オルタナティブバース

曇天

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第五十九話

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「やったか...... うっ!」

 クリアを変化させたことによる頭痛で一瞬目をつぶる。

「危ない!!」

 ザシュッ!!

 目を開けると、リンキュルがおれをかばい剣で貫かれる姿が見えた。。

「リンキュル!!!」

「くそっ...... プログラムの改変が間に合わなかったら、そのままログアウトさせられるところだった......」

 そういって、レキは剣を引き抜いた。 

「に、逃げて......」

 そして、リンキュルは光となってきえた。

「......もったいないが、まあいい。 こいつが進化したということは他のものたちも同じぐらいの性能をもつはずだ。 少し時間はかかるが、新しいサンプルをみつけよう」

「レキィィ!!!!」

 おれは歪む視界で切りかかるが、レキに腕で弾かれ、おれは倒れた。

「なんだ...... ただのプログラムだろう。 なぜ涙を流す」
  
「さっきは命といったはずだ!! なぜ!」

「そういったな...... まあ、どっちでもいい。 命だろうとそうでなかろうと、私にとってはたいした差でもない。 私にとって有益かいなか、それが大切なことだ」

 そういうと、膝をつくおれの前でレキは剣を振り上げた。

 ドシュッ

「なっ...... なんだ」

 おれが見上げると、レキの体には大きな穴があいている。

「クリア......」

 そこにいたクリアだったものはその姿を変えていた。 

 それはおれの姿だった。

「これは、どういうことだ......」

 おれ以上にレキは戸惑っていた。

「もうやめなさい。 無駄なことです」

 そう聞こえる方をみると、そこにはクワイアさんがいた。

「クワイアさん......」

「なんだお前は、NPC《ノンプレイヤーキャラクター》なぜここに...... いや、無駄なこととはどういうことだ......」

「あなたがデータを手に入れても意味がないということです」

「それは...... どういう意味だ......」

 困惑したかのようにレキは聞いた。

「あなたはおかしいと思わなかったのですか? ここの時間は現実とは異なる。 なのにあなたはその自らのプログラムの改変を容易く行う」

「現実とは時間が違う...... 確かにそれなら私はなぜそんなことができた...... 不可能なはず」

 レキは両手をみながら震えている。

「そう、あなたは...... いえ、元のあなたはとっくに亡くなっています...... 研究が頓挫し絶望したときに」

「死んでいる...... 私が、じゃあこの私は」

「あなたは、彼が最後に残したAIです。 せめて自分の研究の成果だけでも残そうとしたのでしょう」

「そ、そんな......」

 そういうレキの体が点滅するように少しずつ消えていく。

「そんな、わたしが...... エーアイ...... えー、あ、い......」

 そのまま光となった。


「クワイアさん...... あなたはなんなんだ」

「わたしは......」

 クワイアさんは光りその身を天使のような姿へと変じた。

「わたしは仮世の王です」

「仮世の王!? そうだ! 願いが叶う! 頼む! リンキュルを!」

「ええ! リンキュルを生き返らせて!」

 おれとは駆けつけたアイが懇願する。

「......それはできません。 この世界でも死は死...... ゲーム内のルールでしか復活できないのです」

「そんな」

 おれたちは悲嘆にくれる。

「......ですが、あなたはあれをお持ちですね」

 おれの体が光り、中からなにかが輝いて空中に浮いた。

「これは...... 天樹の蕾」

「ええ、世界にひとつのこのアイテム。 これは死者の蘇生を行えます」

「本当か!」

「それなら生き返らせましょう!」

「ですが...... 本当に彼女をよみがえらせていいのですか?」

「どういうことだ......」

「彼女は自らがAIだとしって傷ついていたはず、それをよみがえらせることが彼女の望みなのですか」

(確かに...... リンキュルは絶望していた。 よみがえることを望んでないかもしれない)

 アイをみると彼女も不安そうにこちらを見つめている。

「でも...... 生きていてほしい。 例え勝手なことだろうと、彼女には伝えてないことがたくさんある」

「そうだね。 責められてもそれは受け入れるよ。 感謝も謝罪もなにも伝えられてない」

 アイもそういってうなづく。

「そうですか、わかりました」

 おれたちは天樹の蕾をリンキュルが、消えた場所に使った。

 一瞬煌めくと光が集まり、人の姿へと転じる。

「ここは...... 天国」

「リンキュル!」

 おれたちがリンキュルを抱き締める。
 
「なっ! なんだ! やめろ! バカ! エッチ!!」

 おれたちはリンキュルに全てを話した。


「......そうか、私をよみがえらせたのか」

「すまない。 勝手なことをして、ただおれたちは......」

「いや、いい。 私も死ぬ瞬間...... 生きたいと願った。 どんな高尚なことを考えても、ただ生きていたい、そう思う矮小な存在だったんだ」

 そうリンキュルは瞳に涙を貯めて笑顔でそういった。
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