ブラックボックス 〜禁じられし暗黒の一角〜

第1章 相棒と別れと

朝食は鹿ですか？

　魔法を使うにしても被害が、大きいというのも、僕が一対多の条件の魔法を親から教わったからだ。僕の力量では単体の攻撃魔法は使えない。
　「私が、鹿の影から忍び込み、首を…それか鹿に乗り首を…」
　「それだと、もしマダニに吸われた時手やお尻が赤くなるよね。それだけなら良いけど毒素が強いから触れるのはよした方がいい。遠くから打てれば良いのにな」
　アーウェンがうつむいて考えていると隣から悩ましい声が聞こえた。
　「はう」
　アーウェンはレイブンの方を向いて聞く。
　「大丈夫か」
　レイブンは頷く。
　「しゅの中に銃火器が…すごいたくさん知っているんですね。鹿だったらライフルですよね」
　レイブンは、98kを構え、撃つ。引き金が引かれる音とコッキングする音が聞こえただけだ。驚くほど拍子抜けるようだった。レイブンは見事頭に当て、狩取っていた。
　「やるじゃないか、初めてで当てるなんて、すごい。何か投擲武器とか拳銃とか使った事あるの」
　アーウェンは興奮して、レイブンの肩をつかみ聞いた。レイブンは困惑しながら答えてくれた。
　「標準は自動で最適にしてくれたし、スナイパーライフルもがたつきもなくバレルも真っ直ぐだったから外すわけない。それに…」
　レイブンが持っている、スナイパーライフルSRが黒い霧のようになり手に吸い込まれていく。
　「影はしもべのようなものだから」
　レイブンの表情は柔らかく可愛らしい。アーウェンは肩を掴んでまる事に気付き、ごめんと言いながら離す。
　「レイブンが取ってくれたことだし、今度は僕の出番だね」
　そう言い、鹿にいるマダニ等がいる毛を焼く事に。アーウェンの手のヒラから、炎を出し炙る。少し置いてまた、炙る。レイブンに言って先に鹿を小屋に送ってもらう。そのあと、自分たちも小屋の外に帰る。小屋に入ると鹿だ、とお祭り騒ぎ。よく見るとミストとドールがいない。僕たちを探しまわっているのだろうか。プラントに言って、植物に霧を出させて、ミストに知らせることは出来ないか、聞いてみる。
　「やってみる、もし成功したらなんて伝える」
　「僕は小屋に居るよ。もし帰ってこれるなら戻ってきて。ダメならレイブンに頼むから」
　アーウェンはプラントに伝えた。
　「わかった、それじゃあやってみる」
　鹿を外に出し、内臓を取り出し、大きめの石を持ってきて、鹿の心臓を乗せ捧げる。皮を剥がしている最中にミストが帰って来る。どうやら、プラントの霧が伝わったようだ。
　「なに、鹿をいじってんのよ」
　ミストはこちらを睨みつける。彼女の中に不安、心配、憤怒、恨みに近いものもある。
　「ごめん………心配かけた。怪我は…」
　アーウェンは立ち上がり謝った。巻き込まれた側だが迷惑をかけたのだ。自分自身何を謝れば良いのか見当がつかない。
　「してない」
　「疲れた」
　「疲れてない」
　「お腹は」
　「減った」
　「そうか、本当に無事でよかった。いなくなって…僕のせいでミストが…」
　アーウェンの頬に一筋の涙が落ちる。