいました。 内乱などしては民をモンスターから守ることはできませんから」
「なるほど、民のためか......」
「騎士とは民を守るものです。 ですがもはや守ることも叶いません...... それより、王にあってどうされるのですか、まさか......」
セレネは疑いの眼差しを向けてきた。
「斬ったりしないよ。 それですむなら斬ってもいいけど」
「だめですよ!」
「ああ、それだと単に反逆者になるし、兵士たちも全員やらなきゃならんしな」
「いやそういうことではなくて! 道義的にですよ。 アブリオ王とて王になったのはそれだけの責任を考えたはずです。 王という職責を背負ったのですから」
「責任ね...... だが道義もこっちだけ守ってもしかたないぞ。 相手が守ってくれるとは限らんからな。 なにを優先すべきかは考えた方がいい」
「なにを優先ですか...... それでなにをされるおつもりですか?」
「ディンから、ある情報をえたから王に教えてやるのさ」
「情報? 昨日ディンさんは一度どこかにいかれましたよね。 そのときですか? それでまた今日どこかに......」
そんな話をしながら俺たちは城にはいる。
城では貴族たちが宴を開いていた。 それを兵士たちが眉を潜めてみている。
「連日のように宴を開いているようです......」
「そりゃ、反感もかうわな。 自分達だけ豪勢な暮らしならな」
前に進むとテーブルの奥に、女をはべらせて痩せた長身の男がグラスを傾けていた。
「あれがアブリオ王です」
その前にすすみでる。
「ふん、セレネではないか、騎士団でもなくなったお前がなんのようだ。 かつての勇者の末裔ゆえ話をきいてやる。 しかし説教ならばきく気はないぞ」
そうアブリオは横柄な態度で答えた。
「ありがたき、お言葉。 今日は王に会いたいと申すものがいたゆえにつれて参りました」
「会いたいものだと? 貴様かなんのようだ」
アブリオは横になりながら、めんどくさそうに目をこちらに向けた。
「はいアホ...... いえアブリオ王、自分はサキミともうします。 冒険者なのですが、この近くに巨大なモンスターが現れたとの情報がはいってきています。 その事をお伝えに参ったのです」
そういって冒険者カードを見せた。
「なんだと!? モンスターだと!」
「ほんとうですか!!」
セレネが驚き、アブリオは立ち上がりグラスから酒をこぼした。
恐る恐るセレネが聞いてきた。
「えっ? 王をしばけばいいんだろ?」
「うむ、それがてっとりばやいな」
「だめですよ! なんで暴力ありきなんですか!」
セレネがあわてて止める。
「でも俺たち、暴力しかないし、なあ」
「うむ、ない」
ディンがうなづく。
「暴力しかないですか!? いえ、もうかまわないのでこの国をでましょう!」
「本当にこのままでいいのか?」
「それは...... でも暴力でなんとかできるとは思いません。 モンスターではないのですから」
「ふむ、力なしか...... それでそのアブリオとは、どのようなブ男なのだ」
ディンがそうきく。
「なんでブ男と決めつけてるのですか...... 病に伏せている前王をアベル王子が王の殺害の嫌疑で投獄されたことで、親族のアブリオが王となってから重税をかすようになり、散財をするようになったとのことです」
セレネが困った顔でそういう。
「バカ王か...... どうするサキミ?」
「アベルはなんで王を殺害しようとしたんだ?」
「王になるためといわれています......」
そう考えるようにセレネはいった。
「言われているってことは、確定ではないのか」
「もはや病に伏せた王をわざわざ殺害しようとするか...... そういう話がありましたが、貴族たちがアブリオに味方したために、考慮されず王子は投獄されました」
「貴族はアブリオについてるってことか」
「......はい、貴族たちはアブリオが王となったことで、その恩恵を受けるのです。 アベル王子は元々庶民の人気が高く。 貴族の特権を次々剥奪してきました。 貴族の商業、貿易の独占禁止を進めていましたから」
「ふむ、それで王子を排除したか」
ディンがいうとセレネの顔がくもる。
「それは...... ですが証拠もなく、貴族はアブリオ王の味方、これではなんの手だてもありません。 王子は殺されこそしてませんが、あの屋敷で軟禁状態だそうです」
セレネは遠くにある小さな屋敷を指差した。
「なるほど、確かに厳しいな...... とはいえ何とかしないとな。 なあセレネ、民はアベル王子の支持なんだろ。 貴族たちを打倒しようとしないのか」
「......そうですね。 ですが前王など優しい王もいたため、反抗する気にはならないのでしょう。 騎士団に縛られる私のように......」
そうセレネが悲しげにつぶやく。
「ふむ、ならディン少し頼めるか」
「なにか思い付いたか、わかった、いってみろ」
ディンに頼みごとをした。
「ディンさんがまたでかけていきましたが?」
「ああ、問題ない。 だがセレネの方は大丈夫だったか」
次の日の昼、俺たちは城の見える道を歩いていた。
「ええ、騎士団のものたちに話をして謁見の許可をえてもらいました」
「よく、聞いてくれたな」
「元々私の父は騎士団長だったので、その関係があるのです」
「そんな人間よく追放できたな。 不満もすごいだろ」
「そう声があがりましたが、皆には私から抑えるようにいいました。 内乱などしては民をモンスターから守ることはできませんから」
「なるほど、民のためか......」
「騎士とは民を守るものです。 ですがもはや守ることも叶いません...... それより、王にあってどうされるのですか、まさか......」
セレネは疑いの眼差しを向けてきた。
「斬ったりしないよ。 それですむなら斬ってもいいけど」
「だめですよ!」
「ああ、それだと単に反逆者になるし、兵士たちも全員やらなきゃならんしな」
「いやそういうことではなくて! 道義的にですよ。 アブリオ王とて王になったのはそれだけの責任を考えたはずです。 王という職責を背負ったのですから」
「責任ね...... だが道義もこっちだけ守ってもしかたないぞ。 相手が守ってくれるとは限らんからな。 なにを優先すべきかは考えた方がいい」
「なにを優先ですか...... それでなにをされるおつもりですか?」
「ディンから、ある情報をえたから王に教えてやるのさ」
「情報? 昨日ディンさんは一度どこかにいかれましたよね。 そのときですか? それでまた今日どこかに......」
そんな話をしながら俺たちは城にはいる。
城では貴族たちが宴を開いていた。 それを兵士たちが眉を潜めてみている。
「連日のように宴を開いているようです......」
「そりゃ、反感もかうわな。 自分達だけ豪勢な暮らしならな」
前に進むとテーブルの奥に、女をはべらせて痩せた長身の男がグラスを傾けていた。
「あれがアブリオ王です」
その前にすすみでる。
「ふん、セレネではないか、騎士団でもなくなったお前がなんのようだ。 かつての勇者の末裔ゆえ話をきいてやる。 しかし説教ならばきく気はないぞ」
そうアブリオは横柄な態度で答えた。
「ありがたき、お言葉。 今日は王に会いたいと申すものがいたゆえにつれて参りました」
「会いたいものだと? 貴様かなんのようだ」
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「はいアホ...... いえアブリオ王、自分はサキミともうします。 冒険者なのですが、この近くに巨大なモンスターが現れたとの情報がはいってきています。 その事をお伝えに参ったのです」
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