31 / 52
第三十一話「荒れ果てたサロマス、再会とダンジョンへ」
しおりを挟む
「なるほど......」
ぼくは少し考える。 もともとぼくたちがいたサロマスにいっていたマーマンたちから話が入ったからだ。
「......サロマスがそこまで悪化しているとはね」
ミミックさんも困惑している。
「ええ、部下の話によると、軍事費の増大による増税で、かなり財政が逼迫《ひっぱく》しており、市民たちの生活が困窮しているとのこと......」
そうディガルがいう。
「あそこは確か、隣国ラクアークと対立していましたね。 それにあの姉妹も......」
「ふむ、気になるね。 しかしどうするか...... 食料を配布するにしても、国のメンツを潰されると拒否される恐れもあるね」
ミミックさんがそう考えていった。
「......となると金銭的に援助ですかね」
「援助するにしても、我々はアイテムの価格が上がらないよう調整しています。 不用意に大量に売ると価格が暴落しますから......」
ジェスカがいった。
「確かに、ここのアイテムは冒険者たちが落としたもの複製品。 それほど種類があるわけでもない。 通貨などはあまり持ち込まれませんからね」
リガイアがうなづく。
「そうか...... 取りあえず、どんな状況か向かってみよう」
ぼくたちはサロマス王国へとむかった。
「これは......」
ぼくたちがこの国を離れて一年あまり、そのときとは比べ物にならないほど、貧しい人は増え、店などは戸をしめ、町は荒廃していた。
「ずいぶん変わったね......」
「前も裕福とはいえなかったが、ここまでひどくはなかった」
ぼくとミミックさんは言葉を失う。
「......あっ」
目の前で山菜をかごにいれた子供が転ぶ。
「大丈夫......」
それを姉らしき少女が抱き起こしている。
(あれは昔ダンジョンにきた姉妹か...... よかった無事だったのか。 ただあんなに楽しそうだったのに、今は怯えた目をしている)
とても胸が傷んだ。
「ミエレ、リーナ」
心配そうに母親が駆け寄ってきた。
「あのすみません......」
ミミックさんが話しかける。
「は、はい、なんでしょう」
「少しここのことを教えていただきたいのですが」
「ここのこと......」
「ええ、昔この近くのダンジョンにきたものです」
「あ、ああ、あのダンジョンの」
すこし警戒がとけたのか母親はほほえんだ。
ぼくたちは話を聞くため彼女たちの家に招いてもらった。 姉妹の母親ーーフィルタナさんはダンジョンにきた客あいての宿を経営していた。
「ええ、突然ダンジョンがなくなってしまい......」
フィルタナさんはそうつかれたようにいった。
(そうか、この町はダンジョンにくる探索者目当ての町だった...... ぼくが動いてしまったせいで、それがなくなって皆生活が苦しくなったのか)
「なるほど、でもこの国の荒廃はそれだけではないですよね」
ミミックさんがきいた。
「え、ええ、最近、さらにモンスターの出現が多く村や町が被害を受け、その対応の兵力のための税金などで、生活が苦しくなっているんです」
「モンスターが増えていることの原因に心当たりは?」
「町の者は魔王のダンジョンなのではないかと...... 先日もとなり町で十人ほどが失踪していますから」
「前に魔王のダンジョンは攻略された。 他にもあったのか......」
「みたいだね。 それを攻略するしかないようだ。 ただそれには、国の許可をえないと......」
ミミックさんとうなづく。
「カイどの! リステンドどの! どこにいかれていたのです! あの時、王への招待をしたでしょう!」
城にいくと、そう騎士団団長のバーロンドが詰めてきた。
「我々も参るつもりだったのですが、いきなりダンジョンが消失して、生活の糧を失ったゆえ、仕方なかったのです。 この国にはもうロードモンスターもいないですし、自分たちの生活がありましたから」
そうミミックさんがとりつくろった。
「むう...... 確かにあの日、急にダンジョンが消えたとは報告がありました。 ですが連絡のひとつはお願いしたかった」
不満そうにバーロンドがいう。
「もうよいではないかバーロンド」
奥から威厳のある老人がやってくる。
「ライケス大臣」
「お二人、こちらにこられたのはどういう用件だろうか?」
「ええ、この国の窮状をきいて、なにか役に立てることはないかと参ったしだいです」
「......それは、ありがたい。 ということはダンジョンのことですな」
「ええ、国からのご許可をいただければ、我らでモンスターを討伐いたしたく参りました」
ミミックさんが頭をさげたので、一応、ぼくも頭を下げた。
「......ふむ、こちらとしてもお願いしたい」
そう大臣から許可をもらい、ダンジョンに向かうことにした。
