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第一章
秘密を知る悪霊、共に旅に出る
しおりを挟むアイザックは目を覚ました。覚えてる。覚えているとも。とてつもない辱めを受けた。ケガ一つないという点では無事だが、尊厳が無事じゃない。もうしばらく立ち直れる気がしない。まだ服は剝ぎ取られたままだが、申し訳程度にシーツがかぶせられていた。
「落ち込んでいるところちょっといいかい?」
「ひっ。」
大きなローブで顔から全身まですべてを隠した……むしろ、フード付きの大きなローブが浮遊しているようにしか見えない。そんな状態のハロが話しかけた。アイザックとジュアンを触手のような気色の悪い動きをする植物で締め上げて、荷物も服も剥ぎ取り、好き放題透視魔法をかけた、張本人である。
「問診するだけだよお兄さん。僕はハロ。マオの知り合い。だから、もう手荒なことをするつもりはない。君の連れは向こうでマオに洗われてる。」
指し示す方向を見れば、風呂場と思われる部屋からマオとジュアンがはしゃぐ声が聞こえた。子供のようだ……いや、子供か。
「すまない、押し入った形になってしまったのに、いろいろと。マオの知り合いとは知らず。」
「気にしていないよ。久々にまだ生きている人間のスキャンデータも撮れたし♡」
アイザックの顔が引きつる。
「体に痛覚を感じる場所は?」
「いや、ない。」
「意思疎通も問題なくできるね。視力は?はい屈伸して。異常とか感じる?」
医者のようにヒアリングをしてくれた。ハロの傍では、宙に浮く手袋が紙に絶えず筆記している。一通り受け答えが終わると、アイザックの顔をその二つの手袋が掴んだ。ハロがにゅっと、額の辺りを覗き込む。
「君は、災厄の魔女による呪いと、人間による珍しい魔法にかかっているね。おもしろい。」
「分かるものなのか。」
「見えるよ。といっても、魔女の呪いは複雑すぎてぐちゃぐちゃだ。なにしたらこんなになるのやら。」
「人間のかけた魔法の方は分かるか?種族を人間に変える禁術だ。」
「ああそっちは分かりやすいね。さすがにここで解除はできないけど。」
「その魔法を解くべく旅をしている。人間化が解除できれば、この体にかつて何があったか分かりやすくなるし、こちらとしても呪いの説明がしやすい。興味はないか?」
魔女による呪いのことが知られてしまっているのなら、敵に回したくはない。そう警戒したアイザックは、仲間に引き入れることを選んだ。
何よりハロは美味しそうだ。叶うならぜひ、お近づきになりたい。
「ふーーーん。それは、魔法が解除されるまで僕について来いと。」
「無理にとは言わないが。俺の状態を見てくれる医者のような仲間がいてくれると心強い。」
「そうだねえ。その呪いにはとても興味がある。……それ、10年前にある集落が破滅したことに関係してたりしないかな?」
「おまえの言う集落かは分からないが、心当たりがあると言っておこう。」
「……いいよ。僕は、呪術の痕跡を研究していてね。呪術の名残を求めて移住の旅をしているのさ。君たちの旅についていくのも、それとたいして変わらない。」
「ありがとう、助かるよ。それと。」
アイザックは声を潜める。
「あの二人には、俺が元エルフだと伝えてあるんだ。」
「へえ、君、こうなる前はダークエルフだよね。嘘つきさんなんだ?……まあ、見る限り、呪いや人間化が解けたところで、もはやどちらでもないと思うのだけれど。いいとも、適当に合わせてあげよう。」
フードが少し上がり、顔のような影が現れた。ギザギザした歯、大きな口でにやりと笑う顔。目元は包帯で覆われていたが、見た目の年齢は若いように思われた。
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