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第24話 人工霊獣① 探知

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「封印の場所がわからないなら、守りようがないぜ、霊力感知で見つけられないのか神無」


 僕に灰がいう。


「私も霊力探知をおこなっていたけど異変は感じなかった。 多分霊力の低い者を操作して、破壊しているのでしょうね。 あと霊獣は自分を物体と霊体へと変換出来る、だから探知できないのかもしれないわ。 見つけるのは難しいわね」  


 よみさんはそう言った。


「この街もかなり広い、散って守るのは無理か......」


「ちょっと待って、その小さな女の子は式神ね」


「わらわは、かの陰陽師、安倍晴明様が作りし式神十二天が一天、吉将、貴人であるぞ」 


 よみさんの問いに貴人は胸を張って言う。


「安倍晴明の......他の式神もいるの」


「うむ、あと吉将はここに五体おる」


 そういって五枚の符を見せた。 よみさんは考え込むと、


「その式神達に力を借りましょう。 いいかしら」


 よみさんが貴人に聞くと、


「うむよかろう! なあ、お主達」


 符がそれぞれ、


「かまわぬ」


「よいですのよ」


「御意」


「心得ました」


「かまいません」
 

 と答えた。


「それならば、皆姿を見せるがよい」


 貴人がそう言うと、符が光輝き、天后、六合、青龍、大陰、太裳の五体の小さな式神が現れた。


「わたくしは、天后《てんごう》です。お見知りおきを」


「六合《りくごう》と申す」


「我は青龍《せいりゅう》」


「大陰《たいいん》ですわ」


「太裳《たいじょう》でございます」


「こんなちっこい式神を、どう使うんだよ、よみさん」


 そう言った灰を式神達が囲って叩き始めた。


「痛い痛い! わかった! 悪かったって!」


「それでこの式神達にどうして貰うんですか?」


 雅がよみさんに聞くと、   


「彼ら式神は霊獣を模して作られた存在、人工霊獣にも共通する霊力の波長を持っているの。 もし人工霊獣がいれば 彼らは感知できるはず」


「なるほど、我らの力を合わせて探知すれば人工霊獣がいる場所がわかると言う訳じゃな、じゃがかなりの霊力を要するぞ......恐らく神無ぐらいの霊力が......」

 
 貴人が言うと、


「私と麟を合わせればそのぐらいは出せるわ」


 よみさんは言うと、


「また、私、留守番なのか」


 不満そうに麟がいった。


 そして二人が霊力を空中で輪になった式神達に注ぐと、霊力の輪が波紋のように拡がって行く。


「霊獣の特殊な霊力を感じるわ、しかも四体......場所は、黒土山《くろつちやま》、香北洞《かほくどう》、阿衣川《あいがわ》、そして、狭間の森の四ヶ所よ。 やはり水瀞 漿が関わっているようね......」


 よみさんにそう言われて僕達は、この事を学園に伝え、それぞれの場所に行くことにした。 


 僕は貴人と狭間の森に向かう。


「太裳と六合はここに残り私達と他の式神への連絡、他の式神は皆に付いていってあげて」


 よみさんがそう言うと、式神達は頷いた。


「貴人頼むよ」


「わらわに任せよ」


 貴人はそう言うと僕の肩に乗った。


 僕は狭間の森に着くと、貴人の導きで人工霊獣を探す。 すると、森の奥で一人虚ろな目をして微弱な霊力を放つ人間がいた。


「あれじゃ! あの者の後ろを見てみよ!」


 貴人に言われてそちらを見ると、少し離れた所に霊力を感じない別の
女性がいる。


「あれは? 人」


「違う! あれが人工霊獣じゃ! あやつが人間を操っておる!」


 そう言われた女性はこちらに気づくと、近づく僕らに、


「何故だ......我らの霊力は感じられぬはずなのに......」


「言葉が」


「どうやら自我があるようじゃな」


「一体封印を破って何を甦らせようとしている!」


「封印のことも、どうやら気づかれてしまったようですね......」


 僕の問いに女の体は変化していき、白い大タコになって、触腕を伸ばしてくる。 


 霊刃で斬るも柔らかい触腕は斬れず、かわすしかなかった。 霊玉を撃ったが柔らかな体に弾かれてしまう。 その瞬間墨を吐き周囲がみえなくなる、そして上から鋭く触腕が振り下ろされる。 


 ドガン! 


 何とかかわすも、地面に穴が空く、更に何本もの触腕が左右に振られ、霊球ごと吹き飛ばされた。


(くっ! 固さを変えながら攻撃してくる上! 柔らかくなると攻撃が弾かれる! 動きを止めないと......)


 僕は霊咆を撃ち出した。 


「無駄よ! どんな威力だろうが、弾けばいいだけ」


 霊咆はタコの体に当たる直前爆発し、液化した霊力がタコに降り注ぐ、


「何!? これは!」


 その瞬間、僕は霊力を固めた。 動けなくなったタコの腕を霊刃ですべて切り落とした。


「ぐっ!」


「一体、水瀞 漿は何をしようとしているんだ」


 僕がタコに聞くと、


「あの方は我らの王になるのですよ......」


 とだけいった。




「ここですか、天后様」


「ええ、そうですわ、この先に人工霊獣の霊力を感じるのですわ」


 私は天后様と香北洞に入っていた。 中は暗くじめじめ湿っていた。 奥まで行くと、霊力を放つ女性が見え、その後ろに大きな体の人物が見えた。


「あれですわ! あの後ろのあれが人工霊獣ですわ!」


 雅は術式を唱えた。


「土木水、夢幻!」


 大きな体の者を球体の中に閉じ込めると、気絶した女性を介抱した。


「だめですわ......もう封印が解かれていますわ」
 

 天后がそう言った時、


 ゴゴゴゴ!!


 夢幻の球体が揺れ始めた。 


 バリン!


 割れると、中から巨大クラゲが現れた。 


「私の夢幻が!」


「我ににこのような封印など効きはしない」


 そうクラゲがいうと、触手を高速で伸ばしてきた。 雅はギリギリでかわすが触手が光り体が痺れた。 


「これは!? 電気!」


 何本もの触手が ビリビリと音を鳴らしながら雅に伸びてくる。


(封印が解けた今、ここで長居はできませんね)


 雅は術式を唱えた。


「土水金行、絶霊境《ぜつれいきょう》」


 雅は球体をクラゲに撃ちだした。


「我にそんな封印術など効かんと言った! 電撃で感電するがいい!」


 球体が触手に当たると、その部分が無くなった。


「なっ! 何だ!」


「それは封印ではありません、触れたものの霊力を奪い取る結界術」


 雅は触手を全部切り取って動けなくした。


「神無様はどこに?」


 雅は倒れた女性を安全な場所まで運ぶと走り出した。

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