ぼくは少し考える。 もともとぼくたちがいたサロマスにいっていたマーマンたちから話が入ったからだ。
「......サロマスがそこまで悪化しているとはね」
ミミックさんも困惑している。
「ええ、部下の話によると、軍事費の増大による増税で、かなり財政が逼迫《ひっぱく》しており、市民たちの生活が困窮しているとのこと......」
そうディガルがいう。
「あそこは確か、隣国ラクアークと対立していましたね。 それにあの姉妹も......」
「ふむ、気になるね。 しかしどうするか...... 食料を配布するにしても、国のメンツを潰されると拒否される恐れもあるね」
ミミックさんがそう考えていった。
「......となると金銭的に援助ですかね」
「援助するにしても、我々はアイテムの価格が上がらないよう調整しています。 不用意に大量に売ると価格が暴落しますから......」
ジェスカがいった。
「確かに、ここのアイテムは冒険者たちが落としたもの複製品。 それほど種類があるわけでもない。 通貨などはあまり持ち込まれませんからね」
リガイアがうなづく。
「そうか...... 取りあえず、どんな状況か向かってみよう」
ぼくたちはサロマス王国へとむかった。
「これは......」
ぼくたちがこの国を離れて一年あまり、そのときとは比べ物にならないほど、貧しい人は増え、店などは戸をしめ、町は荒廃していた。
「ずいぶん変わったね......」
「前も裕福とはいえなかったが、ここまでひどくはなかった」
ぼくとミミックさんは言葉を失う。
「......あっ」
目の前で山菜をかごにいれた子供が転ぶ。
「大丈夫......」
それを姉らしき少女が抱き起こしている。
(あれは昔ダンジョンにきた姉妹か...... よかった無事だったのか。 ただあんなに楽しそうだったのに、今は怯えた目をしている)
とても胸が傷んだ。
「ミエレ、リーナ」
心配そうに母親が駆け寄ってきた。
「あのすみません......」
ミミックさんが話しかける。
「は、はい、なんでしょう」
「少しここのことを教えていただきたいのですが」
「ここのこと......」
「ええ、昔この近くのダンジョンにきたものです」
「あ、ああ、あのダンジョンの」
すこし警戒がとけたのか母親はほほえんだ。
ぼくたちは話を聞くため彼女たちの家に招いてもらった。 姉妹の母親ーーフィルタナさんはダンジョンにきた客あいての宿を経営していた。
「ええ、突然ダンジョンがなくなってしまい......」
フィルタナさんはそうつかれたようにいった。
(そうか、この町はダンジョンにくる探索者目当ての町だった...... ぼくが動いてしまったせいで、それがなくなって皆生活が苦しくなったのか)
「なるほど、でもこの国の荒廃はそれだけではないですよね」
ミミックさんがきいた。
「え、ええ、最近、さらにモンスターの出現が多く村や町が被害を受け、その対応の兵力のための税金などで、生活が苦しくなっているんです」
「モンスターが増えていることの原因に心当たりは?」
「町の者は魔王のダンジョンなのではないかと...... 先日もとなり町で十人ほどが失踪していますから」
「前に魔王のダンジョンは攻略された。 他にもあったのか......」
「みたいだね。 それを攻略するしかないようだ。 ただそれには、国の許可をえないと......」
ミミックさんとうなづく。
「カイどの! リステンドどの! どこにいかれていたのです! あの時、王への招待をしたでしょう!」
城にいくと、そう騎士団団長のバーロンドが詰めてきた。
「我々も参るつもりだったのですが、いきなりダンジョンが消失して、生活の糧を失ったゆえ、仕方なかったのです。 この国にはもうロードモンスターもいないですし、自分たちの生活がありましたから」
そうミミックさんがとりつくろった。
「むう...... 確かにあの日、急にダンジョンが消えたとは報告がありました。 ですが連絡のひとつはお願いしたかった」
不満そうにバーロンドがいう。
「もうよいではないかバーロンド」
奥から威厳のある老人がやってくる。
「ライケス大臣」
「お二人、こちらにこられたのはどういう用件だろうか?」
「ええ、この国の窮状をきいて、なにか役に立てることはないかと参ったしだいです」
「......それは、ありがたい。 ということはダンジョンのことですな」
「ええ、国からのご許可をいただければ、我らでモンスターを討伐いたしたく参りました」
ミミックさんが頭をさげたので、一応、ぼくも頭を下げた。
「......ふむ、こちらとしてもお願いしたい」
そう大臣から許可をもらい、ダンジョンに向かうことにした。
0
あなたにおすすめの小説
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる