異世界ダンジョンさん ~ダンジョンに転生したぼくは、世界の終わりに抗う者となった~

曇天

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第十六話「魔族の少女と神の掟」

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「順調に探索する人たちはふえていますね」

「ああ、いまや日に数百人はいるよ。 大忙しさ」

 ミミックさんはアイテムを作りながらいった。

「ええ、いま急いでモンスターを生成してますけど、千人は......」

 モンスターを生成しながら、そう答える。

「やはり、難度があがりアイテムがよくなったことで、パーティーの編成数がふえたね」

「ええ、それでも稼げますからね。 とはいえ大所帯になって問題もあるようですが......」

「ああ、あれか仲間割れか」

 そう最近パーティー人数がふえたせいでダンジョンに入ったパーティーの、レアアイテムなどを巡り奪い合いが発生していた。

「急造のパーティーなら、まだ信頼もないし、しかたないんですかね」

「いや、それならまだいい...... 問題なのは最初から裏切る目的の参加だよ」

 ミミックさんは蓋をとじ考えているようだ。

「最初から奪うつもりでパーティーに入るんですか!?」

「ああ、前のダンジョンのときもあった。 アイテムのみならず、ダンジョン内での殺害や奪い合いはね。 私が気づいたとき何回か阻止したがね。 なにせダンジョンで人に殺されると生き返らない」

「それならすぐばれるのでは?」

「だが、ダンジョン内に長く遺体がおかれると、魔力として吸収されるから、発見されることが少ないんだ」

「それを狙ってか...... でも今のところそこまでは起こってないですが」

「うむ、しかし何かおかしな行動を取るものたちがいるだろう」

「ああ、罠を設置しているものたちですね。 モンスターへの対処かと思っていたけど、あれもか...... ただ全部撤去していますよ」

「ああ、置いたものたちは不思議がってたね。 少し気がかりなことはある......」

「気がかり......」

「そう。 君が寝ていた間に、男たちが話をしていたんだが......」

 その時、入り口に人が入ってきた。

「おかしいな。 こんな深夜に......」

「ああ、しかも小さいな。 まさか子供か」

 それはミミックさんのいうとおり、背の低い全身にフードのついたローブをまとった人物だった。

「探検家にしては、若すぎますね。 しかもそれほど重装備でもない」

「おそらく魔法使いだろうが、一人なんて無茶だな」

 しかし、ぼくたちの考えに反して、そのローブの人物は、モンスターを容易く倒してアイテムを手に入れ進んでくる。

「驚いた、すごい身のこなしだ。 ナイフで容易くモンスターを倒している」

「ああ、魔法も使っていない。 いや身体強化か、もしかして...... 私が行ってみるよ」

「あっ!」

 ミミックさんは何を思ったのか、そのローブの人物に向かっていった。

「ミミックさんは強い上に、最近魔力が上がっている。 正直、あのローブの人じゃどうにもできないだろうに...... わざわざなぜ?」

 そう疑問が浮かぶが、とりあえずみてみる。

 10階の迷路で、二人は接触した。 すぐにローブの人物は壁を蹴り距離をつめナイフをふるう。

「はやいな。 でも......」

 ミミックさんは魔法のシールドではじき、続けざまに火球を放つ。

 それをローブの人物は後ろ宙返りでかわした。

「すごくしなやかな動きだ。 まるで猫だな」

 猫耳少女はミミックさんを手強しとみたのか、後ろにはしりだした。 その時、そのフードが脱げた。

「あっ!?」

 驚いた。 それはそれが少女だったからではなく。 その獣のような耳が上についていたからだ。

「獣!? いやまさか本物じゃ」

「いや、本物だよ」

 そうミミックさんから念話が届いた。

「えっ? 猫ってことですか? まさか獣人?」

「ああ、亜人種族...... 【魔族】と呼ばれている」

「魔族。 人間の敵ってことですか?」

「まあ、人間の側が一方的にそう読んでいるね」

「一方的に......」

「人間以外のある程度の知能のあるものを魔なる存在、魔族と定義している。 どうやらこの時代もその名残りは残っているようだね」

「モンスターとは違うんですか」

「知能が高く文化や文明をもち、武器や魔法を使いこなすんだ」

「それって人と同じってことですか?」

「ああ、だがその見た目や利害から悪と断じて対立しているね。 彼女はいまどこだい?」

「帰ろうともしてないな。 ん? 五人組のパーティーが後ろからきた。 仲間...... いや」

 その五人組と少女は接触した。

「やはり、魔族か...... 人間のダンジョンになんのようだ」

 パーティーの男がそう少女に威圧するように聞いた。

「......お前たちには関係ない」

「関係はある。 ここは人間の場所だ。 お前たち魔族のくる場所じゃない...... その鞄の中身をおいていけ」

 そう男は少女の鞄に目をやると剣を向けた。

 逃げようとする少女に、パーティーの魔法使いがその背中に氷柱のような魔法を放ったが、上まであがっていたぼくはそれをはじいた。

「なんのつもりだ。 そいつは魔族だぞ。 味方をするつもりか」

「困るね...... 神のダンジョンは殺人はご法度なんだよ。 知ってるだろ」

 そうミミックさんは人の姿で現れた。

「仲間、いつのまに...... だがそいつは魔族だ。 モンスターと同じだ。 なぜなら神の敵対者だからな」

 そういいながら剣をかまえる。

「それは君たちの理屈だね」

「......いくぞ」

 リーダー格の男がいうと、パーティーは散開してこちらを囲んだ。
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