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第六十三話

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「なるほど、それでヤルジェを、禁足地としてたのか」

 王に客間へと俺たちは招かれていた。 アドシュエル王から話があると聞かされたからだ

「ええ、あそこにはアマルセウスさまが封印した何かがあるときいております。 ですが封印されているため何者も近づけません」

 そうアドシュエルがこたえる。

「いくしかないな」

 そのとき、兵士たちが血相を変えて入ってきた。

「報告! 暗黒大陸より、多数のモンスターが現れております!」

「なに多数だと!? 迎撃は可能か!」

 アドシュエルは兵士にとう。

「それが、ジャイアント、アラクネ、デュラハンとても迎撃できるものではありません......」

「だけど、アマルセウスの結界がある...... まだ壊れるまで時間が稼げる」

 珍しく真剣な顔のライゼがそういった。

「ここはわたしたちに任せて、サキミとディンは塔へ!」

 ネメイオがそういうと、皆がうなづいた。

「いくぞ!」

「ああ」

「では私が!」
 
 ティンクルがそういって、俺たちはすぐにとんだ。
 

「あった!」

 ティンクルの背中にのり王国北にあった小さな塔へと降り立つ。

「ここか...... 結界が破られたら、モンスターたちにこの大陸が蹂躙されるぞ」

「ああ、急ごう!」

 ディンはうなづいた。

 塔には大きな扉があり、鍵穴もなにもなく開けられない。

「ならこいつか」

「だろうな」

 ヴォルディオンに魔力をこめ切り裂く。

 すると空間に歪みが生じ扉があいた。 中にはいると一振りの剣が台座に刺さっている。

「これ...... 剣」

「ああ、剣だ......」

「............」

「............」

 しばし沈黙がつづいた。

「もー、もーだめだ!! 剣なんかでこの状況でなんもできない!!」

「最悪だーー!! これじゃ皆死んでしまうーー!! 皆で異世界に飛べぬかな! 飛べぬかな!!」

 俺とディンさ涙目で取り乱した。

「二人とも落ち着いて! アマルセウスさまが普通の剣を切り札にするわけがありません!」

 ティンクルがそういった。

「た、確かにその剣になにかがあるのかも!?」

「だが、剣にどのような力があろうと、あのモンスターの軍勢をなんとかできるとは...... もしや抜くことでなにかが起こるのか」

「とりあえず、ディンが手にとれ!」

「わ、わかった」

 ディンは台座に刺さる剣を引き抜く。 スポンと簡単に抜けた。

「............」

「............」

 なにも起きなかった。

「なにもおきない...... 終わった」

「人生、世界も終了......」

 俺たちは膝から崩れた。

「二人とも諦めないで! ライゼプトさまならなにかわかるかも!」

 ティンクルがそういった。

「そうだライゼにきこう!」

「ああ、あやつならばなにかわかるやもしれん!」

 俺たちは万が一の希望を抱いてかえる。


「それでライゼどうだ......」 
 
 剣をライゼにわたし、固唾をのんでみまもる。

「うーん、なんか力はあるけど、なんなのかはわからない...... 魔力とは違う」

 ライゼがそういって横になった。

「あーもう、だめだ!! だめだ! もう!」

「終わったーー! 余たちは終わってしまった!!」

 俺とディンはパニクってる。

「落ち着いてくだされ! サキミどの、ディンさま。 他の方々は対策をとるため奔走しておりますゆえ」

 アドシュエルが困惑したようにそういう。

「我らも今軍勢を結界後ろに配置し、破られたときの対策はしております」

 そしてそう続けた。

「やるしかないか......」

「ああ、もう腹をくくろう!」
  
 覚悟を決め、結界が破られたときのために対策を始める。


「魔法部隊にはその旨通達、そして被害が考えられる地域から退避を完了しております」

 アドシュエルがそう報告にきた。

「一応用意はした。 あとはもうなるようにしかならん!」

「報告! ルクルーラから巨大なモンスターが多数出現!」

 兵士がそう報告にきた。

「きたか......」

「報告!! ベルン大陸より飛行船及び、戦艦多数接近!」

「なっ!!? まさか人間たちか!」

 アドシュエルが困惑する。

「嘘だろ! この時点で攻めてきたのか! ディン俺の最後の願いでなんとかならんか!」

「無理だな...... どう願っていいかわからない。 漠然とした願いはきけん。 ......まずいな、かつてのようにもし挟撃されるとモンスターに蹂躙される。 何とか人間側を説得せねば......」

 ディンが不安な顔を見せた。

「いや、その心配はなさそうだ」

 俺は空をみる。
  
「ん?」

「ねーさま!!」

 ティンクルがミーナたちをのせてきた。

「私が人間の王たちを説得し話を通してきました! 各国が兵を送ってくれております!」

 ミーナがそういった。
 
「オーガちゃんもつれてきた。 グラナードもきてる」

 ライゼがそういう。

「どうやら俺たちだけじゃなかったようだな」

「うむ! これならなんとかなるやもしれん!」

 ディンが嬉しそうにそういった。 その目には涙がひかる。

「よし! なら彼らにもあれらの予備のアイテムを!」

 アドシュエルはそういって指示した。

「やるぞディン!」

「うむサキミ!」

 迎え撃つ覚悟がきまった。
 
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