異世界ダンジョンさん ~ダンジョンに転生したぼくは、世界の終わりに抗う者となった~

曇天

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第十二話「魔女リステンドの記憶」

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「ここがタルバストですか」

 そこはとても大きな町で遠くには城もみえていた。

「ああ、ここは【タルバスト王国】、王都【リークレ】。 私が生きていたときからある古い大きな国だ」

 ミミックさんのいうとおり、前にいたサロマスとは規模が違った。 整然と巨大な建物が立ち並び、人も祭りのようにいきかい混雑している。

「じゃあ、馬車をおりてダンジョンに向かおう」

「ええ、近いんですか」

「ああ、この先の城の隣にあるんだ。 厳密にはダンジョンの隣に城をたてたってことだね」

「そんなところに...... 大丈夫かな」

「まあ、だめなら他を探そう。 【アレンゲルト帝国】にも同じようなダンジョンがあるはずだよ」

(帝国か...... どうもなぞが多い国だな。 ミミックさんもよくはしらないようだし)

「わかりました」

 ぼくたちは王都を歩き、ダンジョンへと向かった。

「これは!!」

 そこには巨大な神殿のような建物があり、周囲に宿屋や雑貨屋、武具屋などがあり、武装した人たちがひしめいている。

「ここが、タルバストのダンジョン【神園】だ」

「神園...... 人が多いな」

「ああ、地下100階層からなる。 帝国のダンジョンにつぐ深さがある」

 そのとき、神殿の前に石像がみえた。 その巨大な像は女性の魔法使いのようだった。 そこには厄災の魔女【リステンド】、【七賢者】に葬られるとほられていた。

(リステンド...... 確かミミックさんと同じ名前、この像なんかミミックさんににてる)

「このダンジョン、どこまであるんだ?」

「わからん...... 最下層には魔女がいるって噂だ」

「数百年前の話だ。 厄災の魔女リステンドなんて、実際に存在するわけないだろ。 それにリステンドは七賢者に倒されたんだ」

 そう話が聞こえてきた。

「さあ、こっちだ」

 そうミミックさんに呼ばれてぼくは向かった。

「ここで登録しないと入れないんだ」

 ぼくたちは登録所で登録をして、ダンジョンに入る。

「ここなら、魔法の武具なども落ちているはずだ」

「でも人も大勢ですね」

 ダンジョン内は大勢のものたちがいた。

「ああ、でもここはとてつもなく奥に広く、下にも深い。 ほとんど出会うこともないよ」

「そうなんですか。 なら遠慮なく力も使えますね」

 ぼくたちは早速一階を進んでいく。


「まあ、強さはあまり変わりませんね」

 モンスターを何体か倒してすすむ。

「ここも神のダンジョンだからね。 試練なんだろうさ」   

「そうか、鍛えるのも目的だった」

「それでここで何をするんだい? ダンジョンをつくるんじゃないのかい?」

「ええ、できるかはわかりませんが試したいことがあるので、最下層を目指したいんですが」

「わかった...... 我々でいけるかは微妙だが、いくだけ行ってみよう」

 10階まで降りる。 そこはダンジョンのなかというより、木々が生い茂る樹海のようだった。

「ここ、ダンジョンのなかですよね。 こんな太い木々がある」

「ここは魔法がかかっていて国並みに広大だからね。 下層には湖や鉱山のような場所もあるよ」

「......すごいですね」

(そんな巨大なら無理かな...... まあただ試してみて損はないだろう)

 ぼくたちはモンスターを倒しながら、最下層を目指す。

「それで最下層には何があるんですか?」

「ああ、ここも魔核石が祭壇に...... あっ!」

 驚いたようにこちらをみる。

「やはり最下層にたどり着いたリステンドって、ミミックさんだったんですね」

「......私をはめるなんてやるね。 君のことを侮ってはいないつもりだったが」

 そうミミックさんは眉をひそめた。

「まあ、いいたくないなら聞きません」

「いや、大したことじゃないさ。 私が人間だった頃の話だ」

「確か人間にあきれたとか......」

「ああ、私は子供の頃から魔力に秀でてね。 魔法使いとしてすぐ才能に目覚めた」

「それで自分以外が愚かにみえたとかですか」

「いやいや、確かに私には天賦《てんぷ》の才があった。 だがそこまで傲慢じゃない...... といいたいところだけど、浅慮ではあったね」

 そういうとミミックさんはため息をついた。

「私は幼い頃から魔法使いとしてモンスター退治やダンジョン踏破などを次々と成功させた。 それで人々から若き天才魔法使いともてはやされたのさ」

「......それなら増長するのも無理はないですね」

「ああ、しかし他の人たちを蔑んでたわけではないよ。 ただ考えが足りなかった。 人の底知れぬ悪意ってやつにね」

「悪意......」

「人から誉められるため、その力を使い成果をあげるにつれ、人々の嫉妬をかっていった。 とりわけ古い魔法使いたちにね」

「それって......」

「ああ、私の力を恐れたものたちは、自分たちの地位を脅かされることを恐れ私をはめたのさ。 悪魔の力をもつ魔女として糾弾された......」

(それで石碑に魔女と)

「その弁明のため、私はこのダンジョンへとはいり、最下層で魔核石を手にいれようとした。 その時の私は他の何者にもできないことをなせば、認められるとおもったのさ」

「姿を消したって......」

「ああ、ここで殺された。 最下層についたとき、後ろに隠れてついてきたものたちにね。 私は殺されるとき人間にあきれ。 モンスターになりたいと願った」

「それでミミックなんですね」

「ああ、別にミミックを願ったわけではないがね。 人間以外になりたいと願ったんだよ」

「じゃあ、人間に思うところはあるんでしょう?」

「......まあなくはないが、今は復讐しようとは思わないね。 人間なんてそんなものだろうと思うようになったからね」

 そうカラカラとミミックさんは軽快にわらった。
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