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第23話 十二天将⑥ その後

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 その後、酒呑童子の体は虎堂先生達が再度封印し、陰陽学園に移すのだという。 僕達は学園に戻るその帰りの電車で、僕は雅に聞いた。


「金形代君は?」


「妹さんを安全な場所に移すといって起きるまで側にいるそうです」


 雅がそう言うと、


「あの野郎いきなり殴りやがって」


 灰が首をさすっている。


「まあ、妹さんを人質にとられてたから仕方ないよ」


「わかってるよ、あいつまた強くなってやがった......かえったら修行だ」


 そう灰が言う。


「そうだな、灰は弱いからな」


 麟は京都で買った山盛りの和菓子を両手で、むしゃむしゃ食べながら言った。


「うるせえ! ていうか、お前どんだけ食べるんだよ」


「わたしは今回霊力を大量に使ったからな、食べて回復しないといけないんだ」


「ほんとかよ......」


「まあ、霊獣や式神は食べ物からでも霊力は回復できるでな」 


 そう言って麟の隣で和菓子にかぶりついてた貴人が言う。


「貴人、酒呑童子の魂を封じてるんでしょ、いいの一緒に来て」


 僕が聞くと、


「平安の世から、魂の封印を担ってきたからの、霊力も減っておる。 じゃから我らの存在もばれたのじゃ、今一度霊力を補充する間、陰陽師達に封印してもらうことにしたのじゃ、ホレ他の吉将はここにおる」


 と、五枚の天将符をヒラヒラさせている。


「それに、わらわは神無が気に入ったゆえ、ついていくことにしたのじゃ」
 

 ふよふよと浮きながら僕の肩に乗ってきた。


「また......新しい女の子が......」


 雅が怖い顔をして何か呟いた。


 帰ると、水瀞理事長に呼ばれて、理事長室に僕達は向かった。 理事長は人の良さそうな笑みを浮かべ、


「よく、酒呑童子の復活を阻止してくれたのう。 ワシからも感謝するありがとう」


 そう頭を下げた。


「いえ、別に、僕達がしたかったからですし」


「でじゃ......少し気になる件があっての、すまぬがお主達、調べてはもらえぬか」


「待ってください! 神無様はお疲れなのです! いきなりそんなことは受けられません」


 雅が断ると、


「我らもお主にばかり頼むのは心苦しいのじゃが、今は人手不足、先生達は酒呑童子の後始末、ほとんどの生徒は民間の依頼、最早中等部、初等部の生徒を使わねばならなくなる......」


 水瀞理事長はコホコホと咳をした。


「わかりました。 僕が調べてきます」


「そうか、やってくれるか」


 水瀞理事長はにっこり微笑むと、入れと誰かを読んだ。 部屋に入ってきたのは女の子と見間違えるような青い髪の少年だった。


「この子は、中等部二年の雪御《ゆきみ》うずめじゃ、この子に全て伝えてある連れていってくれ」


「うずめだよ、よろしく!」


 少年は手を上げて自己紹介した。


「おい理事長、連れてけって子供じゃねえか、危ないから連れてけるわけねーだろ」


 灰が食って掛かると、


「心配はいらぬよ、その子は中等部最強、大人にも負けぬ希代の天才術士じゃ、足手まといにはなりわせん」

 
「そうだよ、僕はお兄ちゃんより強いよ」


「ふざけんな! クソガキ」


 怒り殴ろうとした灰を僕は止めた。


(この子は確かに強い霊力を感じる......でも)


 僕達は部屋を出て、歩きながらうずめから話を聞くことにした。


「実はね......この学園都市内の封印が壊される事件が起こってんだよ」


「学園の封印が......僕の霊力感知で異常はみられないけど、その犯人を、捕まえればいいの?」


 うずめは首を振り、もう捕まっているといった。


「しかも三人、だけど本人は犯行のことを覚えていないんだよ......」


「操られていたということか......」


 灰の言葉にうずめは頷いた。 


「でも、封印とは私も初耳ですが......」


「水瀞理事長すら知らないんだ。 だからこの件は大したことがないと思っているようなんだけど、僕はかなり危険だと感じている。 この学園の地には何かが封じられていて、それを守る封印だと僕は推測しているからね。 なぜならこの土地は昔から水瀞家のもので、水瀞家は封印術に特化した術式を使うんだ」


「封印の場所は分かるの?」


 僕の問いにうずめは困った顔をしながら、


「壊されたのは三ケ所、壊されてからその場所が封印だとわかった次から、あと何個あるかどこにあるかまでは......」


「封印なら、よみに聞けばいいだろ?」


 麟が貴人と焼きいもをモグモグ食べながらそう言った。


「そうだ、よみさんなら何か知ってるかも」


「よみさん......ですか」


 何か言いたげな雅がこっちを見てくる。

 
 僕達はすぐ、よみさんの庵に向かった。




「そうですか......封印が......まさか」


「知っているんですか、よみさん!」


 僕の問いに眉を潜めながら、


「......私がこの地に来たのは一年前、ある術士との戦いで深手を負ってここに来たのです」


「よみさんが、深手......一体その術士って......」


「水瀞 漿《みとろ しょう》、正確には彼が作った四体の人工霊獣にですが......」


「水瀞って......」  


「脱獄中の水瀞理事長の息子だよ......」 


 僕の疑問にうずめが答える。


「脱獄、あの咒縛監獄《じゅばくかんごく》から逃げられたのか! で、その理事長の息子と封印と何か関係があるってことか?」


 灰が聞くと、よみさんは頷き、


「本来霊獣とは隠世から自然的に発生する霊力の塊に、長いときを経て自我が目覚め生まれるのだけれど、彼は封印術で人為的な霊力の塊を作り、その核に自我となる人間の魂を植え付けることで人工霊獣を作っていたの」


「人為的な霊力の塊に人間の魂を植え付ける......まさか!?」


 雅がよみさんを見て言うと、


「そう......彼は妖など隠世の住人を霊力の塊に変換し、その塊に人間の魂を植え付ける為、多くの人を犠牲にしてその実験をしていた。 それで私に捕縛依頼がきたの。 もし、彼が主犯ならば......」


「ここに封印している何かと人を犠牲にして、人工霊獣を作ろうとしてる......」


「そんな! 馬鹿なこと!」 
 

 うずめが怒りを露にして、震えている。


「うずめ君、気持ちはわかけど、落ち着いて」


「うん......ごめん、雅姉ちゃん」


 雅がうずめを落ちつかせる。


「とにかく封印の場所を探さないと」


「そもそも、そいつはなんで封印の場所を知ってんだ。 理事長すら知らないんだろ」


 灰がそう言う。


「誰かに聞いたのではないのか?」 


 貴人が答えると、


「無名......」


「またあいつか......」   


 僕の呟きに、麟が答えると皆が沈黙した。
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