異世界ダンジョンさん ~ダンジョンに転生したぼくは、世界の終わりに抗う者となった~

曇天

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第一話「転生先はダンジョンでした」

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「そうか、ぼくは死んだのか」

 ぼくは黒い海のようなものに漂いながら、直感的にそう思った。 少なからずショックを受けたが、ほっとしてもいた。 
 
 佐久間 界《さくま かい》、取り立ててなにもない人生だったから、人とのかかわり合いがとても苦痛だった。

(死んだあとどうなるんだろうか......)

 体の感覚はなく、ふわふわとしたところを漂ってそんなことを思う。

「意識があるということは、まさか輪廻転生のようなことがあるんだろうか......」

 今までの人との関係が思い起こされた。

(転生はしたくない。 人間関係の煩わしさはもういやなんだ......)

 願わくば他のものに転生したい。

(他のものなら木いや花、虫...... 獣)

「転生したら、人じゃなくても意識はあるのかな? だったらなんでも同じか」

 その時、遠くに光りがみえそこに吸い込まれていくようだ。

(なんだろう? まさか転生...... まあ二回目だから、人じゃなきゃなんでもいいや)

 そう思っていると、光りの中へ入っていき意識が遠のいた。


「ここは...... なにもみえない」

 意識を戻すとそこにはなにもない。 体の感覚もなかった。 声もだせない。

(一体何になったんだろう。 体の感覚はないが、なにか周囲を感じる。 まさか赤ちゃん!? 人間はいやだったのに! いや、動けないからそうではなさそうだ。 だけど動けもしないし、声もだせない)

 周囲に意識を向ける。 すると人の話し声がきこえる。

「ここは、何もいないのか」

「まだ1階だぞ」

「ああ、ここから俺たちの冒険が始まる」

(冒険...... なんだ? 誰なんだ、どこからきこえてる?)

 声は近くでするが、人の姿はみえない。 

(でも、すごく近い......)

「うわっ!! でた!」

(えっ!? 何!)

「も、モンスターだ!!」

(モンスター!? そんなのいるの!)

 体を動かしたくても感覚がない。 声もだせずに叫んで逃げていく人の声だけがきこえる。

(逃げられない!! 助けてーー!!)

「......うるさいな。 寝てたのに」

 そう声がした。

(誰かがいる!! あ、あの! 助けてください!)

「助ける? 誰を...... おお君、転生したのか!」

 その声は喜ぶようにそういった。

(は、はい! そうですが、体が動かないんです! あなたはどこですか?)

「私は君のなかだよ。 意識を集中して声の方にむけてごらん」

(ぼくのなか...... なに言ってるんだ...... でも意識を集中してって......)

 声のする方を意識してみる。

(体の中にぼんやりと遠くに光るようなものがみえる......)

 それは下のほうにいくつもあった。

「一番明るいところに意識を集中して」

 言われるままに意識を集中すると、ひとつが大きく光っている。 よくみようとすると、それは箱のようだった。

(これは、箱?)

「そう、それは私、【ミミック】だ」

(みみっく......)

「宝箱に擬態するモンスターだよ」

 そういって宝箱の蓋がパカパカと上下している。

(も、モンスター!! なんで話が)

「魔力での念話だ。 もっと魔力を感じてごらん」

 わけがわからないが取りあえず集中する。 すると周囲を何かうっすらとした力を感じる。 どうやら建造物のようだ。

(これはいりくんだ建物...... 迷路!?)

「そう。 君はこのダンジョンに転生したようだね」

「ダンジョン!!」

「そう、この迷宮こそが、君なのさ」

「そんな!? なんで」 

「さあ、私は人間にあきれたからね。 死んだときモンスターにでもなりたいって思った。 君はどう思ったんだい?」

「そんなことは...... あっ!」

『人間関係は煩わしいから......』 

「考えてた! 人間じゃない方がいいって!」

「それでダンジョンになったんだね」

 ミミックさんはそういって笑う。
 
「うそぉ!?」

 そうぼくはダンジョンに転生していた。

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