異世界ダンジョンさん ~ダンジョンに転生したぼくは、世界の終わりに抗う者となった~

曇天

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第十一話「王の招待と逃走の策」

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「おお! 帰られたか!」

 バーロンドと騎士団から歓声があがる。

「ああ、ロードモンスターとみられるモンスターは奥にいるよ」

 ミミックさんがいうと、更に歓声がわいた。

「なんと! では、我らは確認に!」

「ああ、じゃあ私たちは帰るよ」

 ぼくたちはダンジョンに帰り、その日は眠った。 


「なんとかロードモンスターを倒せましたね。 とはいえこの武器では戦えない。 もっと強い武器が必要ですけど......」

 そう話しかけるも、黙ったままミミックさんは考え込んでいる。

「どうしました?」

「......ああ、かなり不味いことになったね」

「ロードモンスターを倒せば、魔王のダンジョンもモンスターもふえないし、この国にとってもいいことなのでは?」

「いや、問題はそこじゃない。 私たちのことさ」

「......ばれるということですか」

「いずれは...... ただ今は」

 その時ダンジョンにバーロンドがきていた。

「バーロンドがきました」
 
「......ああ、このまま簡単には帰ってはくれないだろうね」

 ミミックさんの表情がさえないままそういった。 ぼくたちはバーロンドに会いに行った。

「ああ、やはりここにいたか」

 バーロンドは焦ったようにこちらの顔をみていった。

「なんのようかな」

「あのあと確認したが確かにオークラブの死骸があった。 王にその事を話すと、貴公らを城に招くよういいつかってきたのだ」

「......すまないが、私たちは修練がある。 お断りさせていただいていいかな」

 そうミミックさんは断った。

「それは困る! 王から直々に城に呼んでくるよう命ぜられた! できねば私が叱責される! いや、処断されよう!」 

 そのバーロンドの顔は真剣で、断りをとても受け入れてはくれなさそうだった。 ぼくたちは顔を見合わせる。

「......わかった。 夕方にはそちらに向かう。 それでいいか」

「ああ、かまわない」

 ミミックさんにいわれたバーロンドさんは帰っていった。


「厄介なことってこれですか?」

「ああ」

「でも王さまから感謝の言葉を受けるだけでは」

「そんなものならばここまでいやがらないさ。 我々はロードモンスターを倒したのだよ」

「ええ」

「そんなものを国がほうっておくわけがないだろう」

 そういってミミックさんはおおきく息を吐いた。

「とはいえ、まさかロードモンスターを倒せるものを殺しに来たりはしないでしょう」

「そこまではね...... ただ臣下になれと命じられるだろうね。 隣国と対立してるんだ。 戦力として必要だ」

「でも、無理強いはしてこないはず、自分たちをおびやかすだけですし」 

「ああだろうね。 ただなんどもここにくるし、常に見張りを置くはずだ。 隣国にでもとられれば国が滅びかねない」

「たしかに、これは面倒だな......」

「そう...... そして、いずれ正体に気づかれる。 しかし、我々は逃げられもしない。 さてどうしたものかな」

 ぼくたちは考える。 

(たしかに逃げられない。 ダンジョンがここにあるからな...... ここにある...... いや、もしかして)

「ミミックさん、浮遊の魔法は使えたんですよね」

「ああ、それがどうしたんだい?」

「ぼくに策があります」

 それをぼくはミミックさんに話した。

 それから夕方にかかるころ、ぼくたちは馬車に乗っていた。

「よし、国境から出たよ」

 馬車を操りながら、となりのミミックさんはうれしそうにいった。

「なんとか、うまく行きましたね」

「ああ、まさかあんなことを考えるなんて驚きだよ」

 そういってミミックさんはぼくをみる。

 それは朝のことだ。

 
「ダンジョンを動かす!?」
  
 ミミックさんが驚いている。

「そう。 こんな風に姿を変えられるなら、ダンジョンそのものを変化させれば、動かせるはず」  

「それはそうだろうが、人型にでもして歩かせるのかい」

「いいえ、それだと目立つし、圧縮して小さくしても重すぎて動けない。 そこで浮遊魔法です」

「浮かせるのか...... たしかにそれなら重さは回避できるが、可能かな」

「一応試してみましょう」

 ぼくは外にでて、全魔力を使ってダンジョンを圧縮する。 徐々にダンジョンは小さく丸くなっていき、最後は丸い球体のようになり地面に埋まる。

「すごいな! これなら【レビテイト】!」
 
 球体はふわりと浮き、ぼくはそれを鞄にいれた。

「よし、私は馬車を手に入れてくる!」

 そうしてぼくたちは馬車で国境をこえた。

「さて、どこへ行きましょうか」

「まあサロマス王国と対立してる隣国ラクアークにさえいかなければ、どこでもいいが...... どこに行きたいんだい?」

「そうですね。 大勢の人と強い武具が手に入る場所ならどこでも......」

「......それなら、ひとつしっている国がある。 そこに向かおうか」

 そうミミックさんはいって馬車をあやつった。

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