オルタナティブバース

曇天

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第十六話

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「なんでここまでするの! 一度お金をもってるなら、引きこもればそれでいいでしょ」

 アイはさけぶと、マナは薄く笑う。

「わかってないね。 あんたらゲーム内チャットみてないんだろ」  
  
「くっ、チャット......」

 おれはコージの攻撃をかろうじてかわしていた。

「私も!」

「アイは近づくな! コージに狙われる!」

「さっき私がいったように、町で身を隠したい奴らは大勢いるんだよ。 そいつらはゴールドを欲しがっている。 そして私はそれをもってる」

「この世界のゴールドなんてあっても......」

「いいえ、リアルのお金で売り買いしてるのね......」

 アイがそういうと、、マナは笑った。

「ははははっ、せいかーい!」

「そうか...... リアルのお金をだして、こっちのゴールドを買おうとしてるか」  

「そういうこと、臆病者たちがね。 でもそんな臆病者がいないと、この商売は成り立たないのよね。 私現実の生活に困ってるんだ。 このゲームもメールで願いが叶うって話だったからやっみたの。 まさか、本当にかなうなんてね。 くくっ」

 そういってマナは笑いを噛み締めている。

「くっ!」

 多少矢を食らっても、一撃で死にそうなものは、なんとか剣で矢を払う。  

「そいつ殺しちゃえばいいのよ。 なんで殺さないの? 死んじゃうから? 別に見ず知らずのやつが死のうがかまやしないじゃない。 現実だって貧しさなんかで毎日人が死んでるんだからさ...... 他のやつのことなんてどうだっていいじゃない」

 マナはあきれるように見ている。

(まずい! このままだとじり貧になる。 アイもアイテムも魔法も使えない。 最悪なのはリキャストタイムが終わって、笛でおれが混乱させられたら終わりだ)

 そうマナがもつ笛をみる。

(だがさきにクリアの遅延が終わる...... やはりマナを攻撃させるか、たがすぐ、また遅くさせられる。 どうする......)

 おれはコージの前にでて剣をかまえる。

「やる気、そうよね。 このままなら死ぬしね。 まあ、どっちが勝ってもいいわ。 混乱させればいいもの」

 後ろでマナが笑う。

 コージが矢を放つ、おれは体を動かした。 矢はマナをかすめる。

「くっ、なるほどね。 さっきみたいに矢を私に当てさせようとしたのね。 残念、そんなたまたま当たるもんじゃないわ...... リキャストタイムが終わった終わりよ」

 そういって杖をこちらに向けた。

「いけ!!」

「なに!?」

 クリアが背後からマナに体当たりする。 

「きゃあああ!!」

 マナが倒れると、おれは近づきマナの杖を弾いた。

「クリア、コージを頼む」

「くっ...... なんであのスライムあんたのところにいたのに、いつのまに、その腕!!」

 地面からマナはこちらをにらんでいる。 俺の腕に矢が刺さっていた。

「ああ、コージの矢はおれが受けた」

「ならさっきの矢は......」

「クリアは姿を変えるんだよ」

「!? そうかあのときの矢は」

「そうだ。 クリアを矢に変化させた」

「......どうすんの? まさか殺さないわよね。 人殺しになるもんね!」

 そういっているマナの唇は震えている。

(このまま放置すると、また犠牲者がでるかもしれない......)

 おれは剣を握る。

「やめてよ! もうしないから! お願い!! 私まだ死にたくない......」

「............」

 涙を流すマナをみて、おれは剣を鞘に納め、後ろを振り向く。

 目の前に弓をかまえたコージが矢を放つ。

「がっ!」

 後ろを振り返ると、頭に矢がささったマナは、その手にナイフをもっていた。 そしてそのまま姿が消えていった。

「し、しかたないだろ。 あいつはお前も殺そうとしていたから......」

 コージは顔を手でおおう。


「それでどうする?」

「......俺は町にこもるよ。 正直もう戦うのもいやだ。 悪いな」

 そう力なくコージは町へと消えていった。

「しょうがないよ。 あんなことがあったから......」

 アイはそういっておれの肩をたたいた。

「うん......」

(やはりリスポーンしていないみたいだな...... マナはあのまま消えてしまったのか......)

「そうだね。 でもこれからどうする? お金はかなりある。 もうシナリオをすすめず、おれたちもここに引きこもる?」

「正直、そうしたい...... マナのこともあるし、ただプレイヤーとNPC《ノンプレイヤーキャラクター》の戦争になったら、ここにいられるかな」

 アイが不安げにいう。

(......確かにここまで高度なAIなら、おれたちを敵視してくるかも。 そのときはNPC《ノンプレイヤーキャラクター》にも襲われるか......)

「それならルーテシア王に話をしてみようか」

「......そうね」

 おれたちはルーテシア王に相談にいくことにした。


「なるほど、確かに東の大陸でプレイヤーたちが不穏な動きをしている。 我らも連合で対処する方針だ」

 おれたちは城で王に謁見が許され話をしていた。

「もし戦争にでもなれば、プレイヤーのサナやアイは危険にさらされますね」

 テラリスも不安げにうなづいている。

「......うむ、我が命を救ってくれた恩人。 何とかしたいのだが......」

(王さまの一存でプレイヤーにあまりに肩入れすると、他の国々から疑いの目を向けられるな...... さすがに一国の王がそれは許されない)

「どこかこの国の近くにどこの領地でもない場所がありませんか?」

 そう聞いた。

「そこに住まうと......」

「ここにある町などでは戦火になれば敵意を向けられかねない。 自分たちの場所があればそこに隠れてやり過ごせるかもしれないですし」

「一つ我が領内に、ほとんど手付かずの場所がある。 しかしそこはモンスターが多く、危険な所だ」

 アイがうなづく。

「かまいません。 そこに居住を許していただけますか」

「うむ。 よかろう」

 王さまは大臣をみてうなづく。

「ただ条件をひとつ、国からの依頼があればきいていただくこと、それが条件です」

 大臣はそう提案してきた。

(まあ、ただで住まわせるのは、優遇しすぎると批判されかねないものな)

「わかりました。 何か依頼があればそれをお受けします」

 おれたちはそういって条件つきで、開拓と居住することを許可された。
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