オルタナティブバース

曇天

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第十八話

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 遺跡内はひんやりしていた。 少し湿気があるのか苔がはえている。 なぜか遺跡内は暗くない。

「暗くないな......」  

「ええ、なんでだろう?」 

「これ程正確な石の切り出しは、かつての古代文明に関わるか、模倣したものだろう」

 テラリスは壁をさわりながらそういう。

(古代...... 滅んだ文明のことか)

 おれたちが前にすすむと、おれの身長の半分はあるクモやカマキリが大量に現れる。

「アイ!」

「ええ!!」

 おれたちはファイアバードを放った。 炎は円形になり一瞬でクモたちが炎に包まれる。

「うん、連携技、威力が上がってる!」
 
「ええ、フレイムソーサーにかわったわ」

「すごいな。 そうだアイ、クモはその杖で操れないのか」

「ダメね。 クモは虫じゃないからかも、カマキリも仲間にできないね...... この遺跡のものは操れない」 

 おれたちは先へとすすむ。 

「はぁ、ここはクモとカマキリばかりだな」

「はぁ、地上も多かったし、マスターが生み出してるんだろう」

 テラリスが肩から上下させている。

(クモとカマキリを生み出すモンスター。 そんなのがいるのか)

「一度帰るか......」

「いえ、いるこの奥よ」

 目の前に大きな部屋がある。

 なかにはいると、おれの三倍はあるカマキリがあらわれた。

【ヒュージマンティス】そう表示された。

 ヒュージマンティスはミドルマンティスを次々生み出してくる。

「よし! フレイムソーサーだ!」

「わかった!」

 フレイムソーサーでカマキリたちを一掃し、おれは近づく。

「ダブルスラッシュ」

 貯めていたクロウラーソードでヒュージマンティスを一閃した。

「おお! やったな!」

「ああ、こいつは簡単だった」

「まって...... あれ」

 アイにいわれてみると、壁の隅にクモたちがいつの間にかいた。

「なっ!? いつの間に!! ヒュージマンティスは倒したのに!?」

 クリアがピョンピョンとんだ。

「上......」

 部屋の上をみると、高い天井に黒い何かがいる。 それは下へと落ちてきた。

 それは黒い糸にぶら下がった上半身は女性の巨大なクモだった。

「ニンゲン、シネ......」

『ユニークモンスター【アラクネ】』と表示される。

「なんだ!? 二体だと!」

「いや、さっきのがマスターで、これは元々ここにいたやつなのか!」

 アラクネは口から液体を吐き出す。

「あつっ!! 熱湯!??」

「ち、ちがう! これは酸だよ!」

 スリップダメージでHPがどんどんへる。

(まずい!! この痛みだと、HPがなくなるまえに痛みで気絶する!  もう使ってしまったクロウラーソードだとダメージがだせない!)

 アラクネはクモを産みながら、その糸を部屋中に放ちスペースをうばう。

 おれたちは剣と魔法で応戦するが、そうしているうちクモの数がどんどんふえていく。
 
「くっ、このクモもつよい!」

「これはレベル30なんかじゃない!」

「くそっ! クモも強くてアラクネまでちかづけん!」

「つっ!」

 アイの顔が苦痛に歪む。

「アイ!!」

「だ、大丈夫」

(このままだとスリップダメージより痛みで倒れる。 早くやつを倒さないと! なにか...... そうだ!)
 
「アイ! 疑心の笛だ!」 

「あっ! わかった!」

 アイは笛を吹いた。 不快な旋律が部屋に響く。 

 アラクネが酸をはき、自分のクモを踏み潰している。   

「ニンゲン! ニンゲン! ニンゲン!!」
 
「サナ、アイ、私がスキルを使う。 アラクネの足を止めてくれ!」

 テラリスかそういう。

「よし! アイ、フレイムソーサーだ!」

「わかった!」

 おれたちはフレイムソーサーを放つと、アラクネは炎に包まれた。 

「ギャァァア!!」 
 
 アラクネは糸から落ちて地面で悶えている。

 テラリスは走りだし飛ぶと剣をふりかぶる。

「【流星剣】!!」

 光り輝く剣がアラクネの胴にはいると、強く光る。

「あれが、弱点か! クリア! あそこを貫け!」 
 
 クリアは槍のようになると、はねとびアラクネの弱点を貫いた。

「ギャオオオオオオ...... ニンゲン...... ニ...... ン...... ゲン」

 そういいながらアラクネは細かい粒子となって消えた。

(こんなに人間に敵意があるなんて、モンスターだからか?)

 おれたちはなんとかアラクネを倒した。


「なんとネストのマスターモンスターとユニークモンスターを倒しただと!」

「信じられんな」  

 グオラスさんとアルバさんは驚いている。 

「ええ事実です。 兄上」

「ええ!! テラリス兄上って!?」
 
「ああ、わが兄たちだ」 

 そうテラリスは事も無げにいった。 
 
(どこかでみた顔だと思ったら、確かににてはいるな)
 
「......そうだな。 確かにそんな反応をするだろうな」

「ああ、刺客までさしむけたのだからな」

 二人は困った顔でこたえる。

「我らは王にこの地に左遷されたのだ」

「当然の報いだがな......」

「しかし、あれは貴族たちが自分達の優位をとるために、あなた方を利用しようとしたからで......」

「それでもその愚行を、止められず放置したのだから、責任は重い」

「すまなかったなテラリス......」

 二人はそうテラリスに謝る。

「ねぇアイ、この二人ってこんな感じなの?」

「話では傲慢な人物とあったけど、実際あったプレイヤーがいる訳じゃないしね」

 おれたちは小声で話す。

「しかし、テラリス」

「えっ?」

「お前は王に許可なく、勝手についていったであろう」

「い、いや」

「これは守備隊長としてはみすごせん。 違法は違法だ」

「うむ、国へと送還する。 兵士たち!」

「えっ? まって! 兄上!」

 テラリスは兵士につれていかれた。

「すまぬな。 この原野、存分に開拓してくれ」

「我らに必要なことがあればきこう」

 グオラスさんとアルバさんの二人はそういってくれた。
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