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第三十六話

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「とめてくれ、ほらあれだ......」

 馬車を止めセリナが指差す方をみる。 遠くに城壁が見える。

「ちいさいからわからんな。 近づくか」

「だめだ。 これ以上近づくと襲われるぞ」

 セリナがアエルを止める。

(【遠隔透視】《リモートビューイング》)

 壁にモンスターが群がってるのが見えた。

「とういうこと? モンスターが城壁を壊している」

「見えるのか...... そうだ。 ここは常にモンスターが襲っている」

「なぜだ?」

「わからん。 だが、ほとんど兵士に倒されるし、あまり多くなるとザルギードが現れて一人でモンスターを掃討することもある」

「あの数を......」 

 アエルが震えている。

(確かに普通の人間ができることじゃないな。 勇者か......) 

「それでリン、ここからどうはいる?」

 セリナがそう聞いた。

「ええ」

 【偏光念力】《ルクスキネシス》で姿を消し、【浮遊】《レビテーション》で浮かんで城へと向かった。

「なっ! 体が浮く」

 セリナの驚く声がする。

「姿は消えているが、音は聞こえる。 気を付けろ」

 アエルがそう注意している。

「私には見えているが、アエルとセリナは互いに見えていないから手を繋いでいて」

 そう伝え、空から城壁をこえた。

 壁の内部にはいった。

「ここがゼヌエラか広いな、いくつかの町が入りそうだ」

 そこは昔は立派だったのだろう。 柱や外観に壮麗な彫刻などが施された石造りの建物が整然とならぶが、所々に崩れていることがみてとれる。 

「だれもいないな」

 アエルがいうように、町には人の姿が見えず、ひっそりと眠ったように静かだ。

「多くが遺跡の発掘などにかり出されている...... 夜にならないと帰っては来ない。 他のものはただひたすら家のなかで怯えて暮らしている。 城にいくのは母に会ってからでいいか」

「ああ、構わない」

 歩いていくセリナに着いていき、路地のほうへと入っていく。

「あ......」

 セリナが声をだすと、前に足をひきずり、杖をつく女性がいた。

「母さん......」

「そうか早くいこう」

「あ、ああ」

 家へと入った女性をおうと、近くに人がいないのを確認して、扉を小さく叩く。

「はい...... あら」

「驚かないで、母さん、魔法で姿を消してるの」

 女性は扉をあけると、セリナが話しかける。

「その声はセリナ......」

「人をつれてきたの入るわね」

「え、ええ」

 私たちは中へと入った。

「母さん、誰もいない......」

「ええ、まだ明るいから近所人たちもみんないないわ」

「じゃあ解くぞ」

 姿を現した。

「セリナ!」

「母さん!」

 二人は手を取り合い、涙ぐんでいる。

「無事でよかったわ...... でもせっかく逃げられたのに帰ってくるなんて」

「ええ、少しこの人たちが城に用があるからついてきたのよ」

「そうですか、わざわざ娘をここにつれてきていただいてすみません」

 セリナの母は頭を下げる。

「まあ、話の前に、まずはその足を治します」

「えっ?」
  
【回復】《ヒーリング》でセリナの母の足を治した。

「うそ...... 足が痛まないわ」

「本当母さん!! それなら母さんもここから逃げられるわ!」

 二人は喜んでいる。

「ああ、その前に、少しいまの状況を聞きたいんですが」

「え、ええ、なんでも聞いてください」

 今のこの国の状況を聞いた。

「そうです。 兵士たちは町の警護、そして国のものは遺跡の発掘にかり出されて、毎日重労働をしています。 私は足が悪いので、食事の用意や裁縫など仕事を与えられていましたが......」

 そうセリナの母は杖を見ている。

「それでザルギードは一体なぜ遺跡を調べているんだ?」

 アエルはそう聞いた。

「私たちには詳しく話されてはいませんが、聞いたものの話しによると、あるものを探しているとか......」

「あるもの」

「大きな球体だと......」

(球体...... 古代の遺物か)

「とりあえず、城に向かうしかないか...... セリナはお母さんと共に私たちの町まで転移させる。 それでいい?」

「......私は元々騎士団に所属していた共にいこう。 だから母だけ転移させてくれないか?」

 セリナは母親と顔を会わせうなづいた。

「わかった...... とりあえず私は転移してくるね」

 その場でセリナの母親を町へと【瞬間転移】《テレポート》して、マーメルに後を頼むと戻ってきた。

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