ブラックボックス 〜禁じられし暗黒の一角〜

第3章 守るべきか、攻めるべきか

いい出会いに乾杯-37-

　教団は壁や、結界を魔法やら弓矢を使いやたらめったら打つ。剣を切りつけて、壁を壊そうとする者もいる。
　なにをやっても体力が奪われるばかりだ、水の魔法を使い光を屈折させるが集束した光が水魔法を蒸発させる。蒸発した水魔法が霧になり光が地面届かず、涼しさと潤いを与える。兵達は士気を取り戻し、攻撃を行おうとすると、強い光が霧を突き抜け、晴らしていく。湿気を纏った体は一気に蒸される。更なる地獄が襲う。
　「聴こえているかわからないけど、降参するならやめるよ。まだ戦う意思があるなら、教えてねー」
　アーウェンが言うと、兵士達は立ち上がり、拳を突き上げ足を上げ地面に叩きつける、それが連鎖をして轟音となる。
　「わかった…君たちの意思は届いた———それじゃあ後悔しないでね」
　アーウェンは話しながら術式を変える。
　兵士達の上にある水は一個のレンズから小さなレンズになっていく。綺麗に二つづつ、分裂する物、シャボン玉みたいに歪に大、小別れる物もある。最終的に皆、均等な円になる。
　兵士達は、変化する空を見て絶望する。
　「なんだよあれ…輪っかが何個も出来て、分裂してまた出来てなんなんだよ」
　兵士は感じ取る。レンズが増えれば光の柱が増えることを。増えたことで逃げ場がなくなりさらに熱くなることを。
　「これでも降参しない。これ……1時間ぐらいで死にかけるから、早く降参したほうがいいよ」
　アーウェンが言う。
　兵士達は、一斉にに防具を脱ぎ、剣を投げる。皆、体育座りして頭を手で押さえ、時を過ぎるのを待つ。一瞬で体全体が黒くなり座る姿勢さえとれなくなって皆、息絶え絶えに横になる。
　急に曇りだし、陽がなくなるとレンズになっていた天井は雲に吸われ無くなっていく。雲はさらに厚さを増し、雨雲になっていく。
　「みな…服を着るか、地面を掘って…何とか…し———」
　号令を出す中、無情にも雨が滴る。焼けた肌に数ミリの雨粒でさえ、硫酸の様に爛れる感覚が全身を襲って来る。この雨が本格的に降ってきた時の想像しただけでも毛が逆立つ。雨は想像以上に強く振らない、パラパラとまばらに降る。勢い良く雨が降れば、体は冷やされ動きはぎこちなくなるが、幾分か楽になり、回復できるが体に数滴当たるだけでは体が冷えず、当たる雨は弾丸と化す。
　壁の中の兵達は阿鼻叫喚し声を殺せずにいる。叫び声は王国まで響いているだろう。
　「さてと…それじゃあ、聞くけど降参する」
　アーウェンはにこやかに言う。その姿は天使の様で悪魔だ。