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第一章
見つからぬ尋ね人と夜の街
しおりを挟む【イーヴォルの町】
「見つからなかったね、月白の魔女。」
「僕の魔力探知でもひっかからないねえ。」
「さっきの町の依頼はこなせそうにないな。どうしよっか。」
「引き返さなくていいのだからよいではないか。おまえたちは人が良すぎる。」
「まあ冒険者だから依頼はこなさないとね?」
大切な妻、月白の魔女が出て行ってしまったので探してほしい、という依頼を受けてきたのだが、優秀なこのメンバーでも手がかりすら見つからない。とうとう夜になってしまったので、平原でキャンプを張る。
呆れたように、ジュアンがぼやいた。
「……離れて見ても、きらきら、ちかちかする町だよねえ」
キャンプを張りながら明日訪れる街を見やる。カジノや夜の街で有名なイーヴォルの町だが、薬屋が足らず重宝しているという噂を聞いて立ち寄ることにしたのだ。
「ねーえー、ほんとに寄るのー?」
「ジュアンは先程からそればかりだな。指名手配でもされておるのか?」
カジノばかりの町なので、借金の返済が滞ると町に出入り禁止になる。
「それは困るんだけど、ジュアン?」
視線がジュアンに集中する。照れたように頬をかきつつ口を開いた。
「そうじゃないんだけど……実家があるんだよねえ、あの町。僕、家を勝手に出てきたから。」
「それはよくないぞ。」
「おや、マオ珍しい。」
がしりと、マオがジュアンの両肩に手を置く。
「親兄弟というのは逐一連絡をいれないと一層干渉してくるぞ。その方が、より一層、面倒でしつこくて時間をとられると言うものだ。」
妙なリアリティがあった。
「あはは……大丈夫だよー?たぶん、だけど。」
「連れまわしてる俺も一緒に怒られてあげるよ、ジュアン。……嫌だったらこの町、迂回する?」
困ったように笑うジュアンだったが、最終的にイーヴォルの町へついて来た。
「……ところでアイザック、どうかしたか。顔色悪いぞ。」
「ああ、ちょっとおなかを壊してね。薬は飲んだから大丈夫。」
「それならかまわないが……」
イーヴォルの町の明かりは、一晩中消えることは無かった。
町を囲う大きな塀。同じく大きな関所に到着したのだが。
「入れぬな」
「「え。」」
「強い結界だねえ。」
「角の有るような上級の魔族は入れぬようだな。」
マオだけが、町を覆う結界に阻まれた。
「無理そう?」
「無理にぶち破ってもいいが領土問題だからな。街や国家と戦争になるぞ。」
「それは困る。」
「なに、方法がないわけでもない。おまえたちの気配は分かるから後で合流しようぞ。」
「手荒なのはやめてよ。」
「任せよ。」
得意げなマオに不安は残るものの、三人だけでイーヴォルの門をくぐることになったのだった。
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