呪われ薬師、最強の仲間たちと旅に出る~美味しそうだと思っているのは秘密です~

なーの( *¯ ꒳¯*)ナー

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第一章

その家、沼の中に建つ

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【ダンジョン:ダークフォレスト】

 このダンジョンは、弦や枝の多い、沼地の上に存在する鬱蒼うっそうとした森である。言わずもがな、足場も湿度も進みやすさも最悪なわけで。道はもはや沼と化している。一番最初に我慢ならなくなったのはマオだった。

「ああああもうじゃかあしい!!業火インフェルノでも隕石メテオでも落として更地にしてやろうぞこんな沼!!!」

「やめて。」

「僕らもぺちゃんこだよお。」

 一歩進めば泥に足が沈み、場所が悪ければ、腰まで浸かる。ジュアンもアイザックもへとへとのベトベトである。

「アイザック顔色悪いよー。」

「さっき拾い食いしたからかな。」

「駄目でしょそれ。」

 イライラとしていたマオが、突然ぴたりと動きを止める。

「……我は用事ができた。少し外すぞ。」

「え。」

「ちょっ。」

 何かを受信したらしいマオは、次の瞬間には掻き消えていた。転移魔法テレポートだ。上級魔法のひとつで、使える人間はめったにいない。

「ずーるーいー!!」

「勝手だなあほんと」

 左右にそびえ、立ち並ぶ太い木の幹は触手めいていて、色もどこか紫色だ。面倒でもこんな森、迂回すればよかったと今更後悔する。

「あっ!」

「なに。」

「アイテムのさ、脱出の玉。あれ使えば僕らも転移できるよ!」

「それ森のスタートに戻るぞ。」

「駄目かあ。」

 非戦闘員のアイザックはもう返事もしたくないほど参っているし、ジュアンもアイザックを背負えるほどの体力は残っていない。せめて休める場所でもあればいいが、ダンジョン内である。そうそう休める場所など……


「あっ。」

「なに。」

 汗の垂れる頬で笑顔を作り、ジュアンが指さした先には、

「………家?」

 屋敷があった。





 ~Side マオ~

「全く父上も我遣いが荒い。」

 マオは当代魔王である父に呼び出されていた。連絡の行き違いがあったようで、すぐに用事は片付いた。父とはいえ相手は当代の魔王なので、着替えて謁見していたのだ。
 ぷんすこと怒りつつ、冒険者の服に着替えるマオ。
 この人間ごっこにすっかりはまっているので、言われたとおりに角も隠す。

 何よりあの男だ。魔族の少年を平然と引き連れ、彼自身はこの我でも解読不可能なほどの禁術に蝕まれている。それでいて、あの欲深さの垣間見える目と、冷静なふるまいの同居する、生き物としての不自然さ。

 アイザックの過去を知りたい。
 それはきっと、この道中で明らかになるだろう。あの男ならいつか話す。そんな確信が、いや、魔王の勘があった。幸い父上は元気なことこの上ないし、世代交代まで数世紀は暇を持て余すのだ。こんなに楽しい余興を逃してなるものか。

 ………本当は自分に媚びへつらわぬ二人を大切に思っているマオなのだが、若き魔王は気が付いていない。

「しかしあの森に戻るのは面倒だな。……ん?あいつの引っ越した場所、たしか……。」

 思い出す。何十年か前に引っ越しの連絡が来ていた。古い手紙を取り出してみれば、やはり、よりにもよってあんな森の中にだった。

「ハロに挨拶していくか。あいつらはそのあとに森の外ででも待とう。」

 その計画は、良くも悪くも、すぐに崩れることになる。



 マオが引っ越した友人の家の中に直接転移テレポートしてみれば、全裸にひん剥かれたジュアンとアイザックが捕まっていた。友人の魔術師であるハロは、アイザックの左右の頬を、手袋をした両手でつかんで覗き込んでいる。ハロへの挨拶も、二人との合流も完了しそうだ。

「ハロ、そいつら、殺すなよ。我のだ。」

「招かざる客の随分多い日だよ、今日は。よりにもよって君の知り合いかい?この侵入者ふたり。」

 ふわりふわりと濃紺のローブのフードを目深にかぶった亡霊ハロがふわりと浮き上がり、近づいてくる。フードををかぶっていないと姿を現せないほど、弱体化していたとは。
 二人ともぴくりとも動かないが、透視魔法スキャンを使って体を診てみれば、心臓は動いていた。心を壊されていなければよいが。

「お友達ができたんだねえ、魔王ジュニア。」

「今の偽名はマオだ!」

「偽名って言わないほうがいいね、きっとね。」

「こいつらは、我の旅の連れだ。」

 ぱーてぃとやらに加わった。だからこの表現で間違いあるまい、とマオは思う。

「面白いやつが迷い込んできたからねえ。調べさせてもらおうと思ったんだけど、誤解させちゃったみたいでさあ。」

 それで戦闘開始か。確かに不気味なハロが、暗闇から笑顔で飛び出して来たら、我であってもうっかり殴りそうだ。

 ハロはとっくに死んでおり、亡霊、いや、悪霊である。ジュアンの格闘攻撃は一切通らず、アイザックは非戦闘員。あっさり捕まって、おもちゃにされていたのだろう。

「元気そうで何よりである、ハロ。とりあえずこいつらを起こせ。」

「そっちのちびすけは任せるよ。僕はこっちの男を起こすから。」

 己の好奇心が最優先で、呪術の研究にいたく熱心なだけ。悪い奴ではない。それがマオの抱くハロの印象である。ジュアンを抱え上げ、水でもかけようと浴室に向かった。


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