やり直しの大魔王の弟子

曇天

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第五十八話 エンシェントアーマー

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「ど、どど、どーすんの! あんなの!」 
 
「そ、そ、そーよあんなのどーしようもないわ!!」

 オレとメルアが動揺した。

「大丈夫だ。
 あの鎧はかつて周囲より魔力を吸収して無類の強さを誇ったが、この時のはざまでは魔力を吸収することは叶わん。
 攻撃をして弱らせて行くのだ」

 そういうとベルはエンシェントアーマーに攻撃を仕掛ける。

「しょーがない!! 
 やるか!」

「やるしかないでしょ!!」

 オレとメルアはエンシェントアーマーに向かう。
 
「くそ! かてぇ! 全然攻撃が通らん。
 リブーストでもかすり傷すらつかねえ!
 攻撃も速すぎてパリィもできねえし」

「体術でもむり!
 魔法もあんまり効かないわ!」
 
「ごめん! わたしには止められないの!」

 中からカイの声がする。

「だが、やるしかないのだ。
 我は貯めた魔力を使う。
 少しはなれておれ」

 そういうとベルは光輝き、前に見たあの少年の姿となった。

「ヴァルザベール!!」

 そういうと、巨大な雷の束がエンシェントアーマーを貫く。
 轟音と爆風で辺りが土煙に包まれる。

「やった!
 いやカイは!?」

「心配しなくてもいいみたい......」

 土煙に揺らめく影がうつり、なかから
 エンシェントアーマーが姿を現わした。

「嘘だろ!
 あれで倒せないならもう無理だぞ!」

「そんなことはない。
 よくみてみろシンジ」

 見るとエンシェントアーマーの動きが少しおかしい。

「ダメージを受けてんのか」

「そう千年前ベルくんにかなり攻撃を受けたから弱ってるわ!
 攻撃を続けて」

「じゃあいくわよ!!
 生命を育みたる源、汝を汚す者を混沌へと回帰せしめん!
 カオスボルテックスナックル!!」

 メルアは拳に闇の渦をまといエンシェントアーマーを殴り付けた。
 エンシェントアーマーは黒い渦にのまれる。

「あいつあの魔法使えんのか!
 よっしゃーー!
 弱きをくじき、強きを助けるオレの矜持をみさらせーー!」

 オレはほとんどの魔力を魔力弾にかえ撃ち出した。

「リバウンドテレポジェイル!!!」

 ガガガガガガガ!!!

 オレの魔力弾はエンシェントアーマーを囲み絶え間なく転移と反発を繰り返した。
 
「シンジ! 剣を!」

 オレはベルの声に呼応して剣を投げた。
 
「グランブレイク!!」

 ベルがグランドレインを振るうと空を割るような衝撃が辺りをつつみ
 光でまえが見えなくなった。
 光が収まり目をあけると、そこにはエンシェントアーマーの前に一人の少女がいてこちらを振り向いた。

「みんなありがとう......」

「みゃあ、やったにゃ......」

「よくにゃたにゃ...... おにゅしたちぃ......」

「ちょにょい...... ちょにょい......」

「みんなほっそほそになってるーーー!」

 カイの叫びが空に響いた。

 
 それからしばらくしてオレたちはもとに戻る。

「はあ! 死ぬかと思ったぜ」

「ふむ、ほとんどの魔力をつかってしまったからな」

「危なかったわ」

「よかった!
 そしてありがとう!」

「なんでお礼なの?」

「うむ、この鎧にカイの魂はとらわれておったのだ。
 鎧を破壊したので解放されたのだ。
 前の時は先に大地の復活を優先させたゆえ破壊できなんだ。
 我からも二人に礼をいう。
 ありがとう」

「そういうことか気にすんなよ。
 オレたちの仲だろ」

「そうね。
 でもそれが目的でここにきたの?」

「うむ、目的はそれだけではない」

「これよ」

 そういってカイはエンシェントアーマーから赤い大きな結晶を持ってきた。

「これは魔晶核《グランコア》、古代技術でつくられた巨大な魔力の結晶なの」

「これを用い我が完全な力を戻すのだ」

「なるほど! それでここにきたのか!
 ならなんで先にここにこなかったんだ」

「エンシェントアーマーを倒せるかわからなかったのだ。
 そしてできるなら使いたくはなかった......」

「どういうことよ?
 それ使えばすぐもとに戻れるんでしょう」

「それはね......
 これが大勢の人の犠牲によってできたものだからなの」

 カイは苦悶の表情でいった。

「大勢の犠牲......」

「これは生命を魔力結晶化したもの。
 千年まえ、この結晶をつくるのに十国分の犠牲者をだしたの。
 たから......ベルくんは」

「十国分!?」
 
「それで...... なるほどね生命の結晶化か。
 あのヴァルキサスが使ってたのがそれね」

「うむ、おそらく古代技術を調べてつくったのだろうな。
 ......このようなもの使いたくはないのだが、魔王ゼロとヴァルキサスを止めるには仕方があるまいて」

「ですぐに戻れんのか」

「いや、少しずつしか我は魔力を吸収できぬ。
 かなりの時間はかかろう」

「どうすんの? 
 あいつこの後多分何かするわよ」

「そうだぞ!
 時間がねえんじゃねえの」

「それは大丈夫! ここにいると外の時間はゆっくり流れるから!」

「我が魔力を回復する間、お主たちはカイに鍛練してもらうとよい」

「そうね!
 それがいいわ」

(こんなかわいい子に教えてもらえるのか。
 くぷぷっ、 ついでにわざとさわっちゃおうっと)

「おねしゃーす!」  

「......なにこのシンジの反応、なんかイラっとするわ......」


 オレたちはベルが復活する間、カイに修行をつけてもらうことになった。
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