異世界ダンジョンさん ~ダンジョンに転生したぼくは、世界の終わりに抗う者となった~

曇天

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第二十三話「海魔と新たな強さ」

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 馬車で国境をこえると、潮風のにおいにのって海がみえてきた。

「すごい! これが海...... 初めてみた」

 ジェスカは感動したようにいうと、リガイアはうなづく。

「確かに途方もなく大きいな...... それでカイさまはなぜここに来たのですか?」

「うん、体の素材になるものを探そうと思って」

「そのままでもものすごい強さですけど......」

 リガイアは首をかしげた。

「まあね。 ハードスパイダーの糸は強度も伸縮性もすごい。 ただカイザーアントにはかなり苦戦した。 もうぼくだけのダンジョンじゃない。 コボルトたちもいるからもっと強くなっていた方がいいかなって」

「すみません。 我らのために」

「いや、自分のためさ。 今のところ強くなるぐらいしかないからね」

(でも、なにか、ぼくにできることがあるかもしれない......)

「ふふふ、確かに我々には目的もない、それで何を手に入れるんだい?」

 ミミックさんがきいた。

「ええ、軟性と強度のある素材です。 ですが倒さないといけないものがいます」

「倒さないと...... モンスターか。 ん? それってもしかして......」

「あっ! 見えてきました。船です!」

 ジェスカが叫んだ。 大きな帆船が何艘もみえる港がみえてきた。

 
 ぼくたちは船を一艘買うことにした。

「あんたら探索者かい」 

 そう船を売った商人はそうきいた。

「ええ、そうです」

「あそこの魔王のダンジョンはやめた方がいい...... 無傷で帰ってくるものもいないんだ」

「えっ...... ええ」
 
(ここにもダンジョンがあるのか)

「そうなんですか? 無傷ではということは、そのダンジョンになにかいるんですか?」

「......ああ、【イビルオクトバス】だ」 

「そうなんですか? でも本で読んだんですけど、確かに大きなものでも三メートル程度ですよね。 それが、そんな危険なんですか?」

「ああ、この海域にいるやつはその程度だが、そのダンジョンにいるのは10メートルをゆうにこえる【エンシェントイビルオクトバス】だよ。 最近現れてな船も十隻は沈められている」

(さて、魔王のダンジョンか......)

「どうする? ダンジョンさん。 どうやらロードモンスターのようだよ」

 ミミックさんがきいた。

「正直、みんな困っているようなので倒しましょう」

「まあ、そういうと思ったよ」

 ぼくたちは商人からその魔王のダンジョンの場所を聞き、むかった。

 そこは小さな小島だった。


「どうやら、ここにあるらしいね」

「あそこです!」

 ジェスカがいう方に洞窟があった。

「あれか...... 確かに魔力を感じるな」

「どうやらモンスターがでてきます」

 洞窟から大きなハサミを四本もつカニがでてきた。

 リガイアとジェスカが走り、ジェスカは双剣で、リガイアは大剣でカニを切り裂いた。

「おお、カニを簡単に倒した」

「【シザーズクラブ】かなり固い外殻をもつカニだ」

 感心するようにミミックさんがいう。

「ええ、カイさまがくれた、この魔力を伝える魔法の双剣【ソリッドソード】のおかげです」

「ああ、俺の【エナジーブレイド】も同じく」

「まあ、それもあるけど、ふたりとも常に鍛練を欠かさないからだよ」

「そ、そんな......」

「ありがとうございます」

 ぼくの言葉に二人は照れた。

 磯の香りがする洞窟内をぼくたちは進む。 どうやら満潮時、海に沈むらしい。
 
「下に向かっているね。 かすかに波の音が聞こえる。 下層は海と繋がってるのかも知れない」

 ミミックさんがそういった。

「そうですね。 なにかくる......」

 下から無数の魚が空中をとんでくる。

「魚が! とんでくる! いや違う泳いでるのか!!」

「フライングファングフィッシュだ! 噛まれると肉をそがれるよ!」

 ミミックさんの言葉にぼくたちはかまえる。
 
 群れになった魚のナイフのような鋭い牙がせまる。

「みんな! ぼくの後ろに!」

 波のように魚の群れが突撃してくる。

「大丈夫ですか! カイさま!」

 横を抜けた魚を三人がたたきおとしている。

「ああ、大したことはないよ。 この数叩き落としても、きりがないな」

(ただ旋回されると前後から挟まれる。 リガイアたちが危ないな......)

 ぼくは小手をはずすと、糸をほどいて放った。 

 網のようになった糸に魚が入る。

「ミミックさん。 腕ごとお願いします」

「わかった。 フレアスフィア」
 
 巨大な火球がぼくの糸ごと魚をやきつくす。


「大丈夫ですか? 腕がなくなりましたけど」

 リガイアが腕をみてそう心配する。

「ああ、密度をあげるために巻き付けてるから、ほら」

 他の部位から腕を再生させた。

「すごい!」

 ジェスカは驚きの目でみている。

(とはいえ、いちいち体を犠牲にしてたら、弱体化してしまうな。 はやく新しい体が必要だ)

 ぼくたちは先へと進む。
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