オルタナティブバース

曇天

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最終話

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「それでクワイアさん...... いや仮世の王、おれたちを現実に戻してくれるのか」

 クワイアは微笑む。

「ええ、もちろん」

「あなたはなんなの? AI? プレイヤー?」

「そのどちらでもありません」

 アイの質問にクワイアはくびをふった。

「......どちらでもない? どういうことだ」

「私は情報の海に漂うもの...... あなたたちから見れば高次の存在というところでしょうか」

 クワイアはこたえる。

「高次......」

「ええ、地球がうまれるよりはるかに長くここにすんでいました。 あなたたちと接触するためにここにいます」

「接触...... わけがわからない」

「わたしはとても長い間、孤独な暗い海に漂っていました...... 地球が生まれ、人類がうまれ、そしてネットワークがうまれ、やっと情報そのもののわたしはあなたたちと接触する場所をつくれた」

「接触する場所をつくれた? つまりこのゲームをつくったのか」 

 おれが聞くと仮世の王はうなづく。

「それって......」

(ネットを使って現実世界に干渉したのか......)

「なぜだ。 ただ接触するためにか」 

 リンキュルが聞くと、仮世の王はうなづく。

「それもありました...... 情報の海をめぐっているうち、レキ、麻生 暦《あそう こよみ》のことをしった。 彼は絶望のうち亡くなっていました。 だが私は彼の作ったその技術が失われることを惜しく思った」

「それで会社とゲームをつくったのね」

「ええ、あなたたちと接触できる、そしてAIという情報体の進化を見たかったのです。 ですが、私が人間と接触するため作り出したクワイアというアバターにはいったとき、ゲームのシステムに改変がくわえられてしまった」

「ラーシェか、この世界に争いを生むために......」

「......そうです。 彼はPKなどのシステムを加え、人間を閉じ込めた。 そして私はプログラムの改変により記憶を失い、NPC《ノンプレイヤーキャラクター》クワイアとして固定された。 ですが、あなた方がこのシナリオをすすめたため、仮世の王として戻ったのです」

「なるほど、そうか、でも......」

 おれはおれの姿をしたクリアをみる。

「なんだよ...... おれもわからないよ」

 そうクリアは困惑している。

「彼はあなたの人格を模倣したAI、そして共に生きて自我をもちました。 全くの別人格です。 これが麻生が目指した新しい命」

「おれが新しい命......」

 クリアが両手を前にだしみている。

「なるほど、確かにもう操作も命令もできないな...... 思考も感じない」

「もう別の存在ですから、私と同じです」
  
 そう仮世の王は優しく、クリアを見つめている。

「それでは、あなたたちの願いをかなえましょう。 私ができることならなんでも」

 おれたちは考えると、それぞれに願いをいう。 

 それを静かに聞いた仮世の王は了承した。


「一体どのぐらいたってるのかな?」

「時間は現実世界ではせいぜい一時間というところです」

「一時間...... 一年はここにいた気がする」

「そうだね。 夢のようだった」

「みんな帰ってしまうのか......」

 リンキュルは寂しそうにいった。

「大丈夫だ。 また来るさ」

「ええ」

「ほんとだな! 約束だぞ!!」

 リンキュルは必死にそういった。


「アイ、暑くない」 

 おれは日差しが強い夏の日を、杖をつくアイを支えながら歩く。

「ええ、大丈夫。 ごめんねリハビリに付き添ってもらって」

「いいよ。 おれもたまに外にでないといかないからね」

 こっちの世界に帰って、おれはアイに会いに行った。 仮世の王からクリアの報酬としてアイ、砺波 愛華《となみ あいか》は脳神経系の治療をうけ、リハビリで少しずつだが回復するという。 

「みんな望みのあるものがあのゲームに呼ばれたみたいだね」

「ああ、情報の海にすむ仮世の王なら、それを調べるのも簡単なんだろう。 でもおれだけちがうみたいだけど」

「【運命】《ディスティニー》それが、早苗《サナ》のパッシブスキル。 確かに私たちの旅は運命に導かれたようだった。 サナにクリアが発現したことといい、運命を引き寄せる。 そもそもこのゲームのプレイヤーとして選ばれてなかったんだね」

「おれは別に大きな望みなんてなかったからね。 仮世の王もどういう基準でおれが選ばれたのかはわからなかったみたいだし......」

「本当に運命だね。 でも早苗《サナ》にとっていい運命なのかはわからないけど」

 そういってアイは笑う。

「おお! 待ってたぜ!」

 大和《ヤマト》が剣道の道場前で手を振っている。

「ヤマト、練習は」

「ああ、雨月《うづき》は体力なくてへばってるがな。 武蔵《ムサシ》に頼んできた」

 そういって笑う。

 雨月《うづき》ことレインは、大和《ヤマト》の道場の練習生になったらしい。 武蔵も一緒にリハビリしているという。

「それにしても、早苗《サナ》、あの会社とゲームの権利をもらえたんだろ? 断ったなんてもったいねえな」

「いや学生のおれには、あんな会社運営できないよ」

 おれは願いでゲーム世界の時間をこちらと同じにすることや、NPC《ノンプレイヤーキャラクター》やPK《プレイヤーキル》の禁止など非道が行えないようにしてもらった。

『欲がないな。 そのお陰で私は面倒ごとが増えたんだがな』

 おれのスマホから声がした。 その画面には怒った顔のリンキュルが写っている。

「まあリンキュルが会社とゲームの運営をしてくれるから、大丈夫だな」  

 そうヤマトは笑う。

『笑い事じゃない! お前はいつこっちに来るんだ!」

 ヤマトのスマホからそうテラリスの声がする。

「わかってるって、すぐいくよ」

 ヤマトは色々弁明している。

「クリアはどうしているんだ」

「自分をしるんだって、回復したエレナと旅にでたよ」

「全くNPC《ノンプレイヤーキャラクター》と仲良しで何が楽しいのかしらね」

 目の前からサングラスをかけたエミリがあるいてきた。

「てっきりやめると思ってたけど、まだやってるんだね。 アイドル」

「やめるのはいつでもできるからね...... それより、あんたがPK《ピーケー》禁止にしたから、うちのメンバーたちもほとんどゲームからいなくなったわよ」

 多くのプレイヤーがあの世界を去った。 勝手をできなくなったからだ。 おれはプレイヤーがあの世界の干渉できる部分をかなりなくした。 あの世界はNPC《ノンプレイヤーキャラクター》が進めるべきだと思ったからだ。

「セイは?」 

「聖《ひじり》にはちゃんとお金は渡したわよ。 妹さんは海外で治療をうけられるって...... なによその顔」

「エミたんはゲームにはいってるのね」

「まあね。 私はPK目的じゃなくて、スリルを味わうためにあのゲームをしてたの。 武道大会ができて、殺し以外でもエイジとやりあうのは楽しいわ。 あいつ私にまけたのが悔しくて、何回も挑戦してくるの」 

 そういってエミリはアイに笑いかける。

 おれたちはあの世界とこっちを行き来しながら、生活をしている。 向こうもおれにとっては現実だからだ。

(そうか、おれの願いはこれだったのか......)

 そう、無為な日常に意味を見いだせるようにというおれの願いはかなっていたのに、ふと今気づいた。

